「J-CASTニュース」の誕生&成長の裏側
我々の会社は、もともとeラーニングの設計から運営、Webサイトの企画・編集・制作などの事業を展開していました。その当時はすべて受託ビジネスばかりだったので、常々「自社メディアをもちたい」と思っていました。それが「J-CASTニュース」のはじまりですね。
もともと新聞社出身のメンバーが集まって立ち上げた会社ですし、またWebサイト構築のノウハウも持ち合わせていたので、すぐに新しいメディアを立ち上げる体制が整っていたんだったんですね。
そして、2006年7月にスタート。当時は月間数十万PVだったのが、いまや月間5,000万PVまで成長しました。ネットのなかでも代表的なモデルだと思います。端的にいえば、口コミのみ!広告宣伝費は一切かけていませんよ。
立ち上げ当初は若者の読者が多かったけど、徐々に30代~50代の方が増えてきましたね。男女比としては男性6割、女性4割。もっと読者層を掘り下げていくと、学歴が高く、都会的、そして「モノ言いたい人」。典型的な読者像は「都会に住んでいる大手の理科系の企業に勤めているモノ言いたい30代」ってところかな。30代ぐらいって理屈ぽくなってくるでしょ(笑)。最初から狙ったわけでなく、自然と今の読者層になってきました。
我々が「自社メディアをやりたい」っていっても、新聞社のように1次情報に触れられるわけではないし、1次情報を創出するだけの人がいない。であれば、まずは「メディアをウォッチしていこう」と思ったわけです。典型的な例は「テレビ」ですね(メディアウォッチ)。そしてもう一つは、ビジネスマンの教養になるニュースを発信していくこと。これは今も変わりませんね。メディアをウォッチするというのは、当時としてはとてもめずらしかった。
面白そうな1次情報を徹底的に追いかけ、その情報に「知的刺激」を加えていくことにつきます。当初は2次情報寄りだったけど徐々に1.5次になり、そして最近では1次情報が多くなってきましたね。「何次メディア」といういい方にはとらわれず、とにかく日々面白いものを探して知的スパイスをふりかけて発信していく。これだけは立ち上げから変わらないうちのスタイルですね。
ネットが「リアルの世界」になりつつある
新聞は「社会」を反映しているっていいますよね。でも、新聞の社会面をみても、社会ってなんだろうって思います。そもそも、何を社会とするのか?テレビでも街頭インタビューや反響などを現す調査結果などが報道されますが、それは「社会の一部(一部の人)」を反映しているだけで、それが「社会」すべてではない。
我々は、ネットが一つの「社会」の断面を現わしているというところに目をつけているんです。mixiや2ちゃんねる、個人のブログをウォッチしていくと、一つ社会で起きていることがわかるでしょ、そこを見ていこうと。
最近、リアルは実生活かネットか?ってよくいわれていますね。もしかして、いまやonがネットでoffが実生活なのかもしれない。多少は偏っているかもしれませんが、ネット上では、日々何かしらの反響がわかり、しかも数秒単位で早くわかります。そういう意味では、onとoffがひっくり返って、ネットがリアルなりつつあるのかもしれませんね。
ライバル的存在は?
似たようなものがないからな、今はいないですね。そのうち出てくるかもしれません。
最近、アメリカでハフィントンポスト(ワシントンポストではなくね)という、セレブ女性が立ち上げたブログが盛り上がっているといいます。超有名人もそのブログに出ることを狙っているようで、日本でもそのようなサイトを狙うと公言しているところもあります。
しかし我々は、もともと編集力で勝負していますからね。確かにWeb的な仕掛けもありますが、あくまでベースは「編集力=人材」があってこそ成り立っているサイトなんです。
J-CASTニュース編集部では、どうやってプレスリリースは見られているか!
編集部は約17人(うちデスク3、4人)、一部外部にお願いしています。そして1日50~60本の記事をアップします。
ニュースは多数のジャンルがあるので、複数の記者がジャンルをまたいで記事を書いていますが、モノウォッチは専属の記者がいます。独自の情報収集先を持っている記者もいるし、意外と多いのが「たれこみ」かな(笑)。打率は低いけど、なかにはおもしろい話もあり、採用されることもあります。
大量のプレスリリースが届きます
<FAXの場合>
届いたプレスリリースは、所定の場所に集められて、だれもが手に取れるようにしています。まず見るのは1枚目。何枚にもわたるプレスリリースもあるけど、1枚目がおもしろくないと、次のページをみることはないです。
<メールの場合>
まず、タイトルでおもしろいものをピックアップします。その上で、目にとまったタイトルをクリックし、メール本文を開いてプレスリリース文を読みます。
商品に関するプレスリリースのときは、対象となる画像が不可欠ですね。また電話でのやり取り、口頭ベースだと間違いがあるといけないので、履歴が残るメールのやり取りが増えてきています。
ネタを見つけている側としては、やはり「世の中の常識と異なること」に惹かれますよ。「常識からはずれている、かわっているな、びっくりしたな」と思えるもの。また、「そういえばそうだったよね」と普段、我々が気付かなかったことでも、よくよく考えると「私にも当てはまります」といった共感を得られるものがいいですね。
また、個人ブログはウォッチしていますね。
これまで反響の大きかった記事は?
最近では、桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」。辛くないラー油なんだけど、すごく売れている、これはおもしろい!みたいな。しかも、とても美味しいらしい。「ラー油=辛い」の常識を覆した意外性がうけたんでしょうね。これはブログから起った話題ですよ。
あとは、モノウォッチで紹介した菓秀苑森長が発売する「とろける生カステラ」。長崎のカステラ屋であんまり大きい会社ではないんだけど、ニュースになってから超有名になったと聞いています。
今後力をいれていく分野
これまでも、J-CASTニュースの携帯版サイト「J-CASTモバイル」はあったんですが、あまり力をいれてこなかったので、近々、ドコモ、au、ソフトバンクの公式サイトに移行させ、モバイルサイトにも力を入れていく予定です。
広報担当者へのメッセージ
広報担当者に求めることは、「広報担当者は、他部署のプレスリリースを送る担当ではなく、しっかりとPRする内容を理解した担当であってほしい」というところですね。自社の商品なりサービスなり、PRする内容を十分理解していないと、メディアに適切に答えることができないでしょ?取材の電話をした際、「ちょっと待っててください」とたらいまわしにされてはね・・・即答できなくても担当部署、担当者に聞き、返答いただければOKです。社内のことを理解している人だと安心できます
それから、広報担当者はメディアが初めてその企業に触れる窓口となることが多いですから、広報担当者の印象でその企業も判断されます。みんな、社長が会社の代表(顔)と思いがちだけど、広報担当者は、メディアに限らず一般の人との窓口でもあるし会社の窓口(顔)ですよ。
@Pressスタッフの独り言
大森編集長のおっしゃるメディアが求める「常識とは異なること」。会社の常識だと思っていたことが、一歩外からは意外性のある情報に見えているかもしれません。広報担当者には、会社を客観的に見る視点も必要なことを考えさせられました。メディアにとってサプライズな情報が、まだまだ社内に転がっているかもしれません。