ウイリス・タワーズワトソン調査:新興ASEAN諸国の低い労働...

ウイリス・タワーズワトソン調査: 新興ASEAN諸国の低い労働コストが中国の競争力を侵食

■フィリピン、ベトナム、マレーシアおよびタイの労働コストは中国の半分
■シンガポールの給与は依然中華圏を大きく上回る
■台湾の上級役員およびトップマネジメント層の給与はASEAN諸国を下回る

《2016年4月21日(木)に香港より発表されたプレスリリースの日本語版です。》

【香港】2016年4月21日(木) ― 東南アジア諸国連合(ASEAN)の新興国における基本給は中国本土を大きく下回り、中国の労働コストの競争力は低下していることが、世界有数のプロフェッショナル・サービス・カンパニーであるウイリス・タワーズワトソン(NASDAQ:WLTW)の新たな調査で明らかになった。

中国のすべての職位における基本給は、調査対象の新興ASEAN諸国(フィリピン、ベトナム、マレーシア、タイおよびインドネシア)で最も労働コストが高いインドネシアを5~44%上回っている。調査はシンガポールも対象としているが、同国を先進国と位置づけている。

ウイリス・タワーズワトソンが発行する『2015 / 2016年版グローバル50報酬レポート(2015 / 2016 Global 50 Remuneration Planning Report)』のアジア太平洋地域のセクションでは、一貫したジョブレベリング構造における基本給に関する情報が提供されており、地域横断的に賃金の競争力を国別で比較することができる。また、為替変動が米ドル建の基本給に及ぼす影響にも注目している。

さらに、同レポートによると、中国におけるホワイトカラー専門職の初任給(平均年間基本給は約2万1,000米ドル)は、インドネシア(約1万6,000米ドル)を約30%上回っている。

ベトナムおよびフィリピンの専門職および中間管理職の平均基本給はASEAN諸国で最低であり、したがって中国を大きく下回っている。例えば、中国の専門職の平均基本給はフィリピンおよびベトナムの1.9倍から2.2倍である。最も大きな差異がみられるのは中間管理職で、中国はインドネシアを44%上回っているが、上級役員およびトップマネジメント層になるとその差異はそれぞれ28%および5%に縮小する。

「ASEAN諸国の給与が中国を下回っていることで競争力が生まれます。このため、大手企業では従来中国を拠点として行ってきた業務を再考する兆しが見られています。中国は高齢化と労働人口縮小で、給与の高止まりが予想されるためです」と、ウイリス・タワーズワトソン、データ・サービス部門、アジア太平洋地域リーダーのSambhav Rakyanは述べている。

「中国は、高度なスキルを必要とする研究開発や高性能で付加価値を生む生産に注力しています。このため、給与が極めて高い水準にあっても、サプライチェーンの他の部分と近接していることとも相俟って、中国のより成熟したインフラや熟練労働力は引き続き企業にとって魅力的でしょう。特に新興ASEAN諸国と比較した場合にはそう考えられます。給与水準は、低コストの労働力がもはや中国にとって海外投資を呼び込む上で主なセールスポイントではなくなっていることを示唆しています。新興ASEAN諸国で最も高コストの国であっても中国より割安なのであれば、労働コストの観点からは新興ASEAN諸国の人的資源がより魅力的となることは明らかです。」(Sambhav Rakyan)

マレーシアとタイは、上級役員およびトップマネジメント層の給与が新興ASEAN諸国の中で最も低い。上級役員については、中国はマレーシアの約1.9倍、一方トップマネジメント層についてはタイの1.6倍を支払っている。


■台湾の上級役員・トップマネジメント給与は劣後
台湾のトップマネジメント層の給与は中華圏最低であり、中国および香港のそれぞれ62%および47%に過ぎない。しかしさらに注目されるのは、新興ASEAN諸国との比較において、台湾はインドネシアの約65%、最低給与水準のタイとほぼ同一水準であることだ。

上級役員については、マレーシア、フィリピンおよびベトナムといったASEAN諸国の最低水準の国は上回るものの、インドネシアの約81%、タイの97%にとどまっている。しかし専門職についてはある程度の逆転がみられ、台湾の基本給はインドネシアを約40%上回る。

「台湾は、上級役員およびトップマネジメントとして適格な人材の供給が十分ですが、新興ASEAN諸国にはこうした経営者が比較的少なく、このため、こうした国の給与は台湾を上回っています。別の理由としては、台湾では基本給が低いのですが、業績ベースの賞与が他の国を上回る傾向にあるという点もあります。」(Sambhav Rakyan)


■シンガポールの基本給は依然中国を大きく上回る
インドネシアの基本給は新興ASEAN諸国で最も高いものの、同地域の最先進国であるシンガポールをはるかに下回っている。

専門職からトップマネジメントまでのあらゆる職位において、シンガポールの基本給は中華圏最高額の香港を約3%~10%上回っている。

中間管理職から上級役員、トップマネジメント層までみると、シンガポールの給与は中国を28%~52%上回る。最も格差が大きいのは専門職で、シンガポールは中国の2倍以上である。

「シンガポールは常に当地域有数の経済力を誇ってきました。国際舞台で引き続き競争力を高める中、同国はベストプラクティスを熟知するトップクラスの人材を世界中から呼び込むことを求めています。グローバルにみても魅力的な報酬を提示することは、その一貫として重要な部分です。中華圏に関しては、香港が長い間国際的な人材のハブとなってきました。香港の税率がより有利なものであることが勘案されれば、シンガポールとの格差は縮小するでしょう。」(Sambhav Rakyan)

中国が商品およびサービスの品質および持続可能性に重点を置いていることを踏まえれば、中国の基本給は人材を惹き付けるために高止まりする可能性が高いとRakyanは付言している。さらに、他国との金融市場統合を図る場合、最良の人材を惹き付け、確保するためには、同国の金融セクターの報酬が国際的にみても十分な水準であることが求められる。

<参考資料>
https://www.atpress.ne.jp/releases/101346/att_101346_1.pdf


本調査について:
ウイリス・タワーズワトソン 2015 / 2016年版グローバル50報酬レポート:本レポートは、世界中の異なる市場や法的環境下で事業を展開する企業に対し、包括的なグローバルの報酬や福利厚生制度設計のためのツールを提供するものです。本レポートは、企業が一貫性のあるグローバル報酬戦略を確立し、現地の法令および慣例を確実に遵守する上で役立つことを目指して作成されています。法定給付や市場の慣例を紹介しています。職位別の給与と福利厚生を支える報酬体系は、ウイリス・タワーズワトソン独自のグローバル・グレーディング・システム(GGS)に基づき設計されます。最新の『グローバル50報酬レポート』は、オンラインでご購入いただけます。

『グローバル50報酬レポート』購入サイト:
https://hrresource.towerswatson.com/report_details.asp?rptid=204&image=00header_globalreports.gif

ウイリス・タワーズワトソンについて:
ウイリス・タワーズワトソン(NASDAQ:WLTW)は、企業に対するコンサルティング業務、保険のブローカー業務、各種ソリューションを提供する業務における、世界有数のグローバルカンパニーです。企業の持つリスクを成長の糧へと転じさせるべく、各国で支援を行っています。その歴史は1828年にまで遡り、現在は世界120以上の国と地域に39,000人の社員を擁しています。リスク管理、福利厚生、人材育成などの様々な分野で、企業の課題に必要な解決策を考案・提供し、企業の資本効率の改善や、組織と人材の一層の強化を図ります。また『人材』『資産』『事業構想』の密接な関係性を理解し、企業を業績向上へと導きます。ウイリス・タワーズワトソンは、お客様と共に企業の可能性を追求して参ります。詳細は弊社ホームページをご覧ください。
https://www.willistowerswatson.com/ja-jp

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