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ゲーム型の「金融取引診断・評価システム」を開発

~行動経済学の視点に立ったヒトの行動分析の可能性を追求~

国立大学法人 福井大学 産学官連携本部は、当大学の竹本拓治准教授が公益社団法人中山隼雄科学技術文化財団(※1)から研究助成を受け、Xcreed(※2)の協力のもと、ゲーム型の「金融取引診断・評価システム」を完成いたしました。


ゲームのメイン画面

【開発背景】
人は正しい情報を与えられても、必ずしもその通りに意思決定しません。伝統的な経済学では完全な効率性を想定されますが、実際は異なります。そのような視点から英国などでは金融教育を国として取り組んでおり、これまでの情報を与える手法のみならず、行動に働きかける金融教育に注目しています。本システムは、そのような金融教育の流れを汲み、新たな最先端のツールとしての活用を目指し、2016年2月に試作し、2016年3月から7月までのバグチェックならびにテスト期間を経て完成いたしました。行動経済学における個人の金融行動における癖(行動バイアス)に着目し、既存のゲームシステムにおける楽しさを維持しつつ、金融経済学の教育効果を高めるシリアスゲーム(※3)になっています。


【ゲーム型の「金融取引診断・評価システム」の特性】
一定の資金を元手に、資産運用により資金を増やすゲームシステムに、以下の工夫を加えています。

1.複数の操作者による多人数同時参加型とし、事前設定で操作時間60秒でゲーム内時間1か月が過ぎるなど、多人数同時参加型のオンラインによる対戦ゲームとしての要素を持っている。時間の経過に応じ、円高・円安となる可能性を持つ政策金利変動、ならびにそれによる個別株価の変動など、現実経済における様々な種類のイベントが発生し金利や相場が変動する。

2.入札方式による不動産取引を導入し、応札により不動産を取得し運用が可能である。他の操作者が購入意思を示せば、不動産の売却も可能である。マップの発展度合いや景気変動に応じ不動産収入が変化するものの、銀行などからの借り入れ金利との差により運用益が期待できる。

3.イベント内容により、外国為替証拠金取引や株式現物取引の金取引に影響が出るなど、個々の金融商品間も、経済原則に従い関係性を持たせている。

4.参加者全体の投資行動がリスク指向に加熱した場合バブルが発生(逆に参加者全体が非リスク資産に偏った場合には不況モードに突入)し、個人の金融行動の集合体としての経済の仕組みに関し、感覚的に理解を可能にしている。

5.福井大学が保有する特許(「分析システム、分析方法及び分析プログラム」特許第5924638号、特許権者 国立大学法人福井大学、発明者 竹本拓治。登録日2016年4月28日(木))を実装し、ゲーム終了後、運用結果のみならず、操作者が自身の金融行動における癖(行動バイアス)を確認することが可能な診断と評価機能を実装している。


本システムにより、操作者の金融に関する行動バイアスの一部を確認することが可能になります。金融教育における行動経済学の知見が世界的に注目されつつある昨今において、本システムはその知見を教育に具体的に実装する先駆的な成果となる可能性を持っています。
実際に本システムを30名を超えるクラスで試験運用したところ、「今後、金融のことをもっと知らないといけないと実感した。」などといった感想が聞かれました。なお本システムは、福井大学の2016年度後期以降の経営学関連科目内にて使用されます。


【竹本拓治(タケモトタクジ) プロフィール】
福井大学 産学官連携本部 准教授、企業経営学、行動経済学やアントレプレナーシップ教育に詳しい。2016年8月現在、オムロン株式会社、株式会社アイジーエー、福井県永平寺町などとも共同研究を行っている。近刊に「キャリア・アントレプレナーシップ論」(萌書房、2015年)、「アントレプレナーシップ教科書」(中央経済社、2016年)などがある。


【福井大学 産学官連携本部】
地域企業と大学研究者との共同研究の推進などのリエゾン活動、工学部ならびに大学院工学研究科に対する技術経営に関する副専攻の実施を柱とする教育活動、学内外の計測技術支援、起業支援や知的財産管理などを担当。


(※1)公益社団法人中山隼雄科学技術文化財団
東京都中央区、豊かで活力ある社会を築くことに寄与することを目的として、「人間と遊び」という視点に立った、科学技術に関する調査、研究及び開発の推進、助成および普及啓発などを行っている。

(※2)Xcreed
福井県あわら市、福井県を拠点にシステム開発・Webサイト制作・ゲーム制作などを請け負っている。

(※3)シリアスゲーム
ゲームのエンターテインメントをベースとし、医療や教育などへの応用目的をもつゲームのジャンルである。

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