北海道日高沖の高メタン活動域で 化学合成生物シロウリガイを発見・採集
明治大学 研究・知財戦略機構の松本良特任教授らは、日本海〜北海道沖で実施したメタンハイドレート共同学術調査航海UT16(2016年7月24日〜8月7日)において、8月6日午後、北海道日高南方約80km(北緯42°東経142°付近)、水深970mの海底に高メタン活動領域を確認、同所より化学合成生物シロウリガイ類二枚貝(Calyptogena sp.) の合弁の死貝採集に初めて成功しました(写真1)。
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写真1
日高沖深海底では、従来からメタン湧水が報告されていますが(漁協聞き取り)、本調査ではメタン湧水にともなう海底環境を明らかにするため、オケアン型グラブサンプラーとピストンコアラを投入して海底表層の採泥を実施しました(写真2)。
オケアン型グラブサンプラーの容積約35cm x 35cm x 16cmの砂泥中に、ゴカイ類やクモヒトデ類などと混在して3個体の合弁(一組の殻)の新種と考えられるシロウリガイ類(二枚貝類)を発見・採集しました。表面積35cm x 35cmに3個体のシロウリガイ類は分布密度としてかなり高いと言えます。本調査に用いた東京海洋大学の研究実習船・海鷹丸の音響測深機(PDR)により周辺にはメタン湧水の兆候(メタンプルーム)が確認されました。さらに、ピストンコアラによって採取された堆積物間隙水中の硫酸が海底からの深度約1メートルで消滅していることから、深部からのメタン供給が極めて高いことが分かります。
これらの観測事実から、付近の海底には現在も高い密度でシロウリガイ類群集が生息していると考えられます。シロウリガイ類はメタン冷湧水域などに生息する典型的な化学合成生物の一つですが、日本海東縁に広範に分布する表層型メタンハイドレートやメタン湧水域ではこれまで確認されていません。海水面が低下し日本海が閉鎖的で貧酸素的閉鎖海域になった氷期に絶滅し、その後、水深の浅い海峡に阻まれて生息深度の深いシロウリガイ類が再侵入できなかったと説明されていますが詳細は不明です。津軽海峡近くで発見されたシロウリガイ類はその生態と分布の謎を解く鍵を提供すると期待されています。
今回の発見により、北海道周辺海域ではシロウリガイ類がメタンハイドレート発見の手掛かりと成り得ることが分かり、資源探査の上からも重要な発見と言えます。このシロウリガイ類については、東京家政学院大学の沼波秀樹らにより今後詳しい研究が実施される予定です。
なお、本調査は、明治大学、東京家政学院大学、千葉大学、東京海洋大学、鳥取大学、北里大学の共同学術調査として実施されたものです。
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