微弱光・蛍光観察用スーパー超高感度カラーテレビカメラ(NC-R550b)発売
受精の瞬間に起こる卵細胞内部変化の観測に成功
2009.11.26 12:00
株式会社五藤光学研究所(東京都府中市、取締役社長:五藤 信隆)は、日本電気株式会社(東京都港区、代表取締役 執行役員社長:矢野 薫)が開発した超高感度テレビカメラのOEM供給を受け、これを顕微鏡などに取り付けて、生体・細胞などの生物科学研究用途として利用できる「微弱光・蛍光観察用スーパー超高感度カラーテレビカメラNC-R550b※」を発売し、1号機を国立大学法人お茶の水女子大学(東京都文京区、学長:羽入 佐和子)へ納入しました。
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NC-R550bを顕微鏡に取り付けたところ
同大学では、NC-R550bを顕微鏡に取り付けることにより、受精の瞬間に卵細胞内部が変化していく現象(カルシウム波)をリアルタイムカラー映像で観測することに成功しました。
NC-R550bは今後、生物科学研究を行う大学・研究機関などへの販売を予定しています。
※bはbio(生物などを意味する)、バイオモデルの意味
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NC-R550bは、電子増倍機能を備えたEM-CCD(荷電結合素子)を採用し、超高感度性能を有す他、3板式であることから、色再現性が高いことが特徴です。同大学大学院人間文化創成科学研究科 広橋 教貴講師の研究チームはNC-R550bを光学顕微鏡(ニコン製研究用倒立顕微鏡 ECLIPSE TE2000)と組み合わせ、「ライブイメージングシステム※1」として顕微鏡観察へ応用しました。
今回の研究は、イトマキヒトデの卵と精子を用い、受精によって引き起こされる卵細胞質の化学変化と卵表層の粒子運動の関係を蛍光イメージングと微分干渉法という手法を同時に行うことで解明しようという試みです。NC-R550bを用いた観測の結果、精子が卵に接着して暫くした後に、精子接着点から卵の反対側へ向かって、強い蛍光の波が広がっていく様子をリアルタイムで、しかもカラー映像として鮮明に捉えることに成功しました。
蛍光強度の変化を観測するには、卵細胞質にカルシウム蛍光指示試薬を注入します。精子頭部の突起が卵表面に接着して融合すると、卵内部でカルシウムイオン濃度が急激に変化します。この変化が引き金となって卵が腑活化し、胚発生が開始するというのが受精の最も初期の過程です。この時のカルシウムイオンの濃度変化は卵内部を波のように伝わるため、カルシウム波といわれています。今回捉えることに成功した強い蛍光の波というのは、このカルシウム波の様子で、これまでは、モノクロ動画や一定時間間隔の静止画でしか捉えられていなかった現象です。NC-R550bは、顕微鏡側に設けた高速シャッターによる明視野/暗視野の連続切替えを行うことで、高S/Nかつ高感度の撮影が可能で、同研究チームでは、蛍光画像と微分干渉像を連続観察することにより、カルシウム波伝播の詳細な解析を可能とし、このシステムは細胞生理学研究の発展に貢献できると期待しています。
五藤光学研究所では、NC-R550bの生命科学研究におけるライブイメージング分野での活用を見込み、大学・研究機関等への販売を予定しています。
<※1> ライブイメージング
生体内や細胞内で起こっている分子レベルの生体反応を、人工的に導入した蛍光(あるいは発光)分子の変化を観察することで生きたまま測定する手法。使われる蛍光分子は低分子化合物からオワンクラゲ由来の緑色蛍光蛋白質まで多種にわたる。
本機の詳細、プレス向け画像や動画情報は下記サイトをご参照下さい。
・本機詳細(スペシャルWebサイト) http://www.emccd.net/r550b/
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<解説>
■ スーパー超高感度カラーテレビカメラ
1/2インチ型EM-CCD(Electron Multiplying CCD)を搭載し、最低被写体照度0.0003ルクス(動画モード)~0.000003ルクス(蓄積をかけた準動画モード)の超高感度撮影を可能にしたカメラ。3CCD方式により忠実な色再現性を発揮するとともに、デバイスをマイナス20度まで冷却し超高感度撮影時に発生するノイズの低減を行っている。焼き付きの無い素子であるため、運用も容易で、小さい筐体であることから、顕微鏡への取り付けにも柔軟に対応する。
■ お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科
21世紀における大学院教育を見据えて、2007年4月より「人間文化創成科学研究科」と改組され、先端的・学際的な研究を行う。文系・理系という専門領域を超えて新たな研究分野の開拓を積極的に行い、設立以来、女性研究者の育成に力を注ぎ、数多くの優れた女性研究者を輩出する。
〒112-8610 東京都文京区大塚2丁目1番1号
オフィシャルサイト http://www.ocha.ac.jp/
■ 株式会社五藤光学研究所(GOTO INC)
プラネタリウム、大型映像、天体望遠鏡製造のトップメーカー。特に、プラネタリウムでは国内シェアの約7割を占めている。全天周フィルム映像(アストロビジョン)や、3Dデジタル映像装置(バーチャリウム)を他社に先駆けて開発、発表する他、機器設備の能力を活かした映像コンテンツ制作も行う“ドーム空間のトータルクリエーター”である。
〒183-8530 東京都府中市矢崎町4丁目16番地
オフィシャルサイト http://www.goto.co.jp/