双極性障害(躁うつ病)当事者の知恵と経験をデータベース化 WEBサイト『BIPOGRAPHY』オープン
~無償公開・病気に人生を翻弄される人を減らしたい~
双極性障害ナレッジベース開発プロジェクト(代表:白楽 たまき)は、WEBサイト『BIPOGRAPHY(バイポグラフィー)』を2017年12月25日(月)にオープンします。
双極性障害(躁うつ病)は、現代医療では完治しない病気とされており、生涯に渡って付き合っていくことが求められる精神障害です。しかし、症状や有効な治療法、病気との正しい付き合い方といった点において多様性や個人差が著しいため、多くの当事者が症状に苦しんでいると同時に、様々な社会的困難に直面し、人生を大きく翻弄されています。
このような現状を打破するため「双極性障害ナレッジベース開発プロジェクト」を立ち上げ、当事者の方々が持つ豊富な知恵と多様な経験を集めたデータベース形式のWEBサイトを作りました。
▼双極性障害ナレッジベースサイト『BIPOGRAPHY』
▼Readyforで実施したクラウドファンディングのプロジェクトページ
https://readyfor.jp/projects/bipolar
▼ナレッジ募集特設ページ
https://peraichi.com/landing_pages/view/bipolar
【01.当事者の現状】
精神障害の一つである双極性障害(躁うつ病)は、原因や治療法に未解明の部分が多く、現代医療では完治しない病気とされており、生涯に渡って付き合っていくことが求められる病気です。しかし、症状や有効な治療法、病気との正しい付き合い方といった点において多様性や個人差が著しいため、病気に人生を翻弄される人が後を絶たず、加えて当事者間の互助や支援者によるサポートまで難しくしています。国内で双極性障害と診断されて通院または入院している総患者数は、22.2万人と推計されています(※厚生労働省「平成26年患者調査」(表番号96「総患者数、傷病基本分類別」)より)が、これは医師から双極性障害と診断された患者の数であり、潜在的には更に多くの患者が存在すると考える専門家もいます。
【02.プロジェクト発案に至る背景】
双極性障害にこれからの人生を翻弄されずに生きるためには、躁うつの波を小さくし、再発防止のための手段を講じながら注意深く生活し、「寛解」と呼ばれる状態を長く維持していく必要があります。そのためには、薬物療法や精神療法に加えて、次のことを実践する必要があると考えています。
○自分自身の症状や躁うつの切り替わりパターンなどに対する理解を深めること
○症状が出ている時の対処法、躁状態とうつ状態の予防策、寛解状態を維持する方法を身につけること
○障害があることにより生じる様々な社会的困難に立ち向かうためのスキルやノウハウを身につけること
しかし、これらに対する答えは人それぞれ異なるため、身につける以前に見つけ出すことすら容易ではありません。そこで、他の当事者が持つ知恵や経験といった情報(以降「ナレッジ(knowledge)」と表記)を参考にする行為が手助けになるのです。目には目を、多様性には多様性を。そして、多様性を実現するためにはデータベースというスタイルが適しているのではと考えたのがこのプロジェクトの始まりです。
【03.ナレッジベースの内容と特色】
当事者の方々が持つ多種多様なナレッジを一箇所に集め、カテゴリー分けやタグ付けを精密に行い、検索しやすくすることで、ユーザーは24時間いつでもお金や手間をかけずに様々なナレッジを検索・閲覧することができます。ユーザーは、症状や躁うつの切り替わりパターン、これまでの人生や発症に至る経緯、性格や価値観、生活環境や家庭環境といった点で自分と類似点を持つユーザーのナレッジや、自分にとって取り入れやすいナレッジを優先的に試していくことで、自分なりの「病気との正しい付き合い方」を見つけることができると考えています。
【04.ナレッジベースで実現したいこと】
BIPOGRAPHYが目指しているのは、双極性障害の当事者個々人が持っているあらゆるナレッジのオープンソース化(無償公開)です。これにより、双極性障害にこれからの人生を翻弄されずに生きていける人が増え、そうなることで更にナレッジベースの質と量が充実していく、という好循環が生まれることを期待しています。また、当事者を支えるご家族やご友人、福祉関係者の方々の負担軽減にも繋がると考えています。更に、双極性障害に人生を翻弄される人が減るということは、生活保護や障害年金を受給する人が減るということでもあり、医療費が減るということでもあります。従って、間接的かつ将来的には、国民の税負担が減る、ないしは国や自治体の予算を他の社会課題の解決に回せるという効果も期待できると考えています。
【05.他の互助活動との関係性】
既に当事者間の互助活動の分野には、各地の当事者会や当事者ブログを運営する方々がいらっしゃり、これらには一定の効果があると考えています。ただし、「他者のナレッジを参考にする」という行為に焦点を絞った場合、いずれの場合も、参考にできるのは話し手の経験に基づくナレッジ、または話し手が知りうるナレッジに限定されますので、情報の多様性を実現するのは難しくなります。それでもある程度「他者のナレッジを参考にする」ことは可能ですが、当事者会の場合、他者との交流が苦手な方にとっては参加のハードルが高く、うつ状態の症状が強く出ている方やパニック障害や社交不安障害などを併発している方は当事者会に参加することができないといった問題もあります。一方、当事者ブログの場合、見る側が様々なブログを見て回らなければならないため、手間と時間がかかるといったデメリットも存在します。これらの課題を解決するため、ひいては既存の互助活動の苦手分野を補完するために、BIPOGRAPHYを作りました。しかし、精神的な支え合いや励まし合いなどは当事者会ならではのものですし、当事者個々人の日々の暮らしや体調の推移、試行錯誤の様子などは、ご本人のブログやSNSを読んでこそうかがい知れるもので、いずれもBIPOGRAPHYでは提供することができません。BIPOGRAPHYは、こうした既存の互助活動と共存しつつ、お互いの不足を補い合える関係になりたいと考えています。
【06.これまでの経緯】
2017年01月:社会起業大学「ソーシャルビジネスグランプリ2017」書類選考通過
2017年01月:社会起業大学「ソーシャルビジネスグランプリ2017」1次選考落選
2017年02月:CAMPFIREにてクラウドファンディングを実施するも諸事情により中止
2017年05月:Readyforにてクラウドファンディングを実施( https://readyfor.jp/projects/bipolar )
2017年06月:目標金額25万円に対して30万8千円の資金が集まりプロジェクト成立
2017年07~12月:支援者へのリターンの作成と送付、ナレッジの収集、WEBサイトの制作
2017年12月25日:双極性障害ナレッジベースサイト『BIPOGRAPHY』オープン予定
【07.このプロジェクトに懸ける想い】
近年、うつ病に続き、発達障害や自閉症への注目度が高まり、それらの分野に対する支援の幅も広がっているように思います。しかし、双極性障害はそれらの病気とは対照的なポジションにいると感じています。うつ病より更に厄介で、人一人の人生をボロボロにするだけでなく、時には周囲の人間さえも不幸に陥れる破壊力を持った病気でありながら、他の病気に比べて症状や辛さが傍から見て分かりづらく、障害の程度が実際よりも軽めに認識されていることなどが原因となり、福祉制度や支援の手が十分に届いていないと考えています。そんな現状を変えるためには、当事者自身が動くしかないと考え、プロジェクトの立ち上げに至りました。クラウドファンディングに成功したことも、WEBサイトを公開に漕ぎ着けたことも、まだ始まりに過ぎません。今後も継続して当事者の方からナレッジを募り、ナレッジベースの質と量を充実させ、この病気に人生を翻弄される人を一人でも多く減らしたい。そう強く願っています。
【08.『BIPOGRAPHY』の名前の由来】
この病気の当事者でない方には馴染みのない言葉かと思いますが、「双極性障害」の英訳である「bipolar disorder(バイポーラーディスオーダー)」という言葉は、私たち当事者にとって馴染みのある英単語です。そこから「bipo」を取り、「あるテーマについて書かれたもの」を意味する接尾語である「-graphy」と合わせて『BIPOGRAPHY』としました。
【09.代表者プロフィール】
はじめまして、白楽 たまきと申します。私も双極性障害を持つ当事者であり、障害者手帳を保持している障害者です。この病気が原因で、過去に休学や休職を経験しました。近年は、仕事に就いては短期間で再発して退職するということを繰り返しており、年収は100万円にすら遠く及ばない状況です。プライベートでは離婚や子どもとの離別を経験しました。これは人生で一番辛い出来事でした。そんな中、当事者会やSNS上で同病の方々に随分と励まして頂きました。しかしそれと同時に、自分以外にも多くの当事者の方々が、病気の症状に苦しんでいるだけでなく、仕事・家庭・友人・収入・生活といった様々な面で深刻な困難に直面している現状を目の当たりにしました。そこで、自分だけではなく、この病気によって人生を大きく翻弄されている全ての方たちを何とかしたいと思い、このプロジェクトを立ち上げ、作業を進めてきました。この病気と共に懸命に生きる全ての当事者の方たちと一緒に幸せになりたい、そう考えています。
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