GABA高含有の宮崎県産干したくあん ヒト試験で血圧低下作用...

GABA高含有の宮崎県産干したくあん  ヒト試験で血圧低下作用を確認

宮崎県の伝統的な農産加工食品であり、生産量全国一位*1を誇る干したくあんの原料である干し大根づくりが全盛期を迎えています。高さ約6mのやぐらが立ち並び、丸ごと大根が整然と吊るされて天日干しされているシーンは冬の風物詩として知られています。

この天日干しの工程こそが、干したくあん内に含まれるGABA(γ-アミノ酪酸)*2含有量を高めることがわかっており、このたび、宮崎県と宮崎大学、そして県内12社の製造業者などが運営する「宮崎県干したくあん・漬物研究会」*3の共同プロジェクトの研究により、GABA高含有県産天日干したくあんの日常的な摂取が血圧に及ぼす影響を臨床的に評価し、ヒトの血圧低下作用を確認しましたので報告します。この研究結果は、2017年12月2日、3日に行われた第22回日本フードファクター学会にて発表されました。


画像1:日向漬け皿盛り


【研究背景】

近年、血圧上昇を促す要因の一つとして漬物の塩分が指摘されていますが、宮崎県産干したくあんにおいては、冷蔵保存での製法に切り替えたことで塩分が約3.0%に抑えられています。それどころか、血圧降下作用などが認められている機能性成分GABA量は、天日乾燥中に2週間で約7倍増加することがわかっており(画像2参照)、下漬け干したくあん*4 10g(厚さ3mm、直径3cmのスライス4枚)で、高含有で知られる発芽玄米100gに含まれる量と同等のGABAを摂取できることになります。また、宮崎大学による先行研究により、自然発症高血圧ラットに下漬け干したくあん乾燥粉末を、0.3%含め食餌(0.002% GABA含有)を与えたところ、血圧上昇が抑制されることを見出しました*5。


画像2:天日乾燥中の大根のGABA



【研究結果】

今回重篤な疾患を有しない日本人21名の被験者を、8週間毎朝、干したくあん25g(GABA量は約26mg*6)を摂取する群とプラセボ群の2群に分けて臨床試験を行いました。たくあん群の収縮期、拡張期の血圧は、摂取前と比較して、それぞれ5.2%、5.4%低下したことから、GABA高含有干したくあんの日常的な摂取により、正常高血圧のヒトの血圧を低下できる可能性が示唆されました。



<注釈>

*1 宮崎市田野総合支所農林水産課調べ

*2 GABA(Gamma Amino Butyric Acid=γ-アミノ酪酸):穀類、野菜類、果実類のほか、ヒトの脳や消化管にも存在するアミノ酸の一種。GABAは血管を収縮させる働きのある物質(ノルアドレナリン)の分泌を抑制して血管の収縮を緩和することによる血圧降下作用があることが確認されている。

*3 宮崎県干したくあん・漬物研究会:宮崎県産の干したくあんの地域ブランド化をめざし、県内10社の製造業者と宮崎県食品開発センターが協力して2007年6月に発足した団体(現在は12社が加盟)。宮崎県産干したくあんの美味しさや機能性を再発掘し、消費者に発信する。

*4 下漬け干したくあん:干し大根を塩、米ぬかなどに漬け込んで、一定の期間、下漬けしたもの。

*5 Tashiro et al., Food Sci. Technol. Res., 2017,23,757-763

*6 特定保健用食品、および機能性表示食品での1日摂取量の目安は10~50mg。



【試験方法】

重篤な疾患を有しない正常高血圧(収縮期血圧130~139mmHg、または拡張期血圧85~89mmHg)の日本人を対象に募ったボランティア21名を被験者として、プラセボ群(GABAをほとんど含まない干したくあん 9mg/100g)とGABA高含有干したくあん群(105mg/100g)の2群に分けました。各群は8週間、干したくあん25gを朝食時に摂食しました。試験開始前、摂取後4週および8週目に血圧、各種生理学的検査、生化学検査、血液学検査、食事調査を実施しました。なお本研究は、香川栄養学園実施研究に関する倫理審査委員会の承認を受けたうえで参加者への説明を実施し、各自から同意を得て行いました。


本研究は、宮崎県食品開発センター、宮崎大学農学部応用生物科学科の榊原啓之教授、宮崎県干したくあん・漬物研究会の産学官連携による、共同プロジェクトとして行われました。



【参考資料】

下漬けした干したくあんのGABA含有量、約120mg/100gは、発芽玄米中のGABA量10~20mg/100gと比べ、約10倍多く含まれています。(食開セ, No.52,2007)

(画像4参照)


画像4:発芽玄米との比較



■宮崎県と県産干したくあんについて

宮崎市内(田野町、清武町を中心とする地域)では、昭和35年頃からたくあん用生大根の栽培が始まり、その適した風土により、現在でも干したくあんの生産がおこなわれています。この地域が干し大根づくりに適している理由は大きく二つあります。一つ目は、大根が旬を迎える冬季に「霧島おろし」と呼ばれる乾いた西風が吹き、大根の乾燥を助けるから。二つ目は、火山灰分が多い「黒ボク土」のため保水力がある土壌環境で、皮の薄い弾力性のある原料大根がとれるからです。

毎年11月になると大根を干すためのやぐらが立ち始めます。杉の木を柱に竹ざおで桟を組んで約6mの高さに仕上げ、全ての大根に風が当たるように吊るします。天日干しをする10日~2週間の間は、雨が降ればブルーシートで覆い、晴れれば覆いをはがして日を当てて乾燥を早めなければなりません。また寒さ対策として、気温が0度を下回るときは昼夜問わずにやぐらの中でボイラーを炊き、送風機で温風を回して凍結しないように気を配ります。

干し大根が入荷したら、漬物タンクに隙間なく並べ、塩や米ぬか、唐辛子などを混ぜたものをかけ、重しを載せ、短いものは一週間、長いものは3年ほど漬け込み、完成します。

この手作業が、美味しく美しい干したくあんを作り上げるだけではなく、大根が本来持っている栄養成分をさらにアップさせることがわかってきました。県産品としてのブランド化をめざし、今後も天日干したくあんの機能性、および味の向上を研究してまいります。


【宮崎県干したくあん・漬物研究会 WEBサイト】

http://www.hinatazuke.co.jp/kenkyukai/index.html

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