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2016年データ復旧市場規模について統計データを発表

急速なSSDの普及とスマホシフト、HDDのニアライン化により データ復旧業界は激変を迎え、市場予測が困難な時代に

 一般社団法人 日本データ復旧協会(略称:DRAJ、所在地:東京都港区、会長:本田 正)は、2016年(1-12月)のデータ復旧業界・市場規模について統計データを発表いたしました。



 調査の結果、業界全体のHDDの復旧依頼件数は、前年比6,000台減(外付け、サーバー搭載3,915台含む)の79,600台と推定しました。これは、2016年のPC出荷台数が前年比0.1%増と前年から1万台多い1,056万台という市場下で、出荷されるPCの大半がSSDなどのフラッシュストレージにシフトしてきたことが影響していると推測されます。また、HDDにおいては大容量化が進むなかで、ローカル、パブリック共に仮想、クラウド環境の普及によりニアライン化しており、通常業務のデータ取り扱いにおいて一般用途から離れつつあることを要因として復旧件数が減少となったものと考えられます。



■調査結果

<PC(※IDC発表を参考)>

・販売台数(2016年)

 1,056万台… (1)

・稼働分(5年分)

 5,800万台… (2)

・データ喪失率

 1.00%… (3)

・復旧必要台数

 58万台… (4) ※(2)×(3)

・復旧依頼率

 11.0%… (5) 

・復旧依頼台数

 6.38万台… (6) ※(4)×(5)

 

<外付けHDD(NAS含む)>

・販売台数(2016年)

 270万台 (7)

・稼働分(5年分)

 1,490万台… (8)

・データ喪失率

 1.00%… (9)

・復旧必要台数

 14.9万台… (10) ※(8)×(9)

・復旧依頼率

 8.00%… (11)

・復旧依頼台数

 1.19万台… (12) ※(10)×(11)


<サーバー(※IDC発表を参考)>

・販売台数(2016年)

 51.8万台… (13)

・稼働分(5年分)

 261万台… (14)

・データ喪失率

 1.00%… (15)

・復旧必要台数 ※(14)×(15)

 2.61万台… (16)

・復旧依頼率

 15.0%… (17)

・復旧依頼台数 ※(16)×(17)

 3,915台… (18)

・合計復旧依頼数 ※(6)+(12)+(18)

 7.96万台… (19)


<復旧依頼数、復旧台数の定義、推定根拠については下記の通り>

※1 有効数字は3桁とする。

※2 (5),(11),(17)の復旧依頼率は昨年同様、各社の経験値から算定。

※3 (7)については、当協会独自調査から推計。

※4 (8)については、アーカイブ、バックアップ用途の未稼働分を含む。

※5 (15)については、サーバーの原価償却期間を5年として稼働期間を定義、その間に各HDD個体の障害に遭遇する確率が全体で30%くらいに達するとして、冗長化継続対応を怠ったためにデータを消失するユーザーが1%くらいと想定。



■まとめ

 このような市場変化を示す動向を把握しておくため、当協会の会員企業からの聞き取り調査や、お客様から当協会に寄せられた相談内容をまとめたところ、「大容量化」、「依頼品の変化」、「激化する市場競争」の三つが主に挙げられました。


1. 大容量化によりデータ復旧サービス提供側も負担増加

 会員企業から得た事例では、近年100TBを超えるデータ復旧依頼が実際にあり、最近では300TBを超えるNASのデータ復旧依頼事例もありました。このようなデータ復旧作業においては、大量数のHDDを解析するインフラの準備と、これら依頼品からデータを復旧する際のバックアップストレージの手配などもあり、データを消失したユーザーと作業者側の双方の負担増加が問題となってきています。また、企業がデータを保存するために保有するストレージ装置も大型になることや、サーバーなどでは共有領域の稼働によりストレージ自体を預かることができない場合が殆どであるため、このような環境下でのインシデントにおいても即対応できる知識や体制、大掛かりなデータ復旧用のインフラが求められるようになってきています。


 この問題とは別に、近年サービス提供側の負担となっているのが「児童ポルノを所持したユーザー」からの依頼対応です。データ復旧作業においては、その工程上、一時的にユーザーの記録媒体を複製するのが一般的であり、作業後に所持が明らかとなった場合においては、二次的な単純所持となりかねないリスクも伴います。当協会では、2012年から「児童ポルノ拡散防止活動」に取り組んできたが本問題以外にも、リベンジポルノなど社会的な問題も伴ってきたため、当協会を中心とした司法機関や法律の専門家を交えた本格的な対応を行う計画をしています。


2. 変化する依頼品への対応遅れ、需要にずれ生じ始める

 一方、大容量化とは異なる新たな変化が、従来と異なる依頼品です。インターフェースを持たないフラッシュストレージ実装のパソコン、スマートフォンなどの依頼が急速に増えており、作業自体が対応困難な事例に悩ませられています。なかでも、スマートフォンにおいては端末固有のセキュリティ仕様によって成す術がない場合も多く、従来パソコンでは軽度の障害として扱われていた、ユーザーの誤操作などによる単純なデータ削除すら、対応できないケースとなってきました。また、時代を現すデータ復旧依頼としては、近年急激な普及を遂げている「ドライブレコーダー」で撮影された動画のデータ復旧依頼も目立ってきました。特に、多くのレコーダーで採用されているmicroSDの依頼が圧倒的であり、事故後ユーザーが該当動画のバックアップをせず、そのまま利用していたために起こる機器特性上の上書き消去で復元不可能なケースも多くあります。事故による過失証明で用いる重要なデータとして扱うなど、依頼内容によってはデータ復旧ではなく、デジタル・フォレンジックとして扱うべき依頼となる場合もあるため、サービス提供側も十分なヒアリングと細心の注意が求められるようになっています。なお、これまで、HDDに依存していたサービスは、市場に出荷された潜在数が減少するにつれ衰退していくことが予想され、さらには、IoT機器なども含めた次世代のデータ領域を視野に入れた技術対応も迫られています。


3. 激しい市場競争下で起こるトラブル、「おとり広告」への対処

 データ復旧依頼数の減少に伴い市場競争は激しさを増しています。このような状況を現すかのように、データ復旧サービスを利用後に業者とトラブルとなったお客様から当協会への相談も年々増えています。算定基準が明らかではなく何の根拠もない高い「復元率」を表示している、いわゆる「おとり広告」に魅せられ問い合わせしてしまい、業者に言われるままサービスを利用、結果的に納得のいかない復元データを受け取り高額な請求だけが求められたという事例も数多くありました。また「復元不可でも高額な費用が発生するサービス」など、ユーザーと業者との間で既に契約が成立している場合のトラブルも多く、弁護士や消費生活センターなどへ相談を委ねるしかないものもあります。このような現状を重く見た当協会では、これまで当協会に寄せられた多くの意見や相談をまとめた上で、お客様ご自身が確認すべき点をまとめました。


<依頼前に注意すべき点(日本データ復旧協会へのお客様相談まとめより)>

・WEBサイトや検索サイトの広告に表示される「復元率」の根拠について確認する。

・障害の程度に関わらず、「一律〇万円」といった価格に変動がないのかを確認する。

・他に選択肢がないような作業説明で不安を覚えた場合、他の業者も同様か確認する。

・キャンセルが可能なのか、またキャンセルした場合に費用が発生するのかを確認する。

・もしキャンセルを申し出た場合、どのくらいの期間で返却されるのかを確認する。

・復元不可だった場合は、診断費や作業費の負担額がどの程度に及ぶのかを確認する。

・送付先や持ち込んだ窓口の施設内で、実際の作業が行われているのかを確認する。

・媒体を急いで送るよう迫り執拗に媒体を引き取りたがる場合、その理由を確認する。


・復元率について

データ復旧作業の特性上「復元率」とは、お預かりしてから作業完了後に「お客様が希望するデータがどれだけ復元できたのか」を基準にお客様自身が判断する確率であり、さまざまな障害があるなかで、業者側が依頼前に判断できる確率ではないことから、当協会では「おとり広告」表示として、悪しき顧客勧誘行為の一つとして定義しています。


データ消失直後は、焦りや不安な心境下で正常な判断が難しいこともあるため、当協会では、このような点をお客様ご自身でしっかり確認するよう、この発表を通じて呼びかけることにいたしました。


「業界の健全化」をスローガンとした活動を続ける当協会では、現在も会員企業各社が模範的なデータ復旧サービスを提供し続けており、デジタル社会で起こるデータ消失トラブルを会員一体となって解決していくために今後、会員規模の拡大を図る予定です。

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