「細胞分離・濃度計測デバイス」の開発に成功
ライフサイエンス分野における検査・分析作業の前工程を自動化
2018.09.04 13:15
京セラ株式会社(社長:谷本 秀夫)は、自動で血液などから特定の細胞を分離して濃度を計測するチップ型の「細胞分離・濃度計測デバイス」の開発に成功しましたので、お知らせいたします。
このたび開発に成功したデバイスは、ライフサイエンス(生命科学)分野の検査や分析において、血液などから特定の細胞を抽出するなどの前工程作業の自動化に貢献します。例えば、白血球を用いる検査の前工程において本デバイスを用いることで、自動で、血液中の白血球を高精度で分離し、同時に白血球の濃度を計測することが可能です。
これにより、今後ますます需要が高まるライフサイエンス分野の研究開発での検査・分析などにおいて、作業時間の短縮や省人化を図ることができ、健康寿命などを対象とするライフサイエンス分野の発展に貢献します。
また、当社は本デバイス専用の細胞分離・濃度計測機器もあわせて開発しており、今後は検査・分析の対応範囲を広げて、再生医療や予防医療などに関する多くの研究開発用途に展開し事業の拡大を図ってまいります。
■製品名:細胞分離・濃度計測デバイス
■サイズ:W75×D35×H8(mm)
■用途:ライフサイエンス分野における細胞分離や濃度計測など
■生産拠点:滋賀八日市工場
■生産時期:2019年春を予定
【開発背景】 ライフサイエンス分野の急成長
ライフサイエンス分野では、生体中の遺伝子やたんぱく質などを用いた最先端の検査技術の研究開発が世界で盛んにおこなわれています。研究開発された技術が実用化されることで、今後、早期診断や予防医療のための次世代検査が一般的となり、次世代検査の市場は高い成長率で拡大し、10年後にはグローバルで約1兆5,000億円規模になると見込まれています。
一方、研究開発に必要な検査・分析の前工程では、経験を積んだ熟練技能者が専用試薬の調合や研究機器の操作などをおこなわなければならず、人材の不足や作業の効率化などが大きな課題となっています。
【製品の特長】
本デバイスは、血液などから遺伝子を含む細胞を分離し、細胞濃度を計測する工程に使用されます。例えば、遺伝子を含む白血球を用いる検査の前工程では、超微細な流路を形成するプレート型の本デバイスに血液を流すことで白血球とそれ以外の細胞とを分離して白血球のみを抽出します。同時に、独自開発した受発光デバイスで白血球の濃度を計測します。現在、白血球を抽出するには、熟練技能者が約90分かけて特殊な薬品や遠心分離機を使い作業をおこないますが、本デバイスを機器にセットすると約30分間で自動で同じ作業を完了することができます。さらに、デバイスを並列に配置して一斉に処理することが可能となり、現状の作業と比べて10倍以上の高い生産性を実現することができます。
【京セラの技術】
本製品の開発には、印刷機器に搭載されるプリンティングデバイスで培った微細加工技術(フォトリソグラフィ)が活かされています。超微細な流路を樹脂製のプレートに形成することで、細胞のような小さな物質を連続的に分離できるデバイスを開発することができました。また、細胞の計測は、プリンターのトナー濃度検出用の受発光センサを応用し、超小型のLEDとPD(フォトダイオード)を同一のシリコン基板上に形成する独自技術を採用することで、デバイスの小型化に成功しました。
※本製品は本年9月5日(水)~9月7日(金)の3日間、幕張メッセ国際展示場(千葉県千葉市)で開催されるアジア最大級の分析・科学機器専門展示会「JASIS2018」に出展いたします。「京セラブース:ホール7 miniソリューションコーナー S-23」
■エンドースコメント
【国立大学法人広島大学 大学院医歯薬保健学研究科 副研究科長 田原 栄俊教授】
我々が未病検査としてグローバルな普及を目指すテロメアテストは、少量の白血球を正確にカウントすることが必要です。しかし、手作業では多くの時間を費やし測定誤差も出てくることが大きな課題でした。京セラが開発した本デバイスは、少量の血液からダイレクトに正確な数の細胞を分離精製して集めることが簡単にできることから、その課題が解決できる大きな技術と捉えています。今後、未病検査がグローバルに普及されることによって、世界の健康長寿と医療費削減を狙うための土台となる技術になることが期待されます。
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