京都市障害者雇用促進アドバイザー派遣等支援事業を活用
伝統産業分野において障害のある方の雇用に繋がりました!
2018.11.16 12:15
本市では,「はぐくみ支え合うまち・京都ほほえみプラン」に基づき,障害のある方の就労支援に取り組んでいます。
この取組の一環として,障害者雇用に意欲があり,雇用に際し,そのノウハウを必要としている企業等に対し,障害者雇用促進アドバイザー派遣等に要する費用を補助する「京都市障害者雇用促進アドバイザー派遣等支援事業」(以下「アドバイザー派遣等支援事業」という。)を実施しています。
この度,アドバイザー派遣等支援事業を活用した京都の伝統的工芸品「京鹿の子絞」のメーカー絞彩苑 種田(下京区)(※)において,今年3月に障害(発達障害)のある方1名の採用が決まり,現在,伝統産業分野での新たな担い手として活躍されています。
※絞彩苑 種田
天保8年(1837年)に京都で創業以来,日本髪を結った女性の髪飾りとして「かのこ」の製造を始めた。初代種田茂兵衛から数えて現当主で六代目。絞り業では最も古い老舗である。絞りの彩りに人々が集まるように「絞彩苑」(こうさいえん)と名付けた。
○鹿の子絞とは
きものや帯揚げなどに使われる染織技法のひとつで,日本では千数百年も前から行われている。括(くくり)の模様が子鹿の斑点に似ているところから「鹿の子絞」と言われている。手仕事ならではの色合いやにじみ具合や独特の立体感が特徴。
株式会社 種田(絞彩苑 種田)代表取締役 種田 靖夫さんのメッセージ
歴史を辿ると,江戸時代には何度も禁止令が出されるほど,贅沢品であった「京鹿の子絞」は時の権力者から愛され,繊細かつ豪勢な絞りが製造されていました。
当時の高度な技術は,現代では到底再現できないと思っていましたが,アドバイザー派遣等支援事業を通じて出会った障害のある方の中には,手先が器用で集中力が高く,初めての体験にも関わらず,驚くような力量を発揮した方が多数おられたので,その方の特性に合ったサポートがあれば,伝統工芸の高い技術を習得することも夢ではないと感じました。
今回,採用した上田さんは,仕事に対するモチベーションが高く,また,繰返し作業の「くくり」に適した特性をお持ちでした。今は,「くくり」職人の腕を磨きながら,商売に必要な知識を覚えてもらっています。伝統工芸もグローバルな視野を求められる時代。世界に広めていける人材に成長して欲しいと願っています。
後継者不足に悩む伝統産業分野において,障害のあるなしに関係なく,新たな担い手を育成するには,業界全体で若い職人を育てようという前向きな意識が大切。
海外に人手を求め,生活の糧として「くくり」に携わる人に支えられてきた現状を脱皮して,一人の日本人として,伝統工芸の仕事に心から携わりたいと願う障害のある方が次の世代へ技術を継承する日も夢ではないと実感しています。
○絞彩苑 種田での取組
平成29年度アドバイザー派遣等支援事業の補助事業者に選定される。
アドバイザーからの支援を受けながら,障害のある方の雇用を検討し,今年2月に
開催した「体験会」に参加した発達障害のある方1名を3月末に採用した。
アドバイザー派遣等支援事業を通じて採用された上田 倫基さんのメッセージ
体験会で初めて職人さんの「くくり」を見た時は,手の動きが早く,魔法を見ているようでした。京鹿の子絞の「くくり」は,繰り返し作業が得意な自分の特性にピッタリで,「この仕事なら手に職をつけて働き続ける自分の姿をイメージできる。」と感じました。勤務は月曜から金曜日の午前9時から午後5時30分まで。
過度に集中してしまうので,意識的に水を飲む,トイレに行くなどを心がけています。京鹿の子絞に出会い,社会の一員として税金を納め,稼いだお金で自立して生活できるようになりました。同じような障害のある仲間に自分の姿を見てもらうことで,一人でも多くの人が勇気を出して社会に一歩踏み出すきっかけに繋がれば嬉しいです。
~京都市障害者雇用促進アドバイザー派遣等支援事業~
障害者雇用に意欲があり,具体的に雇用を進めるに当たり,障害のある方が働ける職域の設計や特例子会社設立等のノウハウを必要としている企業等に対し,障害者雇用促進アドバイザーの派遣等に要する費用補助を行う(平成23年度から実施)。
本事業を活用し,これまで,多くの民間企業における障害者雇用及び特例子会社の設立が実現している。
<障害者雇用促進アドバイザーによる支援の例>
・各種助成制度の活用に係るアドバイスや申請手続き代行支援
・事業計画に係る支援
・作業の切り出しや工程分解の支援
・採用後の定着支援