<日本・フィンランド「Coparenting(コペアレンティング)」 徹底比較!妊娠期・育児期の夫婦間意識調査> 妊娠期からの夫婦の密なコミュニケーションが、 育児期の産後うつや育児ストレス軽減に  子どもへの愛情や笑顔のあふれる家庭につながる 「Coparenting」社会を実現

江崎グリコ株式会社は、「日本の夫婦間の子育て」を取り巻く課題解決のカギとなる「Coparenting」社会の実現を目指し、この度、「Co育てPROJECT(こそだてプロジェクト)」を始動いたします。これを受け、日本で「Coparenting」研究を行う東北大学ウィメンズヘルス看護学吉沢教授のチーム監修のもと、日本と育児先進国であるフィンランドの両国において、12歳以下の子供を持つ男女計600名を対象とした「妊娠期・育児期のパパとママに向けた意識調査」を実施致しました。


図1


「Coparenting」とは、共働きの子育て先進国である米国で提唱された育児概念で、夫婦間のコミュニケーションや育児協同を推奨し、夫婦間の子育て環境を良好にするための研究テーマであり、日本においては比較的新しい概念です。妊娠期から始まる夫婦のコミュニケーションが、その後の子どもの成長に影響を与えることが近年の研究で分かってきています。


男女共同参画社会が進み、女性が仕事と家庭の両立を実現するためにも、パートナーである父親とともに育児を協同して行うことが必要不可欠です。江崎グリコでは、産官学による「Coparenting」社会の実現に向けた「Co育てPROJECT」の取り組みをスタートします。本調査では、日本と育児先進国のフィンランドとの育児環境や育児に対する意識を比較することにより日本における育児環境の課題を明らかにし、その解決に向けた糸口を探ります。そして、「Coparenting」社会の推進により、夫婦を取り巻く育児不安、育児ストレス、産後うつの軽減による育児環境改善を通じ、家族の良好な関係づくりの促進を目指します。


調査の中で、夫婦が育児を協同して行う関係性を把握するために「Coparenting関係尺度」を用いて測定いたしました。「Coparenting関係尺度」のスコアが高いほど、夫婦が育児を協同して行っていると判断することができます。その平均値を見ると、日本は3.82に対しフィンランドは4.19という結果でした(「Coparenting関係尺度」は、0~6点で点数化)。関係性の中でコミュニケーションに関する項目をみると、フィンランドが日本を大きく上回っており、“パートナー相互の育児方針が同じ”と感じている割合が25ポイント差(日本55.7%・フィンランド:81.3%)、“パートナーが的確なサポートをしてくれる”と感じている割合が16ポイント差(日本54.0%、フィンランド:70.0%)という結果でした。


パートナーとのコミュニケーションについては、特に妊娠期においてフィンランドが日本を大きく上回っている結果でした(コミュニケーションが取れていると感じている割合:(妊娠期)日本:60.0%・フィンランド:77.7%、(育児期)日本:54.7%・フィンランド:56.0%)。日本についてみると、妊娠期・育児期を通して、「Coparenting関係尺度」のスコアが平均よりも高いパパ・ママの約8割はコミュニケーションを取れていると感じているのに対し(妊娠期:パパ:80.6%、ママ:78.7%、育児期:パパ:82.1%、ママ:81.3%)、「Coparenting関係尺度」のスコアが平均よりも低いパパ・ママではコミュニケーションが取れていると感じているのは半分にも満たない(妊娠期:パパ:48.2%、ママ:36%、育児期:パパ:32.5%、ママ:28.0%)と大きな差があることがわかりました。妊娠期からすでにパートナー間の子育てへの意識や行動がすれ違っている可能性が見てとれます。


また、育児期において“子どもへの愛情を感じることがよくある”と回答したパパ・ママは、フィンランドが日本よりも20ポイント高い結果でした(日本:75.3%・フィンランド:95.3%)。日本についてみると、「Coparenting関係尺度」のスコアが平均よりも高いパパ・ママの9割以上が“愛情を感じることがよくある”と回答したのに対し(パパ:95.5%、ママ:94.7%)、「Coparenting関係尺度」のスコアが平均よりも低いパパ・ママでは“愛情を感じることがよくある”と回答したのは半分程度に止まる(パパ:54.2%、ママ:61.3%)と大きな差があり、「Coparenting」の実現が、「親の子どもへの愛情の増幅」につながることがわかりました。


<調査概要>

■調査エリア    :日本/フィンランド

■調査対象     :12歳以下の子供を持つ親(日本人男性:日本人女性:フィンランド人男性:フィンランド人女性=150:150:150:150)

■調査日      :2018年12月25日(火)~28日(金)

■インターネット調査:日本全国・フィンランド

■調査主体     :江崎グリコ株式会社



<調査トピックス>

1.夫婦が育児を協同して行っていることを示す「Coparenting関係尺度」のスコアは日本3.82、フィンランド4.19。コミュニケーションに関する項目でフィンランドが日本を大きく上回る結果に。

・夫婦が育児を協同して行っていることを示す「Coparenting関係尺度」のスコア(0~6点で点数化)は、日本が3.82に対しフィンランドが4.19という結果に。

・関係性の中でコミュニケーションに関する項目をみると、フィンランドが日本を大きく上回っていることが判明。※1


■パートナーも私も、育児の方針は同じである(日本:55.7%、フィンランド81.3%)

■パートナーは、私が親として困り果てているとき、私が望む的確なサポートをしてくれる(日本:54.0%、フィンランド:70.0%)

※1:「とてもよく当てはまる」、「当てはまる」、「やや当てはまる」の回答者の合計


2.「Coparenting関係尺度」のスコアが高いほどパートナーとのコミュニケーションが密に取れている。

・パートナーとの密なコミュニケーションは、特に妊娠期においてフィンランドが日本よりも大きく上回っている結果。(密にコミュニケーションが取れていると感じている割合※2:(妊娠期)日本:60.0%・フィンランド:77.7%、(育児期)日本:54.7%・フィンランド:56.0%)

・日本についてみると、妊娠期・育児期を通して、「Coparenting関係尺度」のスコアが平均よりも高いパパ・ママの約8割が密にコミュニケーションが取れていると感じているのに対し(妊娠期:パパ80.6%・ママ78.7%、育児期:パパ82.1%・ママ81.3%)、「Coparenting関係尺度」のスコアが平均よりも低いパパ・ママでは半分にも満たない(妊娠期:パパ48.2%・ママ36.0%、育児期:パパ32.5%・ママ28.0%)ことが明らかに。

※2:妊娠期は「妊娠状況や不安など、パートナーと密にコミュニケーションを取ることができたと思う」、育児期は「パートナーと密にコミュニケーション取りながら、子育てできていると思う」について、「とてもよく当てはまる」、「当てはまる」、「やや当てはまる」の回答者の合計


3.「Coparenting関係尺度」のスコアが高いほど、子どもへの愛情を感じ、子どもがよく笑っていると感じている。

・育児期において“子どもに対して愛情を感じることがよくあるか”について聞いたところ、フィンランドが日本よりも20ポイント高い結果となった(日本:75.3%・フィンランド:95.3%)。※3

・日本についてみると、「Coparenting関係尺度」のスコアが平均よりも高いパパ・ママの9割以上が“愛情を感じることがよくある”と回答したのに対し(パパ:95.5%、ママ:94.7%)、「Coparenting関係尺度」スコアが平均よりも低いパパ・ママでは“愛情を感じることがよくある”と回答したのは半分程度に止まる(パパ:54.2%、ママ:61.3%)と大きな差があることが明らかに。

・また、“子どもは、よく笑っていると思うか”について聞いたところ、日本80.3%、フィンランド93.3%という結果となった。※4

日本では、「Coparenting関係尺度」のスコアが平均よりも高いパパ・ママの9割以上が“よく笑っていると思う”と回答したのに対し(パパ:98.5%、ママ:96.0%)、「Coparenting関係尺度」のスコアが低いパパ・ママでは“よく笑っていると思う”と回答したのは6割程度(パパ:63.9%、ママ:66.7%)に止まっていることが明らかに。

※3、4:「とてもよく当てはまる」、「当てはまる」、「やや当てはまる」の回答者の合計


4.子育てに関する周囲の協力体制は、妊娠期・育児期ともに、「行政によるサポート」に日本とフィンランドで約2倍、「上司・同僚の配慮」は1.5倍の差が開くなど、フィンランドでは社会全体で子育てに対する意識が高く、サポート体制が整っていることが明らかに。※5

・行政サポート(妊娠期:日本41.7%・フィンランド77.7%、育児期:日本39.0%・フィンランド76.7%)

・上司・同僚の配慮(妊娠期:日本45.7%・フィンランド67.7%、育児期:日本42.7%・フィンランド67.7%)

※5:育児をする際の環境やサービスについて、「とても満足している」、「満足している」、「やや満足している」の回答者の合計



【「Coparenting」とは】

「Coparenting」(コペアレンティング)とは、親同士が子育てについて共有するとともに、親役割を調整・サポートしあう子どもを含めた3者の関係性です。

父親・母親の育児関与が均等(even)であることを示すのではなく、夫婦各々が自分たちの役割と責任について公平(fair)であると了解し、補償しあっていることが重要となります。「Coparenting」がうまくいくことで、夫婦関係が良くなる、育児不安や育児ストレスが低下する、児出生後の抑うつ度が低下する、育児の質が向上する(より温かく子どもに接することができる)、そして子どもの発達が促されるなどの良好な関係が生み出されると言われています。


【「Coparenting関係尺度」とは】

「Coparenting関係尺度」とは、「Coparenting」の程度を示す尺度で、数値(スコア)が高いほど、夫婦が育児を協同して行っている、「Coparenting」ができていると判断することができます。夫婦の関係性について、以下7つの観点から合計35の設問に回答してもらいスコア(0~6点で点数化)を算出します。

1 育児の合意:育児への考え方が近いか

2 育児による親密性:育児を通して夫婦の関係性が強化されていると感じるか

3 子供の前でのもめごと:子どもの見えるところでもめる(喧嘩する)ことがあるか

4 サポート:お互いサポートしあいながら育児を行っていると感じているか

5 阻害:パートナーから自分が行う育児について批判されていると感じているか

6 パートナーの育児の承認:パートナーの育児を肯定し、支持しているか

7 家事・育児の分担:家事・育児の分担が公平であると感じているか



1.夫婦が育児を協同して行っていることを示す「Coparenting関係尺度」のスコアは日本3.82、フィンランド4.19。コミュニケーションに関する項目でフィンランドが日本を大きく上回る結果に。

夫婦が育児を協同して行っていることを示す「Coparenting関係尺度」のスコア(0~6点で点数化)は、日本が3.82に対しフィンランドが4.19という結果となりました。また、夫婦間のコミュニケーションに関する項目をみると、「パートナーも私も、育児の方針は同じである」(日本:55.7%、フィンランド81.3%)や「パートナーは、私が親として困り果てているとき、私が望む的確なサポートをしてくれる」(日本:54.0%、フィンランド:70.0%)など、フィンランドが日本を大きく上回っていることが明らかとなっています。※1

※1:「とてもよく当てはまる」、「当てはまる」、「やや当てはまる」の回答者の合計


▼図1:Coparenting関係尺度

▼図2:パートナーも私も、育児の方針は同じである

▼図3:パートナーは、私が親として困り果てているとき、私が望む的確なサポートをしてくれる


2.「Coparenting関係尺度」のスコアが高いほどパートナーとのコミュニケーションが密に取れている。

パートナーとの密なコミュニケーションは、特に妊娠期においてフィンランドが日本よりも大きく上回る結果となりました。※2(妊娠期:日本60.0%・フィンランド77.7%、育児期:日本54.7%・フィンランド56.0%)

また、日本についてみると、妊娠期・育児期を通して、「Coparenting関係尺度」のスコアが平均よりも高いパパ・ママの約8割が密にコミュニケーションが取れていると感じているのに対し、「Coparenting関係尺度」のスコアが平均よりも低いパパ・ママでは半分にも満たないことが明らかになりました。(妊娠期:スコアが平均よりも高いパパ80.6%・スコアが平均よりも低いパパ48.2%、育児期:スコアが平均よりも高いパパ82.1%・スコアが平均よりも低いパパ32.5%、妊娠期:スコアが平均よりも高いママ78.7%・スコアが平均よりも低いママ36.0%、育児期:スコアが平均よりも高いママ81.3%・スコアが平均よりも低いママ28.0%)

※2:妊娠期は「妊娠状況や不安など、パートナーと密にコミュニケーションを取ることができたと思う」、育児期は「パートナーと密にコミュニケーション取りながら、子育てできていると思う」について、「とてもよく当てはまる」、「当てはまる」、「やや当てはまる」の回答者の合計


▼図4:妊娠期「妊娠状況や不安など、パートナーと密にコミュニケーションを取ることができたと思う」

    育児期「パートナーと密にコミュニケーション取りながら、子育てできていると思う」

▼図5:日本のパパ・ママ

    妊娠期「妊娠状況や不安など、パートナーと密にコミュニケーションを取ることができたと思う」

    育児期「パートナーと密にコミュニケーション取りながら、子育てできていると思う」


3.「Coparenting関係尺度」のスコアが高いほど、子どもへの愛情を感じており、子どもがよく笑っている。

育児期において「子どもに対して愛情を感じることがよくあるか」について聞いたところ、フィンランドが日本よりも20ポイント高い結果となりました(日本:75.3%・フィンランド:95.3%)。※3日本についてみると、「Coparenting関係尺度」のスコアが平均よりも高いパパ・ママの9割以上が“愛情を感じることがよくある”と回答したのに対し、「Coparenting関係尺度」スコアが平均よりも低いパパ・ママでは“愛情を感じることがよくある”と回答したのは半分程度に止まり、大きな差があることが明らかになりました。(スコアが平均よりも高いパパ:95.5%・スコアが平均よりも低いパパ:54.2%、スコアが平均よりも高いママ:94.7%、スコアが平均よりも低いママ:61.3%)

また、「子どもは、よく笑っていると思うか」について聞いたところ、日本80.3%、フィンランド93.3%という結果となりました。※4日本では、「Coparenting関係尺度」のスコアが平均よりも高いパパ・ママの9割以上が“よく笑っていると思う”と回答したのに対し、「Coparenting関係尺度」のスコアが低いパパ・ママでは“よく笑っていると思う”と回答したのは6割程度に止まっていることが明らかになりました。(スコアが平均よりも高いパパ:98.5%・スコアが平均よりも低いパパ63.9%、スコアが平均よりも高いママ:96.0%・スコアが平均よりも低いママ:66.7%)

※3、4:「とてもよく当てはまる」、「当てはまる」、「やや当てはまる」の回答者の合計


▼図6:子どもに対して愛情を感じる瞬間がよくある

▼図7:日本のパパ・ママ

    子どもに対して愛情を感じる瞬間がよくある

▼図8:自分の子どもは、よく笑っていると思う

▼図9:日本のパパ・ママ

    自分の子どもは、よく笑っていると思う


4.子育てに関する周囲の協力体制は、フィンランドでは妊娠期・育児期ともに、社会全体で子育てに対する意識が高く、サポート体制が整っていることが明らかに。※5

子育てに関する周囲の協力体制は、「行政によるサポート」(妊娠期:日本41.7%・フィンランド77.7%、育児期:日本39.0%・フィンランド76.7%)では約2倍、「上司・同僚の配慮」(妊娠期:日本45.7%・フィンランド67.7%、育児期:日本42.7%・フィンランド67.7%)では1.5倍もの差が開き、フィンランドでは社会全体で子育てに対する意識が高く、サポート体制が整っていることが明らかになりました。

※5:育児をする際の環境やサービスについて、「とても満足している」、「満足している」、「やや満足している」の回答者の合計


▼図10:行政によるサポート(ネウボラ等)に満足している

▼図11:上司・同僚からの配慮などに満足している



「Coparenting」研究の第一人者である吉沢先生にお話を伺いました。


吉沢 豊予子(よしざわ・とよこ)教授

東北大学大学院医学系研究科・医学部 副研究科長・副医学部長

千葉大学大学院看護学研究科博士後期課程修了博士(看護学)。

現東北大学病院で助産師、長野県看護大学を経て、東北大学大学院医学系研究科教授に就任、現在に至る。専門はウィメンズヘルス看護学、女性の生涯を通じての健康について研究。5年前より父親育児、「Coparenting」に関する研究を分野で手掛けてきた。


父親も母親も第一養育者としての責任を共有する「Coparenting」は、日本の子育ての現状における問題を解決する可能性があります。米国では実際に、「Coparenting」を促進する教育プログラムにより、産後の母親の抑うつと夫婦双方の育児ストレスの軽減、良好な夫婦関係や温かさあふれる質のよい育児、そして子どもの健康的な成長と発達を導くことが多くの研究で明らかになっています(Cowan & Cowan, 2002; Feinbergら, 2009, 2016)。今回の調査で日本と比較されたフィンランドでは、子育てといえば夫婦で共同して養育することであるという「Coparenting」の考えが定着しており(高橋, 2015)、日本で問題視されているワンオペ育児に陥ることはありません。このように、夫婦双方の意見を調整したり、サポートをし合いながら行う「Coparenting」は、日本の子育てに関する課題を克服するための重要な鍵になるでしょう。

今回の調査において、日本の親たちがフィンランドの親たちより「Coparenting関係尺度(CRS)得点」が0.42低かったことは、日本の親たちがフィンランドの親たちよりも「Coparenting」関係性が築けていないことを意味しています。これには、フィンランドでは一般的に子育ては夫婦でシェアするという考えがあるのに対し、日本では性別役割分業の考えが根強くあることから「Coparenting」があまり行えていないことが影響していると考えられます。6歳未満の子どもを持つ妻は、過去20年間で家事時間が1時間程減少する一方で、育児時間が1時間程増加したという現状(内閣府, 2017)により、日本の親たちの「Coparenting」がうまくいっていないことがCRS得点に反映された結果だと推測されます。また、日本の親たち自身、2人でどのように協力して子育てしたらいいか分からないという可能性もあるでしょう。これらのことから、フィンランドのような良好な「Coparenting」関係を築き、親たちも子どもたちも健康で幸せになるよう、日本でも「Coparenting」を推進していく意義は大きいのです。フィンランドでは受胎から1000日(WHO)、つまり妊娠期から子育て支援が始められており、「Coparenting」もまた妊娠期から育まれることをふまえれば(加藤ら, 2014)、妊娠期の夫婦にアプローチするCo育てプログラムが、親子・家族の心の健康に貢献する可能性は非常に高いと言えるでしょう。

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