働き方改革を考える東京都主催イベント 『ライフ・ワーク・バランス EXPO 東京 2019』開催報告
~都知事も次世代システムを体験! 東京ライフ・ワーク・バランス認定企業の大賞決定等~
東京都では、去る2月7日(木)、東京国際フォーラムにて「ライフ・ワーク・バランス EXPO 東京 2019」を開催しました。
11回目を迎えた本年は、近年、多様化するライフ・ワーク・バランスへの課題やニーズに対応するため、昨年度まで10年間にわたり開催してきた「フェスタ」の企画・展示等を拡充し、「柔軟にはたらく」「効率よくはたらく」「それぞれにはたらく」の3つのテーマを切り口に、総合的な情報発信の場として「ライフ・ワーク・バランスEXPO」としてリニューアルしました。
当日はメインステージで「平成30年度東京ライフ・ワーク・バランス認定企業認定状授与式」が執り行われ、認定企業11社の中から最も優れた取組をした企業を「大賞」、優良で特色ある取組をした企業を「知事特別賞」として発表・表彰しました。
認定状授与式
都知事が次世代会議システムを体験
その他メインステージでは、ネスレ日本株式会社 代表取締役社長 兼 CEOの高岡 浩三氏による基調講演や、フリーアナウンサーの松本 志のぶ氏の進行の下、著名人・有識者を招いて3つのパネルディスカッションを実施しました。
また、サブステージでは、効率的に業務をこなしながら業績を上げるノウハウ、病気治療と仕事を両立させる事例、女性の実力を引き出すマネジメントなど、各種ミニセミナーが開かれたほか、TOKYO働き方改革宣言企業が参加するワークショップ型の交流会を開催し、さまざまな視点からの働き方改革・ライフ・ワーク・バランスのアイデアが飛び交いました。
パネルディスカッション
今回、展示の新企画として設けた「働き方改革エリア」では、多人数参加型のテレビ会議システムなどの体験や、リラックスした雰囲気づくりで活発なコミュニケーションを促すミーティングスペース、ストレス軽減につながるオフィス環境緑化サービスなど、テーマに合わせて先進的なテレワーク機器とオフィス家具等を合わせて展示し、生産性の向上にもつながるオフィス空間を提案しました。
働き方改革関連法の施行が目前に迫り、ライフ・ワーク・バランスの推進に一層注目が集まる中、会場内は多くの来場者で賑わい、熱心に情報取集を行う姿や活発な意見交換を行う様子が見られました。
働き方改革エリアの様子
●東京ライフ・ワーク・バランス認定企業認定状授与式
平成30年度認定企業11社のうち「大賞」と「知事特別賞」の2社へ、都知事より認定状が授与されました。認定企業各社の代表者は、ライフ・ワーク・バランスに取り組んだきっかけや、取組内容・成果などを紹介しました。
平成30年度 東京ライフ・ワーク・バランス認定企業(11社)
*大賞 :株式会社ライフィ
*知事特別賞:社会福祉法人あいのわ福祉会
*アクトインディ株式会社
*株式会社ウィルド
*株式会社エフスタイル
*株式会社COLORS
*株式会社クリエイティブキャスト
*コーデンシTK株式会社
*株式会社テクノカルチャー
*TRIPORT株式会社
*株式会社メディセプト
認定状授与式の様子
認定企業の取組等の詳細は、「TOKYOはたらくネット_平成30年度ライフ・ワーク・バランス認定企業紹介ページ」( https://www.hataraku.metro.tokyo.jp/hatarakikata/lwb/ikiiki/nintei19/ )を御覧ください。
※「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」とは?
東京都が認定した、従業員が生活と仕事を両立しながら、いきいきと働き続けられる現場を実現するために、優れた取組を実施している中小企業等のことです。
●基調講演「ネスレ日本のマネジメントイノベーション」
高岡 浩三氏(ネスレ日本株式会社 代表取締役社長 兼 CEO)
<内容抜粋>
ネスレ日本では10年ほど前から経営改革に取り組んできた。それも踏まえたうえで、1つ指摘しておきたいのは、働き方改革とは、経営改革そのものであり、人事部だけの話ではなく、経営者の話だということ。端的に言えば社長の仕事なのだ。
そもそもワーク・ライフバランスを改善しても、ビジネスが低迷しては意味がない。業績を良くするためでなければならない。どうすれば、目標の売上と利益が達成でき、社員のベースアップが実現できるか。労働生産性の高い会社にすればいい。ではどうすればそんな会社になるのか。従業員の抱える不安を解消し、パフォーマンスが引き出せる、環境の整備が重要となる。
そこで私は社長になってから、社内で「イノベーションアワード」を作った。自分の顧客の問題を発見して、その解決案を考え小さいレベルで検証する、社員が全員参加する表彰のしくみだ。顧客は外部とは限らない。総務や人事、あるいは管理職にとっては社員も顧客だからだ。
2017年は2,500人の社員から4,800件ものアイデアが出た。表彰したアイデアは翌年には、会社の戦略として実施している。顧客の問題に焦点を当て、その解決を全社挙げてやっていく。こういう改革は経営者抜きにはできない。だからこそ、働き方改革は経営改革なのだ。
●パネルディスカッション「創造的な働き方を実現するために~テクノロジーを活かした組織作りから探る~」
<内容抜粋>
・茂木 健一郎氏(脳科学者)
脳を研究している立場から言うと、ずっと集中して働いていても、働きやすい環境の中であれば、実はそんなに苦ではない。自分でタイミングを計ったり、自分で判断を選んだりできる環境が重要なのだ。その人の個性と組織の環境のマッチングが取れていると、単に労働時間などだけでは見えない、働きやすさが作れる。
そういう環境構築にはIT系のツールが活用できるが、便利なツールが社内で普及する時は、「このツール、便利だよ」と、社員同士が教えあって「便利そうだ」「使ってみよう」という風土が先にできる。つまり、コミュニケーションが先にある。問題の発見と解決策を探す時は、社内に限らず情報交換すること。一番いい情報を集めて、一番いい判断の基礎を持つことが、働き方改革でも重要になる。
・永留 幸雄氏(全日本空輸株式会社 業務プロセス改革室イノベーション推進部 業務イノベーションチーム リーダー)
2012年より全日空(ANA)の働き方改革を、ITツールの開発という側面から推進する役目を負ってきた。元々はそれほど大袈裟に考えておらず、残業を減らしたい、事務所スペースを圧縮したい、業務の属人化を低減したい等と考え、解決に役立つITツールを模索していくうちに、一つひとつ個別にやるのではなく全部合わせてやると働き方改革になっていた。
たとえば、残業の多い部門に対して、働き方を改革しろとだけ上から言っても、仕事があるのだからと反発されてしまう。社内でワークショップを設け、課題抽出と解決の方向性を皆で出し合い、「それやります」と現場から言えるようになると共感も得やすい。急がば回れかもしれないが、結局、働き方を変えるのは相互理解が重要と言えるだろう。
現在私たちは、ANAで働く人達に時間的余裕を与えられる様、さまざまなデジタルテクノロジーを活用した成功事例を創っているところである。
●パネルディスカッション「働き方改革を業績向上につなげた企業の方法とは?~1000社のコンサル事例から~」
<内容抜粋>
・小室 淑恵氏(株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長)
ほんの数年前でも、「労働時間を減らすことは売上を減らすことであり、経済を停滞することだ」という認識がどこの業界でも強かった。小池都知事からの紹介をきっかけに、安倍内閣の産業競争力会議の民間議員となったが、大臣や官僚達でさえそういう認識だった。そこで深夜労働の削減で売上向上に成功した企業があり、その企業内では出生率が1.8倍になったという事例を紹介すると、大臣や官僚達の目の色が変わった。働き方改革は少子化対策にもなるとの気付きが、国会でパラダイムシフトにつながったのだ。
具体的な成功事例は沢山ある。企業の働き方は、エリアや職種よりも人材確保の魅力になり、企業の武器になる。働き方改革は競合との戦いに勝つために必要なことだと考えてほしい。
・白河 桃子氏(少子化ジャーナリスト、作家)
日本は昭和の時代に均質化と長時間労働で発展し、それが成功体験になった。だが現代は多様化と効率化が企業の成長のカギ。昭和の成功体験で培ったDNAをアンインストールしないと、最初からテレワークだけ導入してもかえって働きすぎになったりする。誰が何時に帰ろうが小さくならずに「失礼します」と言えるかが、1つのバロメーターだ。
働き方改革には経営者のリーダーシップとインフラ整備、従業員のマインドセットが大事になる。中小企業はインフラ整備だけ見て及び腰になるが、実はリーダーシップとマインドセットは中小企業のほうが小回りが効く分だけ容易だ。なぜ働き方改革するのか、経営課題として社内で共有して、働きやすく、働き甲斐のある会社を目指して欲しい。
●パネルディスカッション「子育てと仕事の両立を目指して~育休経験を人生への投資にする~」
<内容抜粋>
・佐藤 雄佑氏(株式会社ミライフ 代表取締役社長)
以前いた会社でリーマンショックの影響をもろに受け、結果を出せないダメ上司になったことがある。自分の指示通り一生懸命やっていた部下を守れなかったことがトラウマになり、仕事のやり方を変えざるを得なくなった。だが、仕事のやり方を変えたことで、業績が上向いた。その時「なんでもやろう」では生産性を下げるばかりで、むしろ「やらないことを決める覚悟」が大事だと悟った。
その後、男性の育児休業を早い時期に取得した。夫婦のどちらも同じレベルで家事ができるので、スムーズな共働きができている。自らの体験を元に、男女関係なく長く働き続ける社会の実現を考えると、女性の社会進出と男性の家庭進出をセットで考える必要があると思う。
・堤 香苗氏(株式会社キャリア・マム 代表取締役)
東京でも23区ではなく郊外になる多摩ニュータウンで事業を行っている。子育てや介護と仕事を両立したくても、新宿や大手町に通勤する余裕のない女性達の受け皿となるためだ。22年前からテレワークを利用して自宅でできる仕事の仕組みを作ってきた。その中で重要だと感じるのは、管理職が見るべきなのは、従業員の「働いている姿」ではなく、働いて出した「成果」の方だ。進捗管理ツールなどを使って成果を評価できれば、出勤して上司の見える場所で働かなくても評価はできる。
一人ひとりの従業員は、長い目で見ると会社の顧客につながっている。従業員が満足できない会社は、いつか顧客の不満を抱える。人を大事にするためにもテレワークを活用してほしい。
●司会進行・パネルディスカッションモデレーター
松本 志のぶ氏(フリーアナウンサー)
■イベント概要
主催 : 東京都
共催 : 子育て応援とうきょう会議
後援 : 東京商工会議所、一般社団法人東京経営者協会、
東京都中小企業団体中央会、東京都商工会連合会、
東京都商工会議所連合会、一般社団法人東京工業団体連合会、
東京中小企業家同友会、日本労働組合総連合会東京都連合会、
東京地方労働組合評議会、公益財団法人日本生産性本部、
独立行政法人労働政策研究・研修機構、
公益財団法人21世紀職業財団、内閣府男女共同参画局、
厚生労働省、東京労働局、九都県市、公益財団法人東京しごと財団、
公益財団法人東京都中小企業振興公社、
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
日時 : 2019年2月7日(木)10:00~18:00
会場 : 東京国際フォーラム ホールE(1)
入場料 : 無料
公式サイト: https://www.hataraku.metro.tokyo.jp/hatarakikata/lwb/expo/
- カテゴリ:
- 企業動向
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- ビジネス全般 経済(国内) その他ライフスタイル
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