日本メナード化粧品、シンクロトロン光を応用することで 皮膚組織そのままで、コラーゲンの微細構造の解析に成功!
日本メナード化粧品株式会社(本社:名古屋市中区丸の内、代表取締役社長:野々川 純一)は、シンクロトロン光(*)によるX線散乱測定技術を応用することで、皮膚組織に存在するコラーゲンをそのままの状態を保持させたまま、微細な構造を解析する技術を開発しました。
近年、コラーゲンは、美容、健康、医療などの分野において重要な生体成分として認知度が高くなってきました。肌の真皮では約70%を占める線維状のタンパク質であり、若々しい肌の弾力や老化に伴うシワなどに大きく関わっていることが明らかになっています。これまでの研究から、加齢に伴うコラーゲンの減少など、量的な変化を解析する技術は進歩していましたが、立体構造など、質的な変化を解析する技術については十分な開発がされていませんでした。
これまでは皮膚組織などの生体試料に存在するコラーゲンを解析する場合、前処理として、乾燥させたり、化学薬品でタンパク質を固定したりする必要がありました。これでは、本来のコラーゲンの構造に変化が生じてしまい、生体内に存在する本来の構造を解析することが困難な状況でした。今回開発した解析技術は、従来の前処理を施すことなく皮膚組織中のコラーゲンの構造をダイレクトに解析することに成功し、より生体に近い状態のコラーゲンの線維構造が解析できるようになりました。さらに、本解析技術は、これまでは数値化が難しかったコラーゲンの線維構造などを、数値化することも可能で、例えば、加齢によるコラーゲンの質的変化を数値化して老化状態を把握することも容易になります。
【シンクロトロン光】
真空中で光速に近い速度で直進する電子が、その進行方向を変えられた際に発生する、赤外線から硬X線まで広い波長領域をカバーする極めて明るい「光」です。この光を物質に照射すると、物質表面から電子やX線が放出されるなど様々な現象が起こります。この現象を解析することで、物質の構造などの解析に役立てられています。その他にも、超微細加工、材料科学、地球科学、生命科学などの幅広い分野の研究に利用されています。
メナードでは、30年以上コラーゲンの研究を続けてきており、このような解析技術の進歩は、アンチエイジング研究に新たな展開をもたらすと考えています。
今回の研究成果について、2019年6月28日(金)~29日(土)に東京で開催される第44回日本香粧品学会にて発表します。
(*)あいちシンクロトロン光センターにあるシンクロトロン光施設を使用
あいちシンクロトロン光センターは、次世代モノづくりに不可欠なナノレベルの先端計測分析施設として、産・学・行政が連携した「地域共同利用施設」として設置され、シンクロトロン光を用いた様々な測定が、日々実施されています。ここから生まれる成果を新しい産業の創造や地域産業の高度化へと繋げることを目的としています。
1.シンクロトロン光とは
シンクロトロン光とは、真空中で光速に近い速度で直進する電子が、電磁石などで、その進行方向を変えられた際に発生する「光(電磁波)」のことです。
シンクロトロン光は、目に見える可視光線だけでなく、マイクロ波、赤外線、紫外線、X線など、様々な波長の光(電磁波)が含まれており、「夢の光」とも言われています。
また、シンクロトロン光には非常に強力な光(太陽の100万倍)である、レーザーのような鋭い指向性、平行性を持つ(高指向性)という特徴があります。このような特徴を持ったシンクロトロン光を利用することにより、原子や分子など、ナノレベルの微細な構造や化学状態を測定することができます。現在、環境・エネルギー・資源・食糧・医療などの分野において利用され、タンパク質の結晶構造解析や触媒の機能解析を始めとするさまざまな研究に活用されています。
シンクロトロン光説明
2.あいちシンクロトロン光センター
あいちシンクロトロン光センターは、愛知県瀬戸市にある「知の拠点あいち」の基幹施設で、公益財団法人科学技術交流財団が主体となって運営しています。付加価値の高いモノづくりに不可欠なナノレベルの先端計測分析施設として、学術利用のみならず愛知県を中心とした地域の企業に放射光を利用してもらうことで、産業界に貢献することを目的とした放射光施設で以下の特徴があります。
【施設の特徴】(愛知県のHP「知の拠点あいち」の整備・推進から引用)
■ モノづくりに対応できる仕様と設備
● 産業界のニーズが高い硬X線領域に対応
● エネルギー領域の異なる4本のXAFS(X線吸収微細構造)ビームラインにより、ほとんどの元素に対応
● 使いやすい装置設計、材料の実使用環境を再現できる実験設備の充実
● あいち産業科学技術総合センター(県運営)の高度計測分析機器(電子顕微鏡など)との連携による運用
■ 様々な利用形態の実現
● 産業利用コーディネータの配置、専任のビームライン技術者及び大学研究者による利用支援と技術支援
● 産業利用に使いやすい利用メニューや柔軟な利用形態の提供(成果占有可、課題審査なしなど)
● 中小企業相談窓口を設置し、わかりやすい説明などきめ細やかなサポート
3.ナノレベルの測定手法である電子顕微鏡によるコラーゲン線維観察の課題
電子顕微鏡は、通常の顕微鏡(光学顕微鏡)が、観察したい対象に光(可視光線)をあてて拡大観察するのに対し、光の代わりに電子線をあてて拡大して観察する顕微鏡で、物理学、化学、工学、生物学、医学(診断を含む)などの幅広い分野で利用されています。
電子顕微鏡に用いる電子線の波長は光より遥かに「短い」ので、より小さな対象物を細かく見る事が出来ますが、その一方で、電子顕微鏡は安定した電子線を作るために「顕微鏡内を真空に保つ」ことが必要であるため、観察試料も真空状態で壊れないように水分を除去するなどの前処理や、電子線照射で帯電しないように、試料表面に導電性を与える前処理が行われます。
コラーゲン線維はたんぱく質の一種で、皮膚の真皮の約70%を占めています。丈夫なコラーゲン線維が構築する立体構造は、肌のハリや弾力を支えて、シワ、タルミのない肌をつくります。従って、コラーゲン線維の構造をナノレベルで観察することは、シワ、タルミのない肌の研究において重要な手法の一つです。しかしながら、電子顕微鏡で観察するためには、真空状態で壊れないように水分を除去する必要があるため、本来のコラーゲンの構造に変化が生じてしまい、生体内での本来の構造を解析することが困難な状況でした。
4.シンクロトロン光によるX線散乱測定の結果
X線を物質に照射すると、物質の構造に依存して一部のX線が方向を変えて散乱します。この散乱したX線を測定し、物質の構造情報を読み取る手法をX線散乱測定といいます。X線散乱測定を用いた場合でもナノレベルの小さな構造を調べることができますが、コラーゲン線維の構造を調べる場合、わずかしか方向を変えない微弱なX線を正確に読み取る必要があります。そこで、非常に強力で、レーザーのような鋭い指向性、平行性を持つ(高指向性)シンクロトロン光をX線源として利用し、コラーゲン線維のX線散乱を測定しました。X線散乱測定の場合、電子顕微鏡のような真空状態にすることなく試料の観察が行えます。加えて、導電性を与える前処理も必要ないので、より生体に近い状態のコラーゲンの線維構造が解析できるようになりました。
また、電子顕微鏡での観察は、狭い範囲を画像化したものであるため、コラーゲン線維の全体の構造を数値化することが困難でした。しかし、X線散乱測定では、X線を照射した領域で発生する散乱X線をまとめて評価するため、広い範囲の平均データを一度に得ることができます。結果が数値で得られるため、例えば、加齢によるコラーゲンの質的変化を数値化して老化状態を把握することも容易になります。
【会社概要】
会社名 : 日本メナード化粧品株式会社
本社所在地: 愛知県名古屋市中区丸の内3-18-15(メナードビル)
代表者 : 代表取締役社長 野々川 純一
設立 : 1959年11月17日
事業内容 : 化粧品および医薬部外品、健康食品、
インナーウェア等の研究開発・製造販売
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