平成31年度 新入社員「働くことの意識」調査結果 「働き方は人並みで十分(63.5%)」 「好んで苦労することはない(37.3%)」が過去最高を更新
2019.06.27 15:00
公益財団法人 日本生産性本部と一般社団法人 日本経済青年協議会は6月27日、平成31年度新入社員1,792人を対象にした「働くことの意識」調査結果を公表しました。この新入社員の意識調査は、昭和44(1969)年度より年一回実施しているもので、今回で51回目を数え、この種の調査ではわが国で最も歴史のあるものです。
【平成31年度 新入社員「働くことの意識」調査結果のポイント】
●「働く目的」では、過去最高だった一昨年(42.6%)から2年連続で減少してはいるものの「楽しい生活をしたい」が最も多かった(昨年度41.1%→今年度39.6%)。また、「経済的に豊かな生活を送りたい」も高い水準を維持(30.4%→28.2%)している。
一方、昨年過去最低を更新した「自分の能力をためす」はわずかに増え(10.0%→10.5%)、一時期増えていた「社会に役立つ」は横ばい(9.2%→9.3%)が続いている。
●「人並み以上に働きたいか」では、「人並みで十分」が昨年度に続き過去最高を更新(61.6%→63.5%)し、過去最低となった「人並み以上に働きたい」(31.3%→29.0%)の倍以上の回答割合だった。その差も過去最高を更新した(30.3ポイント→34.5ポイント)
●「デートか残業か」では、「残業」が減り(68.5%→63.7%)、「デート」が増え(30.9%→36.0%)と、「デート派」が3人に1人を超えた。
●「若いうちは進んで苦労すべきか」では、「好んで苦労することはない」が過去最高(34.1%→37.3%)となった一方、「苦労すべきだ」は減少を続け43.2%となり、最大54.3ポイントあったその差は過去最小の5.9ポイントにまで急速に縮小した。
<リリースに当たり>
この意識調査は、入社時の経済環境などによって異なる毎年の新入社員の意識を把握し、企業の教育研修に活かしていただくことを目的に行っています。この調査の結果をもとに、各年の新入社員に合った研修やキャリア開発を行うことによって、より適切な人材育成に結びつけていただきたいと考えるものです。
1. 働く目的は、「楽しい生活をしたい」が39.6%
~「自分の能力をためす」「社会に役立つ」は減少傾向~
「働く目的」(Q7)で最も多い回答は、平成12年度以降急増した「楽しい生活をしたい」で39.6%だった。過去最高を更新した一昨年度の42.6%から2年連続で減少した。一方、かつてはバブル期を除いてトップになることもあった「自分の能力をためす」は長期にわたって減り続け、昨年度10.0%と過去最低を更新したが、今年度は10.5%とわずかに増えた。また、平成に入ってから平成23年頃まで増加していた「社会に役立つ」は減少し、横ばい傾向にある(今年度9.3%)。また、このところ増加していた「経済的に豊かになる」は、昨年度の30.4%から今年度28.2%に減少した。
Q7. 働く目的(主な項目の経年変化)
<参考> 奨学金の利用状況 四年制大卒利用者の77.0%が「返済が負担に感じる」
近年、大学生を中心に奨学金を利用する学生が増え、その返済の負担が注目を集めているため、その利用状況についての質問を平成28年度に新設した。「利子つきで返済する奨学金」(Q33-3(a))を利用したのは全体の24.3%(昨年度25.2%)、学歴別に見ると「四年制大卒」30.7%(30.5%)、「専修学校・専門学校卒」30.6%(36.6%)、「短期大学卒」28.4%(30.6%)、「大学院卒」20.6%(23.1%)、であった。この数年、奨学金を利用率は低下している。
利子なしで返済をする場合も含め「返済を負担と感じるか」(Q33-4)では、返済する奨学金を利用した者(657人)の73.5%(昨年71.9%)、「四年制大卒」の77.0%(73.7%)、「大学院卒」の77.6%(71.5%)が「感じる」と回答している。
2. 働き方は「人並みで十分」が過去最高を更新し63.5%に
その年の新入社員の就職活動が順調だったか(大卒有効求人倍率)で敏感に変化する項目に、「人並み以上に働きたいか」(Q8)がある。景況感や就職活動の厳しさによって、「人並み以上」と「人並みで十分」が相反した動きを見せる。特にバブル経済末期の平成2~3年度には、「人並み以上」が大きく減り、「人並みで十分」が大きく増えたが、その後の景気低迷にともない平成12年度以降、入れ替わりを繰り返している。ここ数年では、平成24年度に厳しい就職状況を背景に「人並み以上」が「人並みで十分」を一旦逆転した。しかし平成25年度から「人並み以上」が減少(42.7%→40.1%→38.8%→34.2%→34.9%→31.3%→29.0%)するとともに、「人並みで十分」が増加(49.1%→52.5%→53.5%→58.3%→57.6%→61.6%→63.5%)し、両者の差は、調査開始以来最大の34.5ポイントに開いた。
Q8. 「人並みで十分」か「人並み以上に働きたい」が(経年変化)
<参考> 働き方と大卒求人倍率との関係(経年変化)
3. 「仕事中心」か「(私)生活中心」か
「仕事中心」か「(私)生活中心か」(Q6)という設問でも差が拡大した。常に「両立」という回答が多数を占めるが(グラフ略:今年度 77.0%)、残りの「仕事」中心と「(私)生活」中心という回答に注目すると、「(私)生活」中心という回答は平成3年度(22.8%)をピークに下がり続け、一時「仕事」中心が上回った。しかし平成24年度を底に「(私)生活中心」が再び増加し、「(私)生活中心」が「仕事中心」を上回り、差が広がっている。今年は「(私)生活」が17.0%(昨年度比+1.8ポイント)、「仕事中心」が6.0%(-0.7ポイント)と、差は11.0ポイントに拡大した。
Q6. 「仕事」中心か「(私)生活」中心か
4. デートか残業か
~「プライベートより仕事を優先」が多数派だが減少傾向~
「デートの約束があった時、残業を命じられたら、あなたはどうしますか」(Q15)では、「デートをやめて仕事をする」(平成27年度80.8%→76.9%→71.0%→68.5%→今年度63.7%)、「ことわってデートをする」(平成27年度19.0%→22.6%→28.7%→30.9%→今年度36.0%)と、全体としてはプライベートな生活よりも仕事を優先する傾向が引き続き見られるが、平成23年をピーク/ボトムとして、その後「デート派」が増加、「残業派」が減少している。
Q15. デートか残業か(経年変化)
5. 若いうちは進んで苦労すべきか
~「好んで苦労することはない」が過去最高~
「若いうちは自ら進んで苦労するぐらいの気持ちがなくてはならないと思いますか。それとも何も好んで苦労することはないと思いますか」(Q9)では、平成23年度から「好んで苦労することはない」が増え続け37.3%となり過去最高だった。逆に「進んで苦労すべきだ」は大きく減少して43.2%となり、最大54.3ポイントあった両者の差は過去最小の5.9ポイントだった。
Q9. 若いうちは進んで苦労すべきか
6. 会社の選択理由
~「能力・個性を活かせる」「仕事が面白い」で半数超~
「会社を選ぶとき、あなたはどういう要因をもっとも重視しましたか」(Q1)という質問に対して最も多かった回答は、引き続き「自分の能力、個性が生かせるから」(29.6%)だった。以下、「仕事が面白いから」(18.4%)、「技術が覚えられるから」(13.1%)の順だった。長期にわたって減少傾向の「会社の将来性」と入れ替るように平成14年度から増えた「仕事が面白いから」は、平成23年度から平成28年度で10ポイント近く減少した(26.8%→17.3%)が、この数年は横ばいである。中長期的には、職場に“寄らば大樹”的な期待をもつ傾向が退潮し、自らの技能や能力、あるいは職種への適性に関心がもたれる時代へと変化している。
Q1. 会社の選択理由(主な項目の経年変化)
7. 社長志向も専門職志向も過去最低水準
~女性は昇進志向が高まる一方で、二極分化傾向も見られる~
「どのポストまで昇進したいか」(Q13)という問いに対して、最も多かったのは「専門職<スペシャリスト>」(17.3%)、続いて「どうでもよい」(16.0%)だった。
この設問は男女差が大きく、昇進志向は低下しているものの男性で多い回答は順位「重役」(19.4%)、「部長」(18.6%)、「社長」(18.4%)である(女性ではそれぞれ9.6%、9.2%、4.1%)。一方女性で多い回答は、「専門職<スペシャリスト>」22.7%、次いで「役職にはつきたくない」(14.0%)、「主任班長」(13.5%)となる。女性では、具体的に明示されない「役職にはつきたくない(14.0%)」+「どうでもよい(19.0%)」という回答が約3分の1の33.0%に達している。
<参考:10年前(平成21年度)と今年度の比較>
社長 :平成21年度15.2→今年度12.6%(男性22.3→18.4%、女性5.8→4.1%)
重役 :14.1→15.6%(男性20.7→19.4%、女性 5.4→ 9.6%)
部長 :14.7→14.7%(男性19.6→18.6%、女性 8.2→ 9.2%)
課長 : 5.2→ 7.1%(男性 5.7→ 8.1%、女性 4.6→ 5.5%)
係長 : 1.6→ 2.0%(男性 0.9→ 1.9%、女性 2.6→ 2.2%)
主任班長: 8.7→ 7.9%(男性 2.7→ 4.1%、女性15.8→13.5%)
専門職<スペシャリスト>:24.4→17.3%(男性16.9→13.7%、女性34.4→22.7%)
役職にはつきたくない : 4.5→ 6.9%(男性 1.7→ 2.0%、女性 8.3→14.0%)
どうでもよい :11.7→16.0%(男性 9.4→13.9%、女性14.8→19.0%)
Q13. どのポストまで昇進したいか(平成21年度と31年度の比較)
8. 就労意識/生活価値観
~仕事や職場へのコミットメントの低下~
就労意識と生活価値観についての質問文に対し、「そう思う」から「そう思わない」まで4段階で聞いた(Q11/Q30)ところ、肯定的な回答(「そう思う」と「ややそう思う」の合計)の割合(%)は以下のような順になった。総じて、ポジティブないし積極的な態度が上位を占め、ネガティブないし消極的な態度が下位を占めている。
しかしこの5年間の推移をみると、仕事や職場へのコミットメントの低下傾向が見受けられる。5年前と比較し、プラス・マイナスでそれぞれ変動の大きかった上位3項目は以下の通り。
5年前との差(今年度)
- 職場の上司、同僚が残業していても、自分の仕事が終わったら帰る
… +14.3ポイント(49.4%)
- 仕事はお金を稼ぐための手段であって面白いものではない
… + 9.6ポイント(42.3%)
- 職場の同僚、上司、部下などとは勤務時間以外はつきあいたくない
… + 8.9ポイント(30.1%)
- あまり収入がよくなくても、やり甲斐のある仕事がしたい
… -14.9ポイント(48.0%)
- 面白い仕事であれば、収入が少なくても構わない
… -12.9ポイント(42.0%)
- 人間関係では、先輩と後輩など上下のけじめをつけることは大切なことだ
… - 8.1ポイント(83.2%)
Q11. 就労意識:「そう思う」と「ややそう思う」を合わせた割合(%)
( )内は前年度比
1位 :13 社会や人から感謝される仕事がしたい 93.9(+1.0)
2位 :7 仕事を通じて人間関係を広げていきたい 92.5(-1.6)
3位 :16 ワークライフバランスに積極的に取り組む職場で働きたい 91.8(-0.8)
4位 :3 どこでも通用する専門技術を身につけたい 90.4(-0.8)
5位 :9 高い役職につくために、少々の苦労はしても頑張る 81.5(+1.8)
6位 :12 これからの時代は終身雇用ではないので、会社に甘える生活はできない 78.2(+1.3)
7位 :1 仕事を生きがいとしたい 70.3(+1.8)
8位 :6 仕事をしていくうえで人間関係に不安を感じる 65.8(-4.9)
9位 :14 できれば地元(自宅から通える所)で働きたい 60.4(-1.5)
10位:11 職場の上司、同僚が残業していても、自分の仕事が終わったら帰る 49.4(+2.5)
11位:15 海外の勤務があれば行ってみたい 44.1(-3.1)
12位:8 仕事はお金を稼ぐための手段であって、面白いものではない 42.3(+1.3)
13位:2 面白い仕事であれば、収入が少なくても構わない 42.0(-2.3)
14位:4 いずれリストラされるのではないかと不安だ 41.0(+2.6)
15位:10 職場の同僚、上司、部下などとは勤務時間以外はつきあいたくない 30.1(-0.6)
16位:5 いずれ会社が倒産したり破綻したりするのではないかと不安だ 25.3(+1.4)
Q30. 生活価値観:「そう思う」と「ややそう思う」を合わせた割合(%)
( )内は前年度比
1位 :23 他人にはどう思われようとも、自分らしく生きたい 84.5(+0.7)
2位 :20 自分はいい時代に生まれたと思う 83.6(+3.0)
3位 :14 人間関係では、先輩と後輩など上下のけじめをつけることは大切なことだ 83.2(-4.2)
4位 :22 将来の幸福のために、今は我慢が必要だ 78.5(-0.8)
5位 :13 明るい気持ちで積極的に行動すれば、たいていのことは達成できる 78.2(+1.0)
6位 :12 すこし無理だと思われるくらいの目標をたてた方ががんばれる 66.8(+0.8)
7位 :15 たとえ経済的には恵まれなくても、気ままに楽しく暮らす方がいい 63.2(+1.1)
8位 :17 企業は経済的な利益よりも、環境保全を優先するべきだ 63.2(+3.6)
9位 :21 冒険をして大きな失敗をするよりも、堅実な生き方をするほうがいい 60.8(-0.2)
10位:18 世の中は、いろいろな面で、今よりもよくなっていくだろう 59.3(+0.1)
11位:11 リーダーになって苦労するよりは、人にしたがっている方が気楽でいい 54.9(+1.3)
12位:9 自分と意見のあわない人とは、あまりつきあいたくない 52.8(+1.5)
13位:16 あまり収入がよくなくても、やり甲斐のある仕事がしたい 48.0(-2.5)
14位:10 世の中、なにはともあれ目立ったほうが得だ 46.4(-0.5)
15位:8 周囲の人と違うことはあまりしたくない 44.9(+2.5)
16位:19 世の中は、いろいろな面で、今よりも昔のほうがよかった 33.6(+1.7)
9. 「第一志望に入社」は昨年より上昇
「第一志望の会社に入れた」(Q33-1)という回答は、平成24年度60.9%から平成25年度52.0%と大幅に減少し、設問設定以来で最低だったが、平成26年度以降は改善傾向が続き、この数年は横ばい傾向にあり、今年度60.3%だった。なお、厚生労働省・文部科学省「大学等卒業者の就職状況調査」によれば、4月1日現在の大卒者の就職率は平成22年度(平成23年3月)卒業者で91.0%と過去最低となった後、年々少しずつ好転し、平成31年3月卒業者では97.6%に達している。
<第一志望の会社に入れた割合 ※( )内は四年制大卒>
平成23年度56.6(51.5)% 平成24年度60.9(57.3)% 平成25年度52.0(46.3)%
平成26年度55.0(50.1)% 平成27年度56.4(53.0)% 平成28年度60.2(56.6)%
平成29年度60.6(57.5)% 平成30年度58.6(51.6)% 平成31年度60.3(54.6)%
【平成31年度新入社員「働くことの意識」調査の概要】
I. 本調査の沿革
本調査は昭和44(1969)年以来、毎年一回、春の新入社員の入社時期に継続的に行ってきた。新入社員を対象とするものとしてはもちろん、就労意識をテーマとする調査として他に例を見ない長期にわたる継続的な調査である。これまで半世紀以上、ほぼ同一の質問項目で実施されており、興味深いデータの経年変化が蓄積されてきた。なお、昨今の終身雇用制の後退、若い世代の価値観の変化などを背景に、時代にそぐわない質問項目が散見されるようになってきたため、平成13(2001)年の実施にあたって、いくつかの質問項目を入れ替えた。もちろん、これまでの時系列データの資産的な価値を重視し、多少、最近の新入社員には無理があると思える質問も、極力残す方向でリニューアルをした。今年度はリニューアル後19回目の調査となる。
II. 調査の概要
(1) 調査期間 :平成31年3月11日から4月26日
(2) 調査対象 :平成31年度新社会人研修村に参加した企業の新入社員
(3) 調査方法 :研修村入所の際に各企業担当者を通じて調査票を配布し、
その場で調査対象者に回答してもらった
(4) 有効回収数 :1,792人(男性1,060人/女性726人/無回答6人)
(5) 回答者プロフィール:(%)ただし四捨五入の関係上、
計が100にならないことがある