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日本人の抗菌薬・抗生物質に関する知識は EU諸国と比較して最低レベル!? 働き方改革導入後も「かぜをひいても休まない」人は約63%  抗菌薬意識調査レポート 2019 発表

感染症治療の切り札といわれる抗菌薬が効かない薬剤耐性(AMR)の問題が世界中で深刻化しており、日本でも新たな薬剤耐性菌を増やさない、さらに発生してしまった菌を拡散させないよう、取り組みが始まっています。薬剤耐性(AMR)の問題は抗菌薬・抗生物質の不適切な使用が一因とされています。その対策として私たちにできることは、抗菌薬・抗生物質の知識や理解を深めて正しく使うことです。


AMR臨床リファレンスセンターでは、一般の688人を対象に「抗菌薬・抗生物質に関する意識調査」を行いました。その結果、日本人の抗菌薬・抗生物質や薬剤耐性への知識が不十分であること、また、かぜの症状があっても“学校や職場を休めない”など、感染予防に関する意識や健康教育が社会に十分浸透していない実情が浮かびあがってきました。


http://amr.ncgm.go.jp/pdf/20190924_report.pdf




■調査SUMMARY<サマリー>

・抗菌薬・抗生物質の正しい知識を持つ人の割合は、EU諸国と比較してかなり少ない。症状を抑える薬だと誤解されている!?


・薬剤耐性とは「人の体質が変化して抗菌薬・抗生物質が効かなくなる」と誤解している人が約40%も!


・かぜの症状があっても仕事や学校を「休まない人」は全体の約63%も!その中でも「休みたくても休めない人」 が約40%近くを占める。


〇サンプル:一般人 全国 688名

      男性10代28名、20代62名、30代63名、40代61名、50代61名、60歳以上62名

      女性10代53名、20代60名、30代61名、40代56名、50代59名、60歳以上62名

〇調査方法:インターネット調査

〇調査期間:2019年8月



<調査結果のポイント>

(1) 一般国民の抗菌薬・抗生物質に関する知識は不十分である。

・「『抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける』は間違いである」との正しい知識を持つ人は23.1%のみであった。

・「『抗菌薬・抗生物質はかぜに効果がある』は間違いである」との正しい知識を持つ人も35.1%に留まっていた。

・抗菌薬・抗生物質に関する正しい知識を持つ人の割合は、同様の調査が行われているEU諸国と比較してもかなり低いことが明らかとなった。


(2) かぜで受診したときに患者が希望する薬として症状を抑える薬剤が並ぶ中、上位に抗菌薬・抗生物質が入っている。抗菌薬・抗生物質は症状を抑える薬だと誤解されている可能性がある。


(3) かぜで受診した際に医師から処方される薬としても抗菌薬・抗生物質が上位に入っており、しばしばある不適切な抗菌薬・抗生物質処方が誤解を強めている可能性も考えられる。


(4) かぜをひいても仕事や学校を休まない人は約63%であり、うち「休みたいが休めない」人が全体の約4割を占めた。

働き方改革や健康教育がまだ十分浸透していないことがうかがわれた。


(5) 「薬剤耐性」「薬剤耐性菌」という言葉を聞いたことがある人は全体の約半分であったが、聞いたことがあっても

薬剤耐性を「人の体質が変化して抗菌薬・抗生物質が効かなくなる」ことと誤解している人が約4割を占めた。


本調査を通じ、一般国民の間で抗菌薬・抗生物質に関する正しい知識は十分とはいえず、誤解も多いことが示唆された。抗菌薬・抗生物質や薬剤耐性に関する知識の、一般国民を対象とした普及啓発活動を今後も継続し、すべての人が健康な生活を送れるよう、薬剤耐性の問題に取り組んでいく必要がある。



<調査目的>

感染症治療に必要な抗菌薬・抗生物質が効かない薬剤耐性(AMR)の問題が世界中で深刻化しています。日本でも2016年に「薬剤耐性(AMR)アクションプラン」が発表され、薬剤耐性についての取り組みが始まっています。

薬剤耐性の問題は抗菌薬・抗生物質の不適切な使用が一因とされています。今回の調査は、抗菌薬・抗生物質、および薬剤耐性とは何かについて、現在一般の方がどのように認識されているのかを把握し、問題点と今後の取り組みの方向性を提示することを目的としています。



<調査概要>

・集計期間:2019年8月

・調査方法:インターネット

・調査対象:10代~60歳以上の男女

・調査人数:全国688名

      男性10代28名、20代62名、30代63名、40名61名、50代61名、60歳以上62名

      女性10代53名、20代60名、30代61名、40名56名、50代59名、60歳以上62名



Q1 抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがありますか?


Q1 抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがありますか? 


「聞いたことがあり、詳しく知っている」と答えた人は35.5%であり、「聞いたことはあるが詳しくはわからない」と答えた人60.2%を合わせると、回答した人の約96%が抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがあった。



Q2 抗菌薬・抗生物質についてあなたがあてはまると思うものをお選びください。

Q2-1 抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける

https://www.atpress.ne.jp/releases/194655/img_194655_2.jpg

「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」に対して「あてはまらない」と正しく回答した人は23.1%、「あてはまる」と回答した間違った認識を持っている人は64.0%であった。


- EU諸国との比較 -

https://www.atpress.ne.jp/releases/194655/img_194655_3.jpg

ヨーロッパで行われている世論調査1の結果と比較すると、EU28ヵ国では「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」に対して「あてはまらない」と正しく回答した人は43.0%であり、日本よりも正しく回答する人の割合が高かった。また、日本は最も正解率の低いギリシア(正解率23%)と同程度の正解率であった。

1:「Special Eurobarometer 478」Antimicrobial Resistance, September 2018


Q2-2 抗菌薬・抗生物質はかぜに効果がある

https://www.atpress.ne.jp/releases/194655/img_194655_4.jpg

「抗菌薬・抗生物質はかぜに効果がある」に対して「あてはまらない」と正しく回答した人は35.1%、「あてはまる」と回答した「抗菌薬・抗生物質はかぜに効果がある」と誤った認識を持っている人は45.6%であった。


- EU諸国との比較 -

https://www.atpress.ne.jp/releases/194655/img_194655_5.jpg

ヨーロッパの世論調査1では、EU28ヵ国では66%の人が「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」に対して「あてはまらない」と正しく回答しており、日本よりも正しい知識を持つ人の割合が高い。さらに日本は、正解率の最も低いポルトガル(正解率37%)よりも正解率が低かった。

1:「Special Eurobarometer 478」Antimicrobial Resistance, September 2018


Q2-3 抗菌薬・抗生物質を不必要に使っていると効果が薄れてしまう

https://www.atpress.ne.jp/releases/194655/img_194655_6.jpg

「抗菌薬・抗生物質を不必要に使っていると効果が薄れてしまう」に対して「あてはまる」と正しく回答した人は67.3%、「あてはまらない」と間違った認識を持っている人は11.6%であった。


Q2-4 処方された抗菌薬・抗生物質はすべて飲み切る必要がある

https://www.atpress.ne.jp/releases/194655/img_194655_7.jpg

「処方された抗菌薬・抗生物質はすべて飲み切る必要がある」に対して「あてはまる」と正しく回答した人は63.4%、「あてはまらない」と間違った認識を持っている人は17.8%であった。


Q2-5 抗菌薬・抗生物質を飲むと下痢などの副作用がしばしばおきる

https://www.atpress.ne.jp/releases/194655/img_194655_8.jpg

「抗菌薬・抗生物質を飲むと下痢などの副作用がしばしおきる」に対して「あてはまる」と正しく回答した人は54.1%、「あてはまらない」と間違った認識を持っている人は12.3%であった。「わからない」と回答した人が33.6%いた。



Q3 過去1年間にかぜをひいて医療機関を受診しましたか?

https://www.atpress.ne.jp/releases/194655/img_194655_9.jpg

回答者中40%の人が、過去1年間にかぜをひいて医療機関を受診していた。



Q4 直近でかぜで医療機関を受診したときにどんな薬が処方されましたか?

https://www.atpress.ne.jp/releases/194655/img_194655_10.jpg



Q5 今後かぜで医療機関を受診した場合にどんな薬を処方してほしいですか?

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実際に処方された薬は「咳止め」が1番多く、次いで「解熱剤」、3番目が「抗菌薬・抗生物質」(52.5%)であった。一方、今後かぜの時に処方してほしい薬としては「咳止め」が1番多く、次いで「解熱剤」「鼻水を抑える薬」であった。「抗菌薬・抗生物質」は4番目であり31.7%の人が処方を希望した。



Q6 例えば今朝起きたら、だるくて鼻水、咳、のどの痛みがあり、熱を測ったら37℃でした。あなたは学校や職場を休みますか?

https://www.atpress.ne.jp/releases/194655/img_194655_12.jpg

今朝、かぜをひいたと想定したときに「休む」人は37.1%であったのに対し、「休みたいが休めない」人は38.5%、「休まない」人は24.4%であった。合わせると「休まない」人は約63%であった。



Q7 薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を聞いたことありますか?

https://www.atpress.ne.jp/releases/194655/img_194655_13.jpg

薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を「聞いたことはある」が49.6%、「聞いたことはない」が50.4%であった。



Q8 薬剤耐性、薬剤耐性菌についてあてはまると思うものをお選びください

https://www.atpress.ne.jp/releases/194655/img_194655_14.jpg

「薬剤耐性とは病気の原因となる細菌が変化して抗菌薬・抗生物質が効きにくくなることである」と正しく回答した人は約80%であった。一方で、「病気になる人の体質が変化して抗菌薬・抗生物質が効きにくくなる」と誤った回答をした人も44.3%存在した。



<考察>

・「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」に「あてはまらない」と正しく回答した人は23.1%、「抗菌薬・抗生物質はかぜに効果がある」に「あてはまらない」と正しく回答した人は35.1%にとどまった。日本では抗菌薬・抗生物質に関して正しい知識を持っている人の割合が低いことが明らかとなった。同様の調査が行われているヨーロッパ諸国と比較しても正しい知識を持っている人の割合がかなり低い。


・一方で、不必要に使っていると効果が薄れてしまう、処方されたらすべて飲み切る必要があるなど抗菌薬・抗生物質の飲み方に関する知識は半数以上の人が持っていることが分かった。


・かぜで受診したときに、症状を抑える薬を希望する人が多い一方で、抗菌薬・抗生物質も上位に入っており、抗菌薬・抗生物質を症状を抑える薬と誤解している人がいる可能性がある。実際に処方された薬の中にも抗菌薬・抗生物質が上位に入っており、誤った処方が少なくないことや、それが誤解を強化している可能性が示唆される。


・抗菌薬・抗生物質はかぜには効果がないということを一人ひとりが理解することが必要である。


・かぜをひいたときに仕事や学校を「休む」と答えた人は37.1%であり、「休まない」と答えた人は約63%であった。その中でも「休みたいが休めない」人が全体の4割近くを占めた。「働き方改革」が導入されたとはいえ、休みたくても休めない実情がうかがわれた。かぜを早く治し、感染拡大を防ぐためには休むことが必要であるが、そのような健康や病気に関する意識が日本の社会には十分浸透していないことも背景にあると考えられる。


・薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を「聞いたことはある」人は約半分であり、聞いたことがあっても正確に理解していない人が一定数いることがうかがわれた。今後も継続して、一般市民に向けた啓発活動を続けていく必要がある。



<AMR対策の必要性>

~抗菌薬・抗生物質は不適切な使用により、本当に必要な時に効果が低くなる~

抗菌薬・抗生物質は細菌が増えるのを抑えたり、殺したりする薬です。しかし、細菌もさまざまな手段を使って生き延びようとします。本来ならば効くはずの抗菌薬・抗生物質が効かなくなることを、「薬剤耐性(AMR:Antimicrobial resistance)」といいます。2019年4月29日、国連は抗生物質が効きにくい薬剤耐性菌が世界的に増加し、危機的状況にあるとして各国に対策を勧告しています。日本では、外来での抗菌薬・抗生物質使用が9割以上を占めており、外来診療で抗菌薬・抗生物質の適正使用を推進することが不可欠といえます。


https://news.un.org/en/story/2019/04/1037471

No Time to Wait: Securing the future from drug-resistant infections

Report to the Secretary-General of the United Nations April 2019

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