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日東薬品と東京農工大、 短鎖脂肪酸摂取による肥満抑制メカニズムを解明

イギリス電子ジャーナル「Scientific Reports」に掲載

 医薬品の研究開発および製造販売を手がける日東薬品工業株式会社(本社:京都府向日市、代表取締役社長:北尾哲郎、以下「日東薬品」)は東京農工大学農学研究院(以下「東京農工大」)木村郁夫教授との共同研究で、発酵食品などに多く含まれる短鎖脂肪酸[*1]が宿主のエネルギー代謝を調節するメカニズムを解明し、食事から摂取する短鎖脂肪酸による肥満改善効果も確認しました。

 本研究結果はイギリスの電子ジャーナル「Scientific Reports」に11月13日付で掲載されました(筆頭著者は当社研究員の清水秀憲)。


論文タイトル: Dietary short-chain fatty acid intake improves the hepatic metabolic condition via FFAR3

URL     : https://www.nature.com/articles/s41598-019-53242-x



■短鎖脂肪酸は肥満を抑制する

 私たちの身近には漬物やチーズなどの様々な発酵食品があり、体に良いことで古来から親しまれています。発酵食品には、発酵過程で微生物により産生される酢酸や酪酸などの短鎖脂肪酸が多く含まれています。また、短鎖脂肪酸は宿主[*2]の腸管内で腸内細菌が食物繊維を発酵することでも産生されます。これら短鎖脂肪酸は単なるエネルギー源としてだけではなく細胞膜上の脂肪酸受容体を介したシグナル伝達分子としての働きも持っており、代謝機能に直接的な影響を及ぼす可能性が示唆されていたものの、詳細なメカニズムはこれまで明らかではありませんでした。

 この度日東薬品は、東京農工大との共同研究において、短鎖脂肪酸を摂取することで肥満が抑制されることを明らかにしました。この度私たち日東薬品は、東京農工大との共同研究において、肥満モデルマウスを用いた実験で、短鎖脂肪酸を摂取することで肥満が抑制されることを明らかにしました。

 肥満モデルマウスにそれぞれ酢酸やプロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸を与えると、高脂肪食のみを与えた場合と比較して肝臓を含めた脂肪組織の重量増加が大幅に抑制されることが明らかになりました。(図1)このことから、本実験では短鎖脂肪酸が高脂肪食によって引き起こされる体重増加を抑制することが実証されました。

 次に肝臓中の脂肪合成に関わる遺伝子の発現を解析したところ、脂肪合成に関わる遺伝子(Fas, Chrebp)の有意な減少、脂肪酸の代謝に関わる遺伝子(Ppara)の有意な増加を確認しました。一方で、短鎖脂肪酸の受容体であるGタンパク質共役受容体[*3](G protein-coupled receptor ; 以下GPCR)41を欠損させたマウスで同様の実験を行ったところ、GPCR41欠損マウスでは肝臓中の脂肪重量および脂肪合成に関わる遺伝子発現の変化は見られませんでした。

 以上の結果より、短鎖脂肪酸は肝臓の代謝機能を改善することによって肥満を抑制することが示唆されました。


 近年の食の欧米化に伴う肥満症の患者増加は社会的な問題となっており、その治療法・予防法の確立は急務な課題です。短鎖脂肪酸の生体調節機能は、近年、エネルギー代謝のみならず、宿主の生体恒常性維持(免疫系や心疾患系など)に影響を及ぼすことが明らかになりつつあります。短鎖脂肪酸を調節する食事や薬物治療を確立することは、肥満症・糖尿病を始めとした様々な疾患に対する新たな予防・治療法の開発に繋がるとして、今後、本成果の応用が期待されます。


(図1) 体重変化および脂肪組織重量


 日東薬品の戦略的バイオ研究部門NOSTER(ノステル)は、創立以来培ってきた腸内細菌の培養技術のもと、腸内細菌やポストバイオティクス[*4]による腸内細菌叢をターゲットとした革新的治療の実現を目指しています。



■注釈

[*1]短鎖脂肪酸:

炭素数が6以下の脂肪酸。酢酸・プロピオン酸の他に酪酸がある。

[*2]宿主:菌類等が寄生、又は共生する相手の生物。

[*3]Gタンパク質共役受容体:

生体内に存在する受容体の形式の1つ。細胞膜を7回貫通する特徴的な構造をもつ。

[*4]ポストバイオティクス:

乳酸菌やビフィズス菌などの有用微生物(プロバイオティクス)が産生する、宿主(ヒト)に有益な作用をもたらす代謝物のこと。



■日東薬品工業株式会社

代表者 : 代表取締役社長 北尾 哲郎

所在地 : 京都府向日市上植野町南開35-3

事業内容: 医薬品・化粧品・食品の研究開発および製造販売

URL   : http://www.nitto-pharma.co.jp

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