第7回「生活者の社会的意識・行動に関する調査」結果を発表 SDGsを達成する商品の購入者は、 社会的取り組みに対する参加意欲が高い
~「購入者参加型」で社会的課題を解決する商品が求められる時代に!?~
2020.01.30 10:30
一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会(略称:APSP、本社:東京都中央区、会長:江口 泰広)は、株式会社SoooooS.カンパニー(本社:東京都中央区、代表取締役:木村 有香)と合同で、2012年から定期的に継続し、今回で7回目となる生活者の社会的意識や行動を探るためのアンケート調査を2019年8~9月に行いました。
【調査結果のポイント】
・何らかの社会的課題を解決するソーシャルプロダクツを日頃から購入している人の内、その商品がSDGsの達成に結び付いていると認識している人は10%未満。<詳細:調査結果(1)>
・ソーシャルプロダクツを日頃から購入している人の過半数は、商品の社会的取り組み(被災地での植樹、海岸の清掃、無農薬栽培や伝統産業の体験など)に対する参加意欲が高い。<詳細:調査結果(2)>
・ソーシャルプロダクツを購入していない理由、あるいはそれらに感じている不満は、「どれが該当商品なのか分からない(43.2%)」、「価格が高い(21.9%)」、「身近に買える場所がない(21.6%)」が上位3項目。<詳細:調査結果(2)>
・いかなるカテゴリーの商品(「最寄り品」「買回り品」「専門品」)であっても、ソーシャルプロダクツの「人や地球、地域社会に対する配慮」は、何らかの形で商品の購入や推奨を喚起(「購入やその検討・後押し」「イメージアップ」「SNSでの発信」など)する。<詳細:調査結果(3)>
・若者(10-20代)は、「1番:貧困をなくそう」「6番:安全な水とトイレを世界中に」といった発展途上国の問題に関連するターゲットを多く含むSDGsへの興味・関心が相対的に高い。<詳細:調査結果(4)>
・男性より女性の方が、SDGsの達成につながる行動を実践している人が多い。<詳細:調査結果(4)>
【ソーシャルプロダクツとは】
何らかの社会的課題の解決に貢献する商品・サービスを指します。東京オリンピック・パラリンピックの食材・資材調達基準などでも話題になっているオーガニックや環境配慮(エコ)、フェアトレードといった、人や地球、地域社会に配慮があり、SDGs(持続可能な開発目標)の達成につながる商品・サービスの総称です。
※ソーシャルプロダクツの定義: http://www.apsp.or.jp/socialproducts/
【調査の概要】
調査方法:インターネット調査
調査対象:10代~60代の男女680人
調査地域:全国
調査期間:2019年8月29日~9月2日
調査会社:株式会社マクロミル
【調査結果】
(1) SDGsの達成につながる商品の認知度は約30%だが、実際に購入までしている人は5%未満にとどまる。さらに、何らかの社会的課題を解決するソーシャルプロダクツを日頃から購入している人※であっても、それらがSDGsの達成に結び付いていると認識している人は10%未満。
SDGsの達成につながる商品について知っているか質問したところ、「どういうものか知っていて、購入したことがある」人は3.7%、「どういうものか知っているが、購入したことはない」人は10.1%、「聞いたことはあるが、よく知らない」人は19.0%、「聞いたこともなく、全く知らない」人は67.2%という結果が得られました。
上記結果から、SDGsという言葉自体は、生活者に30%程度は浸透しているようですが、その内容の理解や、実践・行動・購入まで伴う形での拡大は、それぞれ10%強、5%未満であることが明らかになりました。
また、何らかのソーシャルプロダクツを日頃から購入している人※は、全体の29.1%でしたが、その内、自分の消費がSDGsの達成に結び付いていると認識している人は7.1%でした。
※本調査における何らかのソーシャルプロダクツを日頃から購入している人とは、「現在、『フェアトレード商品』『オーガニック商品』『エコ商品/環境配慮型商品』『寄付つき商品』『地域や伝統に根ざした商品』を購入していますか?」という質問に対して、いずれか1つ以上を購入していると回答した人を指します。
(1)の図:SDGsの達成につながる商品の浸透率
(2) ソーシャルプロダクツを日頃から購入している人の過半数は、自分が購入している商品の社会的取り組みに参加してみたいと考えている。一方、購入していない理由やそれらに対する不満は、「どれが該当商品なのか分からない」「価格が高い」「身近に買える場所がない」が上位3項目。
何らかのソーシャルプロダクツ(「フェアトレード商品」「オーガニック商品」「エコ商品/環境配慮型商品」「寄付つき商品」「地域や伝統に根ざした商品」)を日頃から購入している人に、「あなたが購入している商品の社会的取り組み(被災地での植樹、海岸の清掃、無農薬栽培や伝統産業の体験など)に参加してみたいですか?」と質問したところ、「ぜひ参加してみたい」人が13.1%、「内容や日時によっては参加してみたい」人が40.9%となり、参加にポジティブな回答が過半数を超えました。
上記の結果から、商品を通してSDGsの達成につながるような社会的取り組みを展開し、そこに生活者を巻き込んでいく「購入者参加型」のソーシャルプロダクツが求められている可能性が示唆されました。
一方、ソーシャルプロダクツを購入していない理由、あるいはそれらに感じている不満を質問したところ、「どれが該当商品なのか分からない」と回答した人が43.2%、「価格が高い」と回答した人が21.9%、「身近に買える場所がない」と回答した人が21.6%で、上位3項目となりました。
どれか分からない、買える場所がないという意見からは、企業・団体(販売側)のプロモーション不足が伺えます。また、ソーシャルプロダクツは、原材料の栽培に手間がかかったり、大量生産が難しかったりする場合が多いため、通常商品と比較してコストが高くなる傾向があります。商品の(ソーシャルな)背景・ストーリーを、生活者に十分伝えることで価格に理解を示してもらうことも課題と言えるでしょう。
デザインや品質に関する不満は、2012年の調査開始以来、初の双方が5%を下回る結果となりました。
これらの結果からは、ソーシャルプロダクツのクオリティが高まってきていることが推測されます。
(2)の図1:ソーシャルプロダクツ購入者の社会的取り組みに対する参加意向
(2)の図2:ソーシャルプロダクツを購入しない理由とそれらに対する不満
(3) ソーシャルプロダクツの「人や地球、地域社会に対する配慮」は、いかなる商品カテゴリー(「最寄り品」「買回り品」「専門品」)においても、何らかの形で商品の購入や推奨を喚起する
今回の調査では、ソーシャルプロダクツの特徴である「人や地球、地域社会に対する配慮」が、商品の購入や推奨を喚起することにつながるかどうかについて、3つの商品カテゴリー(「最寄り品」「買回り品」「専門品」)ごとに5つの項目から質問しました(「それだけで購入につながるか」「購入の検討や後押しにつながるか」「継続的(リピート)購入につながるか」「ファンになったり、イメージアップにつながるか」「知人への推奨・SNS発信につながるか」)。
最寄り品:日常的に購入する安価な商品(食品、化粧品、日用雑貨など)の場合では、「それだけで購入につながる」人が3人に1人を超える35.0%となったことが目立っており、逆に5つの項目の「いずれにもつながらない」と回答した人は、32.6%でした。
買回り品:比較・検討しながら購入する高価な商品(衣類、アクセサリー、家具、家電など)の場合では、「それだけで購入につながる」人は13.7%まで落ちるものの、「購入の検討や後押しにつながる」人は3人に1人を超える34.9%となりました。
専門品:購入に特別な意味のある/ライフイベントに関わる商品(住宅、自動車、結婚式場など)の場合では、他2つの商品カテゴリーと比較して、全ての項目において相対的に低い水準ではあるものの、約半数(49.9%)の人は、少なくとも5つの項目のいずれかにはつながることが分かりました。
上記結果から、いかなる商品カテゴリーであっても「人や地球、地域社会に対する配慮」は、約半数以上の生活者に対して、何らかの形で商品の購入や推奨を喚起することが明らかになりました。あらゆる企業・団体は、商品を通して社会的課題の解決やSDGsの達成に取り組み、その内容を生活者とコミュニケーションすることで、売上増加につながることが見込まれます。
(3)の図1:人や地球、地域社会に対する配慮が生活者に及ぼす影響(最寄り品)
(3)の図2:人や地球、地域社会に対する配慮が生活者に及ぼす影響(買回り品)
(3)の図3:人や地球、地域社会に対する配慮が生活者に及ぼす影響(専門品)
(4) SDGsの17目標ごとの「興味・関心」度合いは世代間で違いがあり、若者は「1番:貧困をなくそう」「6番:安全な水とトイレを世界中に」といった発展途上国の問題に関連するターゲットを多く含む目標への興味・関心が高い。また、17目標ごとの「行動・実践」水準は男女間で差が見られ、男性よりも女性の方がSDGsの達成につながる行動を実践している人が多い。
SDGsの各内容について説明※した上で、目標ごとに「興味・関心があるか」を質問したところ、「13番:気候変動に具体的な対策を」に興味・関心がある人が36.6%、「3番:すべての人に健康と福祉を」が36.3%で、上位2項目となりました。また、若者(10-20代)に絞って集計したところ、「1番:貧困をなくそう」に関心がある人が40.4%、「6番:安全な水とトイレを世界中に」が同じく40.4%で、上位2項目となりました。
全体的な傾向としては、地球温暖化や健康・福祉といった国・地域を問わず普遍的な問題に関連するターゲットを多く含む目標が、相対的に高い水準となりました。一方で、10-20代の回答者に絞り込むと、発展途上国に関連するターゲットを多く含む目標が、相対的に高い水準となり、国内の若者が国際的な社会的課題に興味・関心を持っていることが伺えます。
(4)の表1:生活者のSDGsに対する興味・関心
(4)の図1:生活者のSDGsに対する興味・関心
つぎに、目標ごとに「目標達成につながる行動を実践したことがあるか」を質問したところ、「13番:気候変動に具体的な対策を」に関する行動を実践したことがある人が19.6%、「12番:つくる責任 つかう責任」が15.6%で、上位2項目となりました。また、男女別に集計したところ、男女ともに「13番:気候変動に具体的な対策を」が1位ではあるものの、男性が16.1%、女性が23.1%と7%の差が見られました。さらには、「5番:ジェンダー平等を実現しよう」に関する行動を実践したことがある男性は、わずか4.7%で最低水準であることも明らかになりました。
全体的な傾向としては、全ての目標において行動・実践の水準が20%を下回る結果となった一方で、17の目標の内、何らか(1つ以上)の目標達成につながる行動を実践したことがある人は44.4%でした。また、男女別では、女性が51.9%で、男性が37.7%という結果が得られ、女性の方が行動・実践に関して積極的であることも分かりました。
(4)の表2:生活者のSDGsの達成につながる行動の実践率
(4)の図2:生活者のSDGsの達成につながる行動の実践率
※各目標内容の説明にあたっては、「持続可能な開発目標(SDGs)」『グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン HP』( http://ungcjn.org/sdgs/ )に記載されている邦訳を引用。
今回の調査では、社会的課題の解決につながる消費をしている人はまだまだ少ないことや、SDGsの「興味・関心」「行動・実践」の水準は性別や世代により差があることなどが明らかになりました。そして、人や地球、地域社会に対する配慮や、社会的取り組みに生活者を巻き込んでいくことは、商品・サービスの売上増加に寄与する可能性も示唆されました。
上記を踏まえると、企業・団体が事業(商品・サービス)を通して、社会的課題の解決に取り組む意義は見込めそうですが、対象とするターゲットを踏まえた上で、適切な社会的取り組みやそのコミュニケーションを設計していく必要があると言えるでしょう。
最後に、調査結果内では触れませんでしたが、専門家による統計的な分析(パス解析)から、ソーシャルプロダクツの購入は、SDGsに対する興味・関心を高めること、ボランティアへの参加や寄付の実施など自発的な社会貢献活動を促すことも明らかになりました。
本調査に関するご質問、専門家による詳しい分析結果、全体のローデータなどにご興味・関心がある方は弊協会へご連絡ください。
■参考:過去の「生活者の社会的意識・行動に関する調査」結果は、下記URLをご参照ください。
2012年: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000004647.html
2013年: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000004647.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000004647.html
2014年: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000004647.html
2015年: https://www.atpress.ne.jp/news/63217
2016年: https://www.atpress.ne.jp/news/100738
2017年: https://www.atpress.ne.jp/news/128586
■ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP)とは
ソーシャルプロダクツの普及・推進を通じて、生活者や企業などと共に、持続可能な社会の実現を目指す非営利の組織。
<協会概要>
名称 : 一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP)
設立 : 2012年7月
所在地: 東京都中央区銀座5-12-5 白鶴ビル3F
会長 : 江口 泰広(学習院女子大学名誉教授)
URL : http://www.apsp.or.jp