無料会員登録

光照射を利用したフッ素樹脂上への銅微細配線形成技術を開発 ~5G時代の情報の大容量高速伝送に対応する銅微細配線を、簡略なプロセスと低コストで可能に~

2020.03.31 17:15

芝浦工業大学(東京都港区/学長 村上雅人)工学部応用化学科の大石知司教授は、フッ素樹脂上への簡便な銅微細配線形成技術を開発しました。この技術は、撥水性で他材料との接合が難しいフッ素樹脂への銅微細配線形成を可能とするものです。大がかりな装置を使わずプロセスも簡便なため、配線形成を低コスト化。フッ素樹脂は5G時代の情報の大容量高速伝送に必要な処理性能向上の役割を期待されており、半導体などの基板へ導入が可能となります。



■ポイント

・撥水性で配線やデバイス形成が困難なフッ素樹脂材料(PTFE)上へ、100μm幅の銅微細配線を形成

・貴金属Pd触媒を使用せず、全て常圧下でのプロセスで配線形成ができるため、プロセスの簡略化と低コスト化にも寄与

・5G時代の情報大容量高速伝送に貢献

図解


■背景

5Gサービスが開始するなど、情報の大容量化と高速伝送が飛躍的に発展し、スマートフォンなど各デバイスは、それに対応する更なる処理性能が求められています。そして伝送信号の高周波化が進む中、フッ素樹脂材料ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)は誘電率と誘電損失が小さく、高周波領域において良好な誘電特性を持つ樹脂基板材料として大きく期待されています。しかしPTFEは表面エネルギーが極めて小さく撥水性であるため、他材料との接合が難しく、PTFE上に配線やデバイスを形成することは困難でした。

本研究では、光照射とアンモニア水溶液を用いたフッ素樹脂の簡便な親水化法を開発するとともに、貴金属を用いないCu2+イオンを触媒とする無電解Cuめっき膜の作製と、独自開発した有機無機ハイブリッド膜を用いた銅微細配線形成技術の開発に成功しました。



■今回の成果

フッ素樹脂の親水化にはプラズマ処理など大がかりな真空装置を必要とします。一方、今回は入手しやすいアンモニア水溶液の蒸気中にフッ素樹脂基板を設置してエキシマ光を照射することにより、フッ素樹脂基板表面の親水化に成功。この表面にはアミノ基が形成されており、水溶液中でこのアミノ基とCu2+イオンの間に配位結合を形成できること、無電解Cuめっきによりフッ素樹脂上にCu膜を形成できることを発見しました。独自に開発した感光性有機無機ハイブリッド樹脂材料を成膜後、フォトリソ法を用いて100μm幅の銅微細配線を形成することにも成功。

この手法は通常の銅めっきに使用される貴金属Pd触媒を使用せず、すべて常圧下でのプロセスで配線形成ができるため、プロセスの簡略化と低コスト化にも寄与する技術です。


フッ素樹脂上の銅微細配線(100μm)の表面

走査電子顕微鏡による表面観察とEDS(エネルギー分散型X線分光器)による元素分析


■今後の展開

今回の技術は、スマートフォンなどの大容量高速伝送に寄与すると期待される、フッ素樹脂材料の応用展開に貢献する技術です。配線幅の更なる微細化に向け、光照射プロセスの精密化を検討しています。また、レーザ照射を用いたダイレクトパターニングの手法も開発しており、更なる簡便な銅配線形成技術の開発に向け検討を行います。

報道関係者向け
お問い合わせ先

@Press運営事務局までご連絡ください。
ご連絡先をお伝えいたします。
お問い合わせの際はリリース番号「209481」を
担当にお伝えください。