幼児の第二言語学習を成功させる6つの原則
~第一言語の発達が遅れることなく英語力が向上~
2020.06.24 10:45
乳幼児はどのように第二言語を習得するのでしょうか。
ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)<東京都新宿区 所長:大井静雄>では、同テーマ研究の一環として、ワシントン大学の研究所、I-LABSの最新の研究論文を考察しました。この論文では、ある6つの原則(後述)を取り入れた英語教育プログラムが0~3歳児にとって効果的であることが実証されています。さらに研究が進めば、早期英語教育に関心のある日本の保護者にとっても、よいプログラムを選ぶための指針になるでしょう。
I-LABSの研究成果は、これまでにもバイリンガルの言語習得に関するあらゆる研究に新たな知見を与えており、特に多様な研究手法により、0~3歳の子どもの第二言語習得に影響する6つの原則を明らかにしています。
I-LABSはこれら6つの原則を活用した英語の授業を、スペインのマドリッドにある4つのプリスクール(乳幼児教育センター)で行いました。参加したのは生後9~33カ月の子ども計240人。うち2校は18週間、残り2校は1年間(36週間)、実験用の英語プログラムを実施しました。
子どもたちは、週5日、毎回45分間、英語を使って遊びます(原則1)。各クラスでは、子どもたちが最大限プログラムに参加できるように、専用のトレーニングを受けた指導員3人以上が乳幼児向けのことば(英語)で子どもたちに話しかけました(原則2・5)。なお指導員は、研究チームが開発した6つの原則に基づく第二言語指導のトレーニング・プログラム「SparkLingTM」を事前に受講。この最新の技術を活用したトレーニング方法の効果を検証することも、研究の目的に含まれています。
生後9~21カ月の子どものクラスは14人ずつ、生後21~33カ月の子どものクラスは20人ずつのグループに分けられました。これは、子どもと指導員のやりとりを最大限に引き出すためです(原則3)。
各グループの子どもたちは、指導員にリードされながら、前述の6つの原則を取り入れた遊びを体験します(原則4・6)。
各プリスクールは、もともと週2時間程度、絵本の読み聞かせや歌、童謡で英語にふれる活動を行なっていました。研究チームは、実験用の新しい英語プログラムに参加した子どもたちの学習成果を、この既存の英語プログラムに参加した子どもたちと比較しました。
結果、毎日遊びながら英語にふれた子どもたちは、スペイン語の語彙発達に遅れが生じることなく、英語力が大きく向上しました。スペイン語の語彙テストの結果は、実験前も実験後も、グループ間の差がありませんでした。
しかしながら、この研究には、6つの原則のどれが最も影響したのかがわからない、という難点があります。1つでも欠けたら学習効果が低くなるかもしれませんし、いくつかの要素を除いたとしても同様の学習効果が出るかもしれません。
論文内でも述べられていますが、学習効果に影響する要素を絞り込むにはさらなる調査が必要です。
なおIBSでは、言語学習における社会的相互作用(他者とのやりとり)の重要性を考察した記事をいくつか発表しています。これは、原則3に関わる分野です。
■親が一緒に映像を見ることで幼児の語彙学習をサポート
■幼児がSkypeレッスンで言語学習するための重要な要素
■幼児はどのような映像で単語を学習するのか?
■乳幼児の社会的発達と第二言語習得の関係
今回紹介した研究論文で示されている6つの原則がなぜ重要で効果的であるか、という点については、さらに調査を進め、当ウェブサイトで発表していく予定です。
詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。
■幼児の第二言語学習を成功させる6つの原則
■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute Of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
設 立:2016年10 月