テストだけではない、子供の意欲を高める評価とは
英語嫌いの小学生を増やさないために
2020年度から全国の小学5・6年生が英語を教科として学んでいます。これは、全国の小学校教員が子どもたちの英語学習を評価して成績をつけ始める、ということでもあります。ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)<東京都新宿区 所長:大井静雄>は、「子どもを英語嫌いにしないための評価」を国立教育政策研究所などのデータおよび、世田谷区教育委員会(東京都)の研修現場の取材から調査・考察しました。
2020年5月に実施された世田谷区教育委員会による外部講師を招いたオンライン研修は、3月末に文部科学省が外国語活動・外国語科の評価に関する資料を公表したことを受けてのもの。同教育委員会によると「実際にどのように評価をしたらよいのか?」という点について教員の関心が高く、事前に申し込んだ区内の小学校教員約100人が参加しました。
研修中の質疑応答では教員側から、「子どもがA~Cの評価のうち、Cをもらったらショックを受けるだろうなと思う」という視点での意見が出され、評価によって英語嫌いの子どもを生み出したくない、という不安が伺えました。
日本では戦後から1980年代後半まで、筆記テストや行動観察でほかの生徒たちと比較して順位をつけることが「評価」だったと言われています。
しかし、その後、その子どもの以前と今を比較する「個人内評価」や、あらかじめ設定された目標を達成できたかどうかという「到達度評価」、評価の観点ごとに一人ひとりの達成度を確認する「目標準拠評価」、子どもが自分の学習状況を振り返る「自己評価」など、さまざまな評価方法が提唱されてきています。
実際に、2020年3月末に公表された「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料:小学校 外国語・外国語活動」(国立教育政策研究所, 2020)でも、これらの考え方が示されています。
まず、子どもたちの学習状況を「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「主体的に学習に取り組む態度」、という3つの観点(評価の視点)ごとに、3段階(例:A、B、C)で分析的に評価することが求められています。そして、これらの観点で示しきれない子どもの感性や思いやり、可能性、進歩の状況などは、個人内評価として積極的に子どもへ伝えることも重視されています。
講師を務めた佐藤久美子教授(玉川大学)はペーパーテストを使うだけでなく、学習評価の場面や方法をもっと工夫すること、最終結果だけではなく学習の過程や経過も評価することが重要なポイントだとしています。例えば自分なりに工夫してノートを書いている、グループ学習のときに友だちにアドバイスをしている、「もっとこういうふうにすればよいと思った」と自分のことを振り返っている、クラスメートが使ったフレーズを真似しようとしている、など自分の意志を感じるようなところも評価の対象となると言います。
ただし、評価をすること、成績をつけることそのものは、子どもたちのモチベーションに悪影響を与えるとは限りません。
国立教育政策研究所の調査(2017)によると、小学校外国語教育に関する教育課程特例校・研究開発学校(2015年時点)においても、評価方法は児童の行動観察が圧倒的に多く(96%)、テストの実施はまだ少なく、ただし、数字や記号を使って成績をつける学校の教員ほど、評価のためにテストを使っていることが報告されています。
成績のつけ方(数字・記号か文章)は、通知表を見た子どもが英語の授業で「もっとがんばろう」と思うかどうかに影響しない一方で、自分の「英語の授業での様子をよく表していると思う」と評価の妥当性を感じている子どものほうが「がんばろう」と思う傾向にあることも明らかになりました。
「評価」は成績をつけることが目的ではなく、「もっとがんばろう」と思わせて目標を達成させること、そのために授業を改善することが目的であることを忘れずに工夫を行えば、英語嫌いを生まない評価ができるのではないでしょうか。
詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。
■「評価」=「テスト」ではない~英語嫌いの小学生を増やさないために~
■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute Of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
設 立:2016年10 月
URL :https://bilingualscience.com/
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