家庭での英語インプットは学習効果を高める
英語が得意ではない親でも大丈夫!
2020.09.09 11:30
インプットは、日本語を話す子どもたちが英語を学ぶときに重要な要素の一つです。インプット量が十分でなければ、英語は身につけられないとも言えます。
では、親が英語が得意ではない場合でも、家庭で英語をインプットする機会が増えれば、英語習得に良い影響があるのでしょうか?
ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)<東京都新宿区 所長:大井静雄>は、家庭でのインプットがバイリンガルの子どもたちの語彙力にどのように作用するかを調べた論文を考察しました。
プリスクールに通っていても、家庭で英語を使ったほうがいい?
IBSでは今回、「家庭での言語インプットが後続性バイリンガル児の語彙知識に与える効果(2019)」(※)という論文に注目。論文では、プリスクールで第二言語を学んでいる子どもたちが、家庭の日常的な場面で絶えず二つの言語にふれた場合、両言語の語彙がどのように発達するか、という点を研究によって明らかにしています。
※原題:Effects of home language input on the vocabulary knowledge of sequential bilingual children(2019)
この研究に参加した親子は、全員、広東語を第一言語として話す、アメリカの移民。親たちは子どもに英語(第二言語)を話せるようになってほしいと考えているものの、自分たちは英語を十分に話せないため、英語が学べるプリスクールに子どもを通わせています。しかし同時に家庭での言語も大事にしており、子どもが広東語を学び続けることも望んでいます。
日本でも多く聞く話ですが、こうした場合、家庭でも英語にふれさせるか、家庭では日本語しか使わないか迷う親は多いといいます。
研究者たちは、家庭でのインプット量が子どもの語彙力に与える影響を調べるため、下記の6つの場面での広東語・英語の使用状況について、親へのアンケート調査を実施しました。
親によるアンケート回答は、理解語彙、表出語彙、概念的語彙のテスト成績と合わせて分析。家庭での使用状況と子どもの語彙発達との相関関係の強さを算出しました。
二つの言語習得には、家庭環境が重要な役割を果たす可能性
その結果、広東語・英語の両方とも、家庭でのインプット量は、語彙テストでの高成績と強い関連性がありました。そして、どの場面でのインプットも高成績に関連していましたが、相互関係が特に強いものがいくつかありました。
例えば、広東語の理解語彙と表出語彙のテスト成績は、夕食を食べているときや家族と遊んでいるときに広東語が使用される量と最も関係していました。実験に参加した親子の88.7%は夕食中の広東語使用率が80~100%だったというデータからもわかるように、家族で体系化されていない遊びや会話をするときには、何も気にすることなく自然に第一言語(広東語)が使用され、子どもの語彙を増やした可能性が高いと考えられます。
一方、英語の理解語彙と表出語彙のテスト結果は、本を読み聞かせるときに英語を使う量が最も関わっていました。手順ややり方、使うことばなどがある程度決まっているような活動では、ほかの場面よりも英語の使用率が増えていたので、得意でない英語を安心して使う機会になっていたのかもしれません。例えば、英語で書かれている絵本であれば、英語が話せない親も自然と英語で読み聞かせるでしょう。このような限られた量の英語使用であっても、子どもの英語の語彙を増やしていた可能性があるのです。
子どもが学校で第二言語を学んでいる場合であっても、子どもが二つの言語を使えるようになるうえで、家庭環境は重要な役割を果たす可能性があります。夕食を食べる時間や、家族とゲームで遊ぶ時間、本やお話を読み聞かせる時間を活用して、英語やほかの第二言語を家庭環境に取り入れて使ってみましょう。
詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。
■家庭での英語インプットは、プリスクールでのESL学習効果を高めることができる
■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute Of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
設 立:2016年10 月