こんにゃくセラミドの脳への移行性、北海道大との共同研究で確認 認知症予防効果をサポートする研究成果
株式会社ダイセル(本社:大阪市北区、代表取締役社長:小河 義美)は、国立大学法人 北海道大学(本部:札幌市北区、総長:寳金 清博)との共同研究において、当社の機能性食品素材であるこんにゃく由来のセラミド(以下「こんにゃくセラミド」)がマウスの試験において血液脳関門(Blood-brain barrier、以下「BBB」)を透過できるという成果を得ました。
当社と北海道大学は、2016年4月に同学内の「次世代物質生命科学研究センター」内に共同で設置した産業創出講座を中心に、当社のこんにゃくセラミドが持つアルツハイマー病予防効果を研究してまいりました*1。そしてこのたび、当社は同学の五十嵐 靖之招聘客員教授、湯山 耕平特任准教授らとの研究において、こんにゃくセラミドの主要成分である植物性セラミドをマウスに血中投与した際、BBBを透過して脳内へ蓄積することを実証いたしました。
■背景と目的
アルツハイマー病の発症は、「アミロイドβペプチド」が脳内に過度に蓄積することが原因の一つとされます。「エクソソーム」という物質は、アミロイドβペプチドと結合し、これらを分解・除去することが明らかとなっています。こんにゃくセラミドは神経細胞のエクソソーム産生を促進し、アミロイドβペプチドの分解・除去する機能を増強します。それによって脳内のアミロイドβペプチド濃度が低下することで、短期記憶の改善効果があることが示されています*2。
今回は、これまで未解明だった、こんにゃくセラミドが体内吸収された後の植物性セラミドがBBBを透過して脳へ移行できるかどうかを明らかにすべく、植物性セラミドのBBB透過性について培養細胞及びマウスを用いて研究を行いました。
■研究の内容と結果
BBBを再構成した培養細胞系モデル及びマウス静脈投与モデルで植物性セラミドのBBB透過性を評価しました。植物性セラミドを血管側へ投与した30分後、脳内の植物性セラミド量を分析したところ、対照群と比較して、投与群では植物性セラミド量の上昇が見られました。本結果より、体内吸収されたこんにゃくセラミドがBBBを透過できることが示されました。
この成果から、こんにゃくセラミドには、アルツハイマー病発症を防止できる可能性があり、今回の知見は新たな機能性食品や新薬開発に繋がることが考えられます。今後さらにヒト介入試験によりこんにゃくセラミドの認知機能改善効果について検証していく予定です。この研究の成果は、2020年11月2日公開の『PLOS ONE』誌*3に掲載されております。当社は今後も、皆様の「美と健康」に貢献する健康食品素材の開発を進めてまいります。
<参考資料>
●血液脳関門(Blood-brain barrier:BBB)とは
血液脳関門には、血液と脳の間の物質移動を制御する機構があり、脳内へ透過できる物質を厳密に制御しています。機能性食品素材が脳機能へ作用するためには、この血液脳関門(BBB)の透過が必要です。
●アミロイドβペプチドとは
アミロイドβ前駆体タンパク質から切断されて産生される約40アミノ酸からなる生理的ペプチド。アルツハイマー病は、このペプチドの過剰な蓄積が発症の引き金と考えられています。
●エクソソームとは
様々な種類の細胞から分泌される二重膜小胞。特定の分子を包み、細胞間で受け渡すキャリアーの役割を担っています。神経細胞由来エクソソームは、表面膜の糖脂質でアミロイドβペプチドを捕捉してグリア細胞に運搬することで、分解を促進させます。
*1 2019年には、こんにゃくセラミドにアルツハイマー病発症の予防効果があることを発見いたしました。
*2 Yuyama K et al. Plant sphingolipids promote extracellular vesicle release and alleviate amyloid-β pathologies in a mouse model of Alzheimer's disease. Scientific Reports. 2019;9 :16827.
*3 米国のPublic Library of Science社によって刊行されているオンライン学術雑誌。本研究による論文は、次のURLよりご覧になれます。 https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0241640
記事掲載数No.1!「@Press(アットプレス)」は2001年に開設されたプレスリリース配信サービスです。専任スタッフのサポート&充実したSNS拡散機能により、効果的な情報発信をサポートします。(運営:ソーシャルワイヤー株式会社)