福島第一原子力発電所の処理水などの分析で活躍 スマートグラスのインタビュー記事を『東京電力報』で掲載
2020.11.25 12:30
東京電力ホールディングス株式会社は、スマートグラス導入に尽力し、実際に活用している東京パワーテクノロジー株式会社、東京電力ホールディングス株式会社の担当者に話を聞き、インタビュー記事を『東京電力報』で掲載しました。
福島第一原子力発電所では、震災前の約16倍に当たる年間約8万件の処理水などの化学分析が行われており、この結果は廃炉作業に向けた重要な指標になっています。これまで手作業で行われていた分析作業ですが、正確性を高め、効率化を図るためにメガネ型のデジタル端末「スマートグラス」でシステム化しました。その結果、1日分(約80試料)あたりのデータ処理時間が延べ57時間から19時間に短縮されるなど、効果を発揮しています。
左から、東京電力ホールディングス株式会社 佐藤 博信、東京パワーテクノロジー株式会社 松本 真由子、池田 幹彦
■業務量がより一層増えることを見越してシステム化に着手
現在、福島第一原子力発電所では、汚染水から放射性物質をほとんど取り除く多核種除去設備で処理した水や建屋内に溜まっている水、発電所構内の地下水、発電所周辺の海水などから試料を採取して、化学分析しています。その件数は震災前の約16倍の年間約8万件にも上ります。
分析データから発電所の現状が「見える化」できるため、社会的な関心も高く、分析結果を毎日HPで公開しています。また分析データは廃炉に向けての方向性を決める重要な情報でもあり、高い正確性が常に求められています。
これまで約140人の東京パワーテクノロジーの分析員が分析にあたってきました。ですが、集計データを自ら入力しなければならないなど、分析には手作業のものが多く、データ処理の負荷は作業全体の3分の1にも及んでいました。今後、廃炉の進捗に伴い新たな分析項目や採取試料の発生、難易度の高いデブリの分析への取り組みが予想される中で、システム化によって作業効率を高め、分析の正確性を向上させることが必須でした。
■無ければ自分たちで作るしかない
実際にシステム化の検討を始めたのは4年前。目をつけたのがスマートグラスです。ところが、市販されているスマートグラスは文字が映し出されるなどの機能はあるものの、我々が求める使い方には機能が不足していました。議論した結果、「無ければ作るしかない」という結論に達しました。
廃炉は安全・着実かつ速やかに進めることが必要です。このため、市販のものを改良。QRコードを読み取れるカメラが付いているセイコーエプソン社製のスマートグラスに、映像送信機能、ヘッドホン、マイク、フェイスシールドを追加し、グラスを上下に動かすための装置も付けました。
スマートグラス
試作機を作りテストして調整するという作業を繰り返して、完成したのが現在のスマートグラス。データ管理システムの一部として稼働し、試料に貼られたQRコードを分析室で読み取り、内容を確認するとともに、記載された採取日時をシステムに音声入力して、データ評価室とのダブルチェックを行います。
効果としては、年間約80万枚作成していたチェックシートが不要となるなど、1日分(約80試料)のデータを処理するのに要する時間は延べ57時間から19時間に短縮されました。これにより化学分析を担当する分析員は140人から110人に削減でき、より難易度の高い分析の技術力やスキルの習得に人員を投入できるようになっています。
今回、廃炉に向けた取り組みの中で、今までになかった新しい技術も数多く生まれています。開発したスマートグラスもそのひとつ。汎用性が高いものなので、化学分析業務以外にも応用できると思います。
池田さん
松本さん
佐藤さん
<全文は『東京電力報』に掲載>
https://www.tepco.co.jp/toudenhou/hd/1563675_9039.html
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