国際社会を生き抜く力になる「英語力」×「非認知能力」
~お茶の水女子大学 浜野教授インタビュー~
2020.12.14 13:00
小学校での英語教育の教科化が始まり、「英語嫌い」の増加が心配されますが、とはいえ英語を共通語としてさまざまな国の人が一緒に働く機会は増えています。
そこでワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)<東京都新宿区 所長:大井静雄>は、教育学を専門とし、教育分野での国際協力にも携わる、お茶の水女子大学の浜野隆教授にお話を伺い、子どもたちが英語を使って国際社会を生き抜いていくために重要な幼児教育のポイントをまとめました。
非英語圏の人とのコミュニケーション言語が英語
教育学のなかでも特に発展途上国の教育状況や日本の国際協力について研究活動を行い、JICA(国際協力機構)や外務省などの国際協力プロジェクト、ユニセフやユネスコなどとの国際的な共同事業にも携わってきた浜野教授。
例えば国連は、いろいろな国の人にとって共通の言葉となる英語がある程度できるという前提で集まっていると浜野教授。「『グローバルに活躍する』ということは、必ずしも英語圏の人だけを相手にするわけではなく、非英語圏の人と英語でコミュニケーションすることも多い」と言います。
また「国際社会で活躍する」というと「外国に行く」イメージがありますが、日本国内でも多様な方々を相手に仕事をする機会が増えてきています。そのなかできちんとした仕事をすることも、国際社会での活躍となると浜野教授は考えていると言います。
「英語嫌い」を招いたネガティブ経験を克服するために生きる「非認知能力」
「非認知能力」を育むには、周りの大人が丁寧に関わってあげることが大切だと言われていると浜野教授。「丁寧に関わる」とは、子どもの気持ちに対して「共感的」であること、そして、「応答的」であることだと言います。
「『共感的』とは、子どもがどのように感じているのかを汲み取ったり、『だめじゃないか』とか否定せずに子どもの気持ちそのものを受け止めてあげたり、子どもの気持ちに寄り添ってあげる態度のこと。『応答的』とは、例えば、赤ちゃんが泣いていたらミルクをあげるとか抱っこしてあげるとか、子どもの言動やメッセージに応答してあげることです。逆に言えば、ネグレクト(放置して無関心で何もしない)をしないということですね」
また親の応答的な関わりは、子どもにとっての「安全基地」をつくることにつながるといい、「子どもは、テストで良い点を取ったときだけほめてもらえるような『条件付きの愛』ではなく、『無条件の愛』を受けられる安全基地が家庭にあれば、さまざまなことにチャレンジしようという意欲がわきます」と浜野教授。「気持ちの通い合う人のつながり」、「いつも変わらずに応援してくれる人たちの存在」、「安心して戻れる場所」、「一生振り返ることのできる温かい記憶」などが、非認知能力の基盤となるといいます。
「やりたいことを楽しむ」は認知能力と非認知能力の両方を高める
国際社会を生き抜くためのツールとなる英語も、学び続けるためには、ネガティブな体験をしたとしても立ち直る力の土台を幼児期から家庭で育てることが重要です。さらに「楽しい」と感じながら英語にふれる体験も影響します。
「人間の学習が一番促進されるときは、楽しみながらやっているときだと言われています。『楽しい』と感じているとき、集中している状態にあるときは、脳のワーキングメモリーが働きやすいと言われています。つまり、頭に入りやすいんですね」。幼児期に、心の底から自分がやりたいことを楽しむことは、自分から社会や環境に積極的に関わる態度、主体的に取り組む姿勢が育つ基盤や礎になると浜野教授は言います。
さらに「認知能力と非認知能力は、完全に独立したものではなく、相互に影響し合ったり、重なり合う部分があったりします。ですから、非認知能力が高くなることによって認知能力が高くなる場合もありますし、その逆もあるわけですね。特に言語能力は、認知能力の中でも遺伝率が低く、後天的な学習環境が重要だと言われています」
とも。
また英語は、努力が結果に結びつきやすいといい、「数学などは、才能や気質、遺伝の影響が大きいのですが、英語はやればやっただけ伸びるので、自己効力感(西田ほか, 2019)を感じやすいんです」と浜野教授は言います。
英語学習は幼児期や小学校で完結するものではなく、生涯に渡って英語力を身につけていくものです。そのためには、「ネガティブな経験から立ち直る」といった非認知能力も極めて重要であることがわかります。
そして「英語力」×「非認知能力」の相乗効果を生み出すためには、幼児期の親の関わり方が大切なのです。
詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。
■国際社会を生き抜く「英語力」×「非認知能力」の礎となる幼児教育 〜お茶の水女子大学 浜野教授インタビュー〜
■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute Of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
設 立:2016年10 月