「共有型」子育てで語彙力豊かに
~「親子で一緒に」が英語学習をサポート~
2020.12.18 11:00
幼児教育の分野で「共有型」という子育てスタイルが注目されるなか、子どもの言語学習にとって「一緒に」が重要であることがわかってきました。
ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)<東京都新宿区 所長:大井静雄>は、「共有型」子育てと発達心理学、第二言語習得の研究との共通点を探りながら、「親の関わり方」について考えました。
「共有型」子育て家庭では子どもの語彙が豊かになる
幼児教育の分野で、「共有型」の子育てスタイル家庭の子どもは語彙が豊かになる、という研究結果があります(内田・浜野, 2012)。「共有型」とは、「子どもを一人の人格をもった存在として尊重し、子どもとのふれあいや会話を大事にしていて楽しい経験を子どもと共有しようとする」態度のこと。逆に、言うことを聞かなければ罰や叱責を与えることは当然と考え、親の思い通りに子どもを育てようとするトップダウンの子育てスタイルは「強制型」と呼ばれています(内田, 2017)。
同研究で興味深いのが、親が適切なタイミングで温かい声かけや頷き、視線を与えるといった「やりとりの雰囲気」や、子どもが感じたことに「そうだね」と共感したり、子どもの疑問にすぐ回答を与えてしまうのではなく自分で考える時間を与えたりといった「子どもの気持ちやことばに対する反応」が重要であるということ。
「共有型」の子育てスタイルをとる親は、絵本の読み聞かせ場面でこのようなやりとりを行う傾向にあり、その子どもは「強制型」家庭の子どもよりも絵本に集中し、関心をもって主体的に関わろうとしていました(内田・浜野, 2012; 齋藤・内田, 2013a)。親の共感的な反応は、子どもの学習意欲につながり、その積み重ねが語彙力に良い影響を与える可能性があるのです。
その他の研究からも、子どもがことばを学習するうえで、「絵本読み聞かせ」そのものではなく、その習慣の背景にある親の考え方や接し方のほうが重要であると考えられます。
発達心理学の分野でも「応答」や「共同」が学習を助け、第二言語に関する習得にも影響
子どもにとって親は最も身近な「他者」ですが、子どもが学習する場面では他者の行動が重要な役割を果たします。Grossman(2015)によると、子どもは1歳になるまでの間に、他者の行動をヒントにして、どの情報に注意を向けるべきかを判断し、知識として学習できるようになっていきます。
そして、その他者が自分とアイコンタクトをとりながら関わってくるときや、自分に対して話しかけてきたり(庭野, 2015)、反応を示してきたりするとき、同じものを見るなどその学習の対象を他者と共有しているときなどに、学習が促進されます。
このことは、言語発達にも関係し、乳幼児が映像からことばを学習するために重要な条件としても注目されてきました。例えばある研究(Strouse et al., 2018)で、2歳の子どもを対象に新しい単語を映像で学習させたところ、講師との応答的なやりとりの有無より、親が共同視聴したほうが学習を手助けすると報告されました。
この場合の「一緒に見る」は、単に子どもと同じものを見る(「共同注視」)だけでなく、その対象に対する視線や身体的な働きかけ(例:指差し、手渡し)、表情、発話などを通じて感情(例:楽しい、おもしろい、びっくり)を共有する「共同注意」を指します(常田, 2007)。
同じ「共同注意」であっても、親が子どもの注意を引かせる「大人主導」よりも、子どもが注意を向けているものに親が注意を向ける「子ども主導」のほうが、語彙発達につながる可能性を示す研究(Tomasello and Farrar, 1986; Carpenter et al., 1998; 小椋・志水, 2009)があります。つまり共有型の子育てスタイルが語彙発達に良い影響を与えるという研究結果とも一致していると考えられます。
そして「応答」や「共同」の重要性は、第一言語だけでなく、外国語や第二言語に関する研究でも示されているのです。
「親子で一緒に」が大切
幼児教育、発達心理学、第二言語習得の先行研究から、第一言語であっても第二言語であっても、子どもの言語学習にとって「一緒に」が重要であると考えられます。
子どもが何かに取り組んでいるときには、「共有型」子育ての親のほうが、子どもに主導権をもたせて試行錯誤する様子を見守る傾向にあり、「強制型」家庭の子どもは困ったときに母親の指示を待ったり母親に質問したりすることが多い一方で、「共有型」家庭の子どもは自分で実際に試しながら考えたり決めたりすることが多いこともわかっています(内田・浜野, 2012)。
つまり、子育てスタイルの違いが子どもの語彙力だけでなく、学習の仕方や意欲にも影響する可能性があるのです。
詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。
■「親子で一緒に」が子どもの言語発達をサポート
■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute Of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
設 立:2016年10 月