英語学習を続けるポイントは「自己効力感」
~埼玉大学 横山悟教授インタビュー~
子どもたちが「英語を学びたい」という気持ちを維持していくためには、どのようなことが大切なのでしょうか? ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)<東京都新宿区 所長:大井静雄>では、学習のモチベーションについて科学的研究を行う横山 悟教授(埼玉大学)への取材に基づき、英語学習に良い影響を与える「自己効力感」についてまとめていきます。
学習におけるモチベーションが大切な理由
心理学や認知神経科学の側面から外国語学習について研究する横山教授は、どのような心の働きが学習に影響するのか、言語を使っているときに脳はどのように働いているのか、といった科学的研究に基づき、大学における英語教育の改善にも取り組んでいます。
横山教授は学習において、「いろいろな理論やモデルがある」としつつ、「短期記憶を繰り返していくことで、短期記憶が徐々に長期記憶に固まっていく(横山, 2015)、という考え方がほとんど」だろうと言います。学習はなかなか一回でできるようになるということがないため、「繰り返そう」と思うモチベーションが大切になるのです。
「自分からやりたい」は維持しやすい
一口にモチベーションといっても、維持しやすさには違いがあります。横山教授は「一般的なモチベーションの理論だと、自分が楽しんでやりたいと思えること、自分が興味をもっていることに対するモチベーションは強い」という研究結果がさまざまな分野で出ていると言います。
一方で、「やるとごほうびをもらえる、やらないとペナルティを受ける」という、昔ながらのモチベーションの高め方については、「外側から強制的にやらされると、『やりたい』という気持ちがどんどん削られていってしまう、という結果も出ている(Murayama, K., Matsumoto, M., Izuma, K., & Matsumoto, K. /2010)」と言います。
モチベーションには「自己効力感」が大きく影響
英語学習のモチベーションを高めたり維持したりするために、「自分の成長が見える、ということは一番大きいと思います。やればできる、やったら成長できた、という自己効力感(※)は、やる気の維持につながる」と横山教授。
※「自分の目標を自分の努力によって達成できる能力が自分にはある」と考えて信じること。自己効力感の高さは、学習成果の伸びに影響することがわかっている(横山, 2019)
自己効力感は、自分が成長できると思える信念で、「やればできるんだから、もうちょっとやってみよう。この調子でやっていけばTOEICの800点、900点はいけるんじゃないか」と思い始めれば、やろうと思っていく。逆に、どれだけ勉強しても自分は点数が上がらない、ということが見えてしまうと、やっても意味がないんだからやらない、ということになると横山教授。「やればできる成長力が自分にはある、と感じられるように、自分の成長を見える形にする、ということは、モチベーションの維持に大切なことの一つだと思います」。
また、小学校5、6年生の英語の授業が教科になり、テストがあったとしても、小学校のテストや成績は、他人と比較するのではなくて、その子が何をどれくらいできているかを見るためにあるはずだと横山教授は指摘。本来の目的通りにテストを使い、親がそれを理解してあげれば、モチベーションを高める効果があるのではないかと言います。
家庭でできる「自己効力感」のサポート
「英語学習は自己効力感を高めやすい」という見解にも賛成だという横山教授はその理由として「英語学習の場合、学習を目に見える形にしやすいことが多いこと」と「人間の脳は言語を習得できるシステムをすでにもっているということ」を挙げます。特に後者については、数学のように、必ず全員が習得できるというわけではない、という分野と比べると、成長が見えやすいし、成長しやすいのではないかいうわけです。
家庭では「例えばその子の成長を表やグラフにしてあげて、何をどれくらいがんばったら点数が上がった、ということが目に見えるように」することで、子どもの自己効力感のサポートができるのではと横山教授。
また、自分に自信がない子、控えめな子は、本当はちゃんとできているのに、自分としては不安だから「もっと勉強しなきゃ」と自分でプレッシャーかけてしまうこともありますが、そんな時は親が「できているよ」と安心させてあげると効果的ではないかと横山教授。
「やればできるようになってうれしい、自分ができるようになったことを周りがほめてくれてうれしい、というダブルで『うれしい』を支援してあげると、どんどん興味をもってやってくれるのではないでしょうか」
「努力したらできるようになった」が大切
幼いころから英語に楽しくふれる体験をする子どもが増えてきましたが、小学校の英語教育に期待を寄せる一方で、「せっかく英語を好きになったのに嫌いになってしまわないか」と不安になる親もいることでしょう。この「自己効力感」の考え方は、そのような不安に対して大切なヒントを与えてくれます。それは、子どもに「努力したらできるようになった」と感じさせてあげることで、モチベーションの維持をサポートできることです。そして家庭では「自分はもっと努力すればもっと英語ができるようになる」という自己効力感を育てることが、大切です。
詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。
■英語学習を続けるためには「自己効力感」が大切〜埼玉大学 横山教授インタビュー〜
■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute Of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
設 立:2016年10 月
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