「スピード」は英語力アップがわかる方法の一つ
達成感を味わう機会や「すごいね!」とほめる機会を逃さないよう
子どもが英語を理解したり話したりしたとき、多くの親は「すごいね!」とほめることでしょう。そのような親の声かけは、子どもの自信につながっていきます。しかし、英語力の伸びは、必ずしもわかりやすいとは限りません。ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)<東京都新宿区 所長:大井静雄>では、英語の習熟度がわかる方法の一つである「スピード」について紹介します。
語彙力は数だけではなくスピードも評価軸に
子どもの英語力の評価の中でも、語彙力の評価方法は、語彙をいくつ理解できるか、いくつ口に出せるか、といった「数」だけではありません。言語学では、語彙をどれだけ素早く認知できるか、という「スピード」も評価方法の一つになっています。例えば、英語の“red”という語彙の形(文字)を見て、頭の中にある「赤い色」の概念に結びつけられるまでの所要時間がどれくらいか、ということです。
語彙を素早く処理できる能力は、「語彙の即時的運用能力(lexical facility)」と呼ばれており、語彙の数だけで評価するよりも正確に語彙力の個人差がわかると言われています(Harrington, 2017)。
習熟度が高いほど、素早く意味を理解する
日本で行われたある研究(羽渕, 2005)では、日本人に英語の意味を判断させる実験が行われました。結果、英語の習熟度が高い人、目にする頻度が高い語彙のほうが速く反応できたこと、また、日本語を介さず意味・概念と直接結び付けて理解するときの反応も速かったこと(イメージ図参照)がわかりました。
これは、学習経験が積み重なっていくと英語と概念が直接結びつくようになることを示しています。
習熟度が高いほど、素早く「これは英単語だ」と気づく
より最近の研究(千葉・横山・吉本・川島, 2012)では、英語力の異なる大学生・大学院生29名を対象に行われた実験があります。以下2種類の実験が行われ、反応スピードと英語習熟度テストの結果がどのように関係しているかが分析されました。
1.英語の語彙かどうかを判断する実験(語彙判断課題)
画面に表示された文字列が英単語か非英単語かを判断し、ボタンを押して答える。
※英単語ではない場合の例:SHROUND、GROURN、CLETTなど
2.英単語の意味を判断する実験(意味判断課題)
画面に表示された単語が生きものを表す語かどうかを判断し、ボタンを押して答える。
※生きものを表す単語ではない場合の例:ABILILTY、ADVICE、ALCOHOLなど
結果、2種類の実験のどちらにおいても、習熟度が高い人のほうが、判断のスピードが速いことがわかりました。さらに新たに明らかになったことは、意味を理解する前の段階、つまり、「これは英単語である」と気づく段階で、すでにスピードの違いがある、ということです。この研究チームは、英語の文章を読む(音読・黙読)スピードを測ることで、英語力の個人差をより詳しく調べられる可能性がある、と結論づけました。
スピードも「ほめるポイント」に
このような先行研究から、英単語を見たときの反応スピードは、英語の習熟度と関係している可能性が高いと考えられます。つまり、「これは英単語だ」と気づいたり、その意味を理解したりするスピードが以前よりも速くなったのであれば、英語力が向上したサインなのです。
英単語をいくつ覚えたか、という「数」はわかりやすい指標です。しかし、そればかりに囚われてしまうと、以前よりもできるようになったことを見逃してしまうことがわかります。それは、「前よりもできるようになった!」と達成感を味わう機会や、子どもの英語力を「すごいね!」とほめてあげる機会を逃してしまうことにもなります。
すでに覚えている単語であっても、もしかしたら、以前よりも素早く反応したり、理解したり、読んだりできるようになっているかもしれません。
詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記記事をご覧ください。
■「スピード」は英語力アップがわかる方法の一つ
■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所(World Family's Institute Of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
設 立:2016年10 月
URL :https://bilingualscience.com/
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