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≪研究発表≫ ホエイ粉のさらなる品質向上と有効利用を目指して 「CFDシミュレーションによる噴霧乾燥機内のホエイ粉の付着堆積の評価」 について

学術雑誌「日本食品科学工学会誌」に掲載されました

 雪印メグミルク株式会社(本社:東京都新宿区 代表取締役社長:西尾 啓治)は、コーポレートスローガン「未来は、ミルクの中にある。」のもと、ミルク(乳)の新たな価値を創造し、お客様においしい商品を提供するため、日々研究開発に取り組んでいます。


 今回、CFD(※1)シミュレーションによる、噴霧乾燥機内のホエイ粉(※2)の付着堆積の評価方法について、学術雑誌である「日本食品科学工学会誌」で発表いたしました。この技術は、国産ナチュラルチーズの生産の際に必ずできるホエイの品質向上と無駄なく有効利用するための基礎となるものです。


※1 CFD:Computational Fluid Dynamicsの略。流体の運動方程式をコンピュータで解析することで、粒子の動きや風の流れを可視化するシミュレーション技術

※2 ホエイ粉:チーズ製造時に生乳からチーズカード(固体)を分離したホエイ(液体、乳清)を噴霧乾燥して得る粉末


【論文内容の概要】

 乳業における噴霧乾燥技術は、脱脂粉乳やホエイ粉などの乳製品製造に利用され、生乳を長期保管するための、伝統的な製造技術です(図1)。乳製品の噴霧乾燥において、噴霧乾燥機の壁面へ乾燥中の粉(粉体)が付着することは、生産効率の低下に繋がります。特に、一般的に乳糖を多く含むホエイ粉は、噴霧乾燥機内壁に付着しやすいことが課題です。

 一方、各種の産業では、噴霧乾燥機による粉体製造についてCFDシミュレーションを行うことで乾燥機内部の粉体粒子や風の流れを可視化し、製品の生産効率化に繋げています。そこで、ホエイ粉の噴霧乾燥においてもCFDシミュレーション技術を活用して乾燥機壁面への付着現象を解明することは、ホエイ粉の品質向上や生産効率化に貢献できると考えられます。

 今回の研究では、ホエイ粉の噴霧乾燥機壁面への付着現象を対象とし、1)噴霧乾燥におけるCFDシミュレーション技術の確立、2)CFDシミュレーションの精度向上、3)ホエイ粉の付着現象の解明に関して検証しました。





1)ホエイおよび脱脂乳の基礎実験(単一液滴乾燥試験など)の結果に基づき、乾燥速度および付着量を数式でモデル化し、噴霧乾燥におけるCFDシミュレーション技術を確立しました。

2)実際に噴霧乾燥した時の測定値(実測値)との比較では、CFDシミュレーションの結果は、実測値と高い精度で一致しました(図2)。

3)ホエイ粉の噴霧乾燥における付着現象を解析した結果、ホエイ粉の方が、脱脂粉乳よりもガラス転移温度(※3)の低い粒子の割合が高いため、“付着”と判定される粒子が増加することがわかりました。噴霧乾燥機への粒子の付着は粒子温度とガラス転移温度の差に関連しており、粒子温度がガラス転移温度よりも一定以上高くなった時、粒子がガラス状態からラバー状態に変化するため、粒子は噴霧乾燥機に付着しやすくなることが知られています。ホエイ粉の方が脱脂粉乳よりも多く付着した原因は、乾燥機壁面衝突時の粉体粒子温度がホエイ粉の方が相対的にガラス転移しやすい温度領域であったことによる影響であることが明らかとなりました。


※3 ガラス転移温度:液体は急激に冷却されると、粘度が上昇したラバー状態となり、さらに冷却すると固体化した状態(ガラス状態)になる。このラバー状態からガラス状態になる変化が発生する温度がガラス転移温度。



 まとめると、乾燥速度および付着量を数式でモデル化することにより、脱脂粉乳とホエイ粉の噴霧乾燥を対象としたCFDシミュレーション精度が向上しました。また、ホエイ粉の付着は、ガラス転移温度の低い粒子の影響であることが明らかとなりました。


 今後もミルクに関する知見をさらに深め、お客様の健康と豊かな食生活に貢献できる製品作りへと繋げてまいります。


◆掲載概要

題 名:CFDシミュレーションによる噴霧乾燥機内のホエイ粉の付着堆積の評価

著 者:三塚翔 1、高野真 1、新川真二郎 2、舟橋治幸 1、大上芳文 3、吉岡孝一郎 1

1.雪印メグミルク株式会社ミルクサイエンス研究所

2.雪印ビーンスターク株式会社商品開発部

3.立命館大学理工学部

雑誌名:日本食品科学工学会誌 68, (2021), p. 65-76.


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