誰も取り残さない、命をつないだ3日間の備蓄
~東日本大震災から10年・熊本地震から5年 被災の教訓を後世に~
2021.03.11 18:30
尾西食品株式会社(本社:東京都港区 代表取締役社長 古澤紳一 ※以下、尾西食品)は、防災食・備蓄のリーディングカンパニーとして、”アルファ米”をはじめとする非常食を製造・販売。「誰にとっても安心安全な食」の提供を通じ、日常の防災意識を高める活動をすすめています。震災の節目となるこの機に、2名の専門家に取材を行いました。
『東日本大震災発生、その時アレルギーをお持ちのご家庭は』
三浦克志先生
宮城県立こども病院アレルギー科科長、総合診療科部長
日本小児科学会指導医・専門医/日本アレルギー学会指導医・
専門医日本小児アレルギー学会理事
子どもの食物アレルギー専門医として地域医療に従事。
東日本大震災時、小児医療の拠点となった病院で児童、
被災者を受け入れ、診療にあたった。
~命からがら助けと「食」を求めて・備蓄が災害弱者を救う~
ー災害時の急性期(発生から1週間程度)で見えてきた食の問題は、どんなことですか。
仙台市は大きいため、地域によって異なるのですが、当院のあたりは幸いダムの近くなので、水だけはなんとか確保できた状態です。しかし、場所によっては、1カ月くらい人の手が全く入らず、おにぎりとみそと雨水だけで飢えに耐えていたという話です。東北の人は本当に辛抱強いなと改めて感じました。また、助かったのは、仙台市が水を加えるだけで食べられる「アルファ米」を備蓄していたこと。市内のそれぞれの区役所や消防署、避難所などに備蓄してあったそうです。ただ、確保されていたのは3日分だけで、実際にはそれが十分な量か見直しが必要な点でもありました。 当時は、アルファ米があまり知られていませんでした。しかも、仙台市がその当時、アルファ米を備蓄していて、アルファ米は誰でも食べられることを把握していたことは驚きでした。例えば、アレルギーをお持ちの方や、乳幼児、高齢者なども、アルファ米だったら食べられるわけです。アルファ米のワカメご飯などが実際に備蓄されていたと思います。
~増加する子どもの食物アレルギー・家庭備蓄は1週間必要~
ー3.11を経験されて、改めて感じた災害対策で重要な点はどんなことでしょうか。
備蓄はかつて3日分程度が必要とされていましたが、1週間分くらいは必要なんじゃないでしょうか。備蓄とともに、災害時の物流ルートの整備も必要だと思います。仙台市では現在、クラッカーを除き、全ての備蓄品を誰でも食べられるアレルギー対応食にしています。
これだけ食物アレルギーの人が増えた現状では、備蓄食料や支援物資になにかのアレルゲンに該当してしまうため、できるだけ多くのアレルギー対応にしておくというのも、一つの考え方ではないでしょうか。また、炊き出しをやる場合にも、成分表示が必要だと思いますし、アレルギーを持つ方は、食物アレルギーサインプレート(誤食を防ぐためにアレルギー食物を知らせるサインプレート)なども利用してほしいと思います。それから、行政での備蓄だけに頼るのではなく、アレルギーを持つ子のご家庭では、災害時のアレルギーを想定して、日頃からアレルギー対応食品を備蓄しておきましょう。
『被災の経験から防災を文化に』 阪神・淡路大震災で避難所運営を通じて
中溝茂雄先生
神戸親和女子大学発達教育学部児童教育学科教授
防災教育学会理事 副会長
阪神淡路大震災時に学校避難所運営の中核を担う。
神戸市教育委員会で防災教育担当としても活躍。
震災の記憶の継承として「防災教育」活動をけん引
「阪神・淡路大震災」当時、2000名を超える避難者が集まった神戸市立鷹取中学校(神戸市須磨区)で、同校の教職員として避難所を運営していた中溝先生に、震災当時の避難所の状況などについて、お話を伺いました。
~続く避難所生活・食事の工夫と日々の楽しみ~
ー急性期のアレルギー、嚥下障害、高齢者の方などの食の問題はいかがでしたか。
当時は人数を把握し、物資を比例配分で配布するのが中心で、アレルギー対策などは全然できていませんでした。また、お年寄りは固い、冷たいなどということで、なかなかのどを通らない方もいましたので、カセットコンロでお弁当のご飯をおかゆにしたり、お味噌汁に混ぜて雑炊にしたりして、何とか食べていた状況です。忘れてはいけないのは、長い避難所暮らしが続いてくると、人間はやはり楽しみや癒しを求めるようになるということ。自衛隊が設営してくれたお風呂は、受付や運営を我々やボランティアでうまく運用して、2日間で1800人が入れる体制を作りました。また、有志が避難所内で始めた喫茶店なども大人気でした。
~震災の教訓を後世に・備蓄を日常利用していくことが大切~
ー市民の防災意識を高めるために、どんなことが必要だと思いますか。
即効性を求めることは、正直難しいと思います。でも、システマチックに各教科の中で学ぶことのできる防災教育が、結果的には市民の防災意識の高まりにつながると思います。防災文化を作っていくこと。運動会や授業参観、避難訓練での保護者への引き渡し訓練で、PTAにも協力してもらい、親や祖父母に一緒に勉強してもらうのも良いと思います。日頃から地域で避難所の開設訓練や炊き出し訓練をしておくのも良いですね。
ー個人、家庭はどんな備えをすれば良いでしょうか。
やはり日頃からの備蓄が大事ですね。私は登山やオートキャンプもやりますが、アウトドア用品が被災時に非常に役立ちました。今は保存食品もずいぶん多様化しています。尾西食品のおにぎりやアルファ米なども便利ですね。地震が広範囲で起きたときには、1週間くらい自力で生きられる量の備蓄品が欲しいところです。各家庭で防災の日などに備蓄品を食べ、必要なものを見直して入れ替えるサイクルを作るのも良いかもしれません。“防災”を “文化”として育てていく必要があるのではないでしょうか。
本文はこちら
「東日本大震災。その時、アレルギーをお持ちのご家庭は?」
https://www.onisifoods.co.jp/column/detail.html?no=2
「被災の経験から防災を文化に」
https://www.onisifoods.co.jp/column/detail.html?no=3
■尾西食品株式会社
・事業内容:長期保存食の製造と販売
・代表取締役社長:古澤 紳一
・所 在 地:〒108-0073東京都三田3-4-2いちご聖坂ビル3階
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