キユーピーの独自素材「加熱変性リゾチーム」による新型コロナウイルスの不活化を確認
アルコールを使用できない場面での活用に期待
キユーピー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:長南 収、以下キユーピー)は、学校法人国際医療福祉大学(学長:大友 邦)の松本 哲哉主任教授および国立大学法人帯広畜産大学(学長:奥田 潔)との共同研究により、卵白に含まれるタンパク質の一つ、卵白リゾチームを加熱して変性した「加熱変性リゾチーム」が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を不活化することを確認しました(特許出願中)。
キユーピーグループは、国内の鶏卵生産量の約1割を取り扱う食品メーカーとして、かねてより卵に関する研究に取り組んできました。加熱変性リゾチームについては、国立大学法人東京海洋大学との共同研究により、ヒトノロウイルスの不活化、新型ヒトノロウイルス(GⅡ.17)の不活化、ならびにA型肝炎ウイルスの不活化を確認し、既に発表※1しています。
キユーピーグループは、国内の鶏卵生産量の約1割を取り扱う食品メーカーとして、かねてより卵に関する研究に取り組んできました。加熱変性リゾチームについては、国立大学法人東京海洋大学との共同研究により、ヒトノロウイルスの不活化、新型ヒトノロウイルス(GⅡ.17)の不活化、ならびにA型肝炎ウイルスの不活化を確認し、既に発表※1しています。
※1 キユーピーアヲハタニュース2015年 No.47、およびキユーピーアヲハタニュース2016年 No.54参照
本研究では、濃度1%の加熱変性リゾチームを用いると、新型コロナウイルスが20秒で99.5%以上という高い割合で不活化されることが分かりました。なお、新型コロナウイルスはアルコールによる不活化が既に確認されています。しかしながら、アルコールによる肌荒れやアレルギー反応、宗教上の制約などで、アルコールを使用できない場面も存在します。キユーピー独自の製法で生成される加熱変性リゾチームは、そのような場面での環境衛生の改善に活用が期待できます。今後は、変異株への不活化を検証するとともに、環境衛生の改善を中心にさまざまな可能性を探りながら、感染予防対策に向けた実用化の検討を重ねていきます。
共同研究者・松本 哲哉主任教授からメッセージ
臨床の現場において、新型コロナウイルス対策はアルコール製剤が中心になっているが、口腔内や粘膜、荒れた皮膚などには繰り返して使用するのが難しい。そのような課題の中で、既にノロウイルスの消毒に広く使用されており、鶏卵成分である卵白リゾチームを加熱変性した加熱変性リゾチームに可能性を感じて共同研究を提案させていただいた。この素材は鶏卵の抽出物であり安全性も備えている点で、新型コロナウイルスの感染対策上の意義は大きいと考えられる。加熱変性リゾチームが医療現場などさまざまな場で活用され、新型コロナウイルスを含めた感染対策の有用な手段となることを願っている。
試験概要
(なお、試験はアルコールの影響を排除するため、希釈等にアルコールは使用していません)
▽試験1:加熱変性リゾチームを用いた短時間での新型コロナウイルス不活化効果
(方法)
加熱変性リゾチーム溶液の最終濃度が1%になるよう、新型コロナウイルス溶液※2と混和した。この混和液を20秒間静置したのち、培養細胞に接種しTCID50法を用いてウイルス力価を算出した。なお、ウイルス力価は混和液中の感染力を有するウイルスの量と相関する。
(結果)
加熱変性リゾチームと混和し20秒間反応させた後の新型コロナウイルス力価は、加熱変性リゾチーム未添加※3と比較して2.33 log10 TCID50/mL以上低下していた。この結果は、1%加熱変性リゾチームを20秒間反応させることで99.5%以上の新型コロナウイルスが不活化されたことを示す。【グラフ1参照】
加熱変性リゾチーム溶液の最終濃度が1%になるよう、新型コロナウイルス溶液※2と混和した。この混和液を20秒間静置したのち、培養細胞に接種しTCID50法を用いてウイルス力価を算出した。なお、ウイルス力価は混和液中の感染力を有するウイルスの量と相関する。
(結果)
加熱変性リゾチームと混和し20秒間反応させた後の新型コロナウイルス力価は、加熱変性リゾチーム未添加※3と比較して2.33 log10 TCID50/mL以上低下していた。この結果は、1%加熱変性リゾチームを20秒間反応させることで99.5%以上の新型コロナウイルスが不活化されたことを示す。【グラフ1参照】
※2 試験に使用した新型コロナウイルス溶液のウイルス力価は約6.75 log10 TCID50/mL
※3 加熱変性リゾチームを含まない溶液と新型コロナウイルス溶液を混和して20秒間静置した群
▽試験2:加熱変性リゾチームの濃度と新型コロナウイルス不活化効果
(方法)
加熱変性リゾチーム溶液の最終濃度が0.25%、0.5%、1%になるよう、新型コロナウイルス溶液※2と混和した。これらの混和液を5分間静置したのち、培養細胞に接種しTCID50法を用いてウイルス力価を算出した。
(結果)
加熱変性リゾチームと反応後の新型コロナウイルス力価は、加熱変性リゾチーム未添加※4と比較して0.25%加熱変性リゾチーム添加では1.83 log10 TCID50/mL低下、また0.5%及び1%加熱変性リゾチーム添加では2.83 log10 TCID50/mL以上低下していた。なお、1%加熱変性リゾチーム添加ではウイルス力価は検出限界以下となっていた。この結果は、0.25%加熱変性リゾチームとの反応では98.5%の新型コロナウイルスが、また0.5%及び1%加熱変性リゾチームとの反応では99.5%以上の新型コロナウイルスが不活化されたことを示す。【グラフ2参照】
加熱変性リゾチーム溶液の最終濃度が0.25%、0.5%、1%になるよう、新型コロナウイルス溶液※2と混和した。これらの混和液を5分間静置したのち、培養細胞に接種しTCID50法を用いてウイルス力価を算出した。
(結果)
加熱変性リゾチームと反応後の新型コロナウイルス力価は、加熱変性リゾチーム未添加※4と比較して0.25%加熱変性リゾチーム添加では1.83 log10 TCID50/mL低下、また0.5%及び1%加熱変性リゾチーム添加では2.83 log10 TCID50/mL以上低下していた。なお、1%加熱変性リゾチーム添加ではウイルス力価は検出限界以下となっていた。この結果は、0.25%加熱変性リゾチームとの反応では98.5%の新型コロナウイルスが、また0.5%及び1%加熱変性リゾチームとの反応では99.5%以上の新型コロナウイルスが不活化されたことを示す。【グラフ2参照】
※2 試験に使用した新型コロナウイルス溶液のウイルス力価は約6.75 log10 TCID50/mL
※4 加熱変性リゾチームを含まない溶液と新型コロナウイルス溶液を混和して5分間静置した群
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