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IEEEメンバーが提言を発表  洪水、山火事、その他自然災害から人々の安全を守る 最新テクノロジー

2021.09.07 13:00

IEEE(アイ・トリプルイー)は世界各国の技術専門家が会員として参加しており、さまざまな提言やイベントなどを通じ科学技術の進化へ貢献しています。今回、洪水、山火事、その他自然災害から人々の安全を守る最新テクノロジーに関して、IEEEメンバーの提言を発表いたします。


現在、政府、保険会社は毎年数十億ドルもの大金を自然災害への対応に費やしています。

2021年前半、米国では山火事によって数千人が住む場所を追われました。中国の鄭州では、72時間の降雨量が、市の1年分の降雨量に達し、大規模な洪水によって数十人が犠牲となりました。


災害への対応は、救急隊員にとって大きなプレッシャーとなります。精神的に追い詰められ、場合によっては災害から災害へと駆け巡る隊員たちは、予測できない環境にいる人々を救うために自分たちの命をリスクにさらしています。


低コストの衛星、ロボット、機械的な視覚などの最新テクノロジーは、ファースト・レスポンダー(初期対応者)の仕事をより安全にし、どこにリソースを配備すべきかについての判断を迅速に下せるようにします。



■散乱した環境のマッピングによるリスクの削減

IEEEのシニアメンバーであるエラ・アトキンス(Ella Atkins)氏は、ロボットやドローンをはじめとする自律型システムが、ファースト・レスポンダーのリスク回避に貢献できるようになる日を心待ちにしています。これには、現在は人間が行っている山火事現場での掘削作業や物資の運搬に役立つ二足歩行と四足歩行のロボットも含まれます。


また、ドローンは、遠隔地の小規模な山火事の発見に役立ちます。

アトキンス氏は、「山火事を早期発見することで、火災を小規模にして、比較的容易に抑制することができるため、必要労働力の削減に役立ちます」と述べています。


アトキンス氏の研究チームは、これらの分野での基礎作りに貢献しています。最近の研究では、自律型飛行機を使った火災境界のマッピング、散乱した場所での自律型飛行機のナビゲーションに役立つアルゴリズム開発、災害現場で自律型ドローンの編隊を用いて食料や水などの物資を運ぶためのテクノロジーなどに重点が置かれています。



■煙の中でも救助者を発見

米国のIEEEの取り組みの一つであるIEEE-MOVEは2016年以降、ファースト・レスポンダーとコミュニティメンバーに大規模災害の発生直後のインターネットアクセス(および携帯電話の充電用電源)を提供しています。これらの一時的な応急救護対策は、被災者が音信を保ち、必要な支援に確実にアクセスできるようにする上で役立ちます。


IEEEのメンバーであるカレン・パネッタ(Karen Panetta)氏は最近、組織の移動災害対応チームと連携し、ファースト・レスポンダーが危険や要救助者を発見する能力を強化する、新しい機能を提供しています。


多くの場合、災害現場の要注意領域の特定には、ビデオや画像が利用されます。しかし、霧、煙、火災、被災したビル、瓦礫によって詳細の特定が困難になることもよくあります。パネッタ氏は、IEEEメンバーのメアリー・エレン・ランダル(Mary Ellen Randall)氏と共同で、これらの情報に熱探知などのセンサーデータを組み合わせ、そのセンサーデータを人工知能によって処理するシステムを開発しました。テクノロジーにより、混沌とした状況でもファースト・レスポンダーが潜在的な危険を見つけやすくなりました。



■将来的な展望:小型観測衛星の実用に向けて

地球の軌道上には、高額で大規模な地球観測衛星が数十年にわたって配備され、天気予報や一部の災害対応に利用されてきました。これらの衛星は、大気や地表の特性に関する大局的な画像を提供します。しかし、建造と運用が高コストであり、地上サポートチームが大人数必要になることもよくあるため、これらの衛星は常に不足状態にあり続けてきました。ファースト・レスポンダーにとっては、安定した「天空の目」を提供する衛星を常に利用できるとは限らないのです。


アトキンス氏は、低コストかつ軽量で、食パンほどの大きさになるものもあるキューブサットを低高度軌道に打ち上げることに大きな可能性を見いだしました。これらの衛星の多くは、地上ステーションによる管理要件に制約されないため、製作と運用が低コストです。これにより、山火事や洪水などの特定領域の継続的監視が可能になります。


キューブサットは小型でありながら、人間より早く対象物を特定できるオンボードAI画像処理などの膨大な処理能力を搭載することができます。


重要な事項として、自然災害対応とは人間の生命と財産を救うことですが、救出を行う能力は、災害と被災地を理解する対応者の能力にかかっています。

新しいテクノロジーにより、宇宙空間のように見晴らしの良い別の場所から観測される最新のデータが、ファースト・レスポンダーと、将来的な利用が見込まれるドローンやロボットに提供されます。より多くのデータを統合することで、救助をより迅速かつより効率的に提供することができ、その過程で人命を守ることができます。



■IEEEについて

IEEEは、世界最大の技術専門家の組織であり、人類に恩恵をもたらす技術の進展に貢献しています。160カ国、40万人以上のエンジニアや技術専門会の会員を擁する非営利団体で、論文誌の発行、国際会議の開催、技術標準化などを行うとともに、諸活動を通じて世界中の工学やその他専門技術職のための信用性の高い「声」として役立っています。

IEEEは、電機・電子工学およびコンピューターサイエンス分野における世界の文献の30%を出版、2,000以上の現行標準を策定し、年間1,800を超える国際会議を開催しています。


詳しくは http://www.ieee.org をご覧ください。

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