AIにより手動オペレーションが不可欠な運転を支援する「AIプラント運転支援ソリューション」を化学プラントに導入し実証実験に成功
2021.10.07 11:30
横河ソリューションサービス株式会社(本社:東京都武蔵野市 代表取締役社長:八橋弘昌 以下 横河ソリューションサービス)とNTTコミュニケーションズ株式会社(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:丸岡 亨 以下 NTT Com)は、自動制御が困難なため手動オペレーションが不可欠なプラント運転をAIにより支援する「AIプラント運転支援ソリューション」(以下 本ソリューション)を、JNC石油化学株式会社市原製造所(以下JNC石化)に導入し、実証実験(以下 本実験)に成功しました。
1. 背景
近年、労働人口の減少に伴い、プラント運転の人材確保やその運転技術の継承が、プラントを運営する企業にとって共通で抱える大きな課題となっています。その解決策の1つとして期待されているのがプラント運転を支援するAIです。しかし、運転員のオペレーションは複雑であり正確にモデル化することは技術的に困難を極めるため実用化には至っていません。このたび両社は、模倣学習を採用したAIにより化学プラントの運転を支援するソリューションを開発するとともに実プラントに導入し、高い実用性を証明しました。
2. 本ソリューションの特長
本ソリューションは、プラントに蓄積されたプロセスデータ(※1)と現場の運転員の知見をもとに、手動オペレーションを模倣学習でモデル化します。稼働中のプロセスデータにそのモデルを適用することで、AIが運転員に手動オペレーションの推奨値をガイダンス表示するとともに、その根拠を提示するものです。
ソリューション開発にあたっては、横河ソリューションサービスが提供するプラント制御改善コンサルティングのノウハウ、NTT Comが提供するAI開発ツール「Node-AI」(※2)により作成されたAIモデル、「アトリビューションマップ作成技術」(※3)による要因可視化を組み合わせ実現しました。
<本ソリューションの画面イメージ>
3. 本実験の概要
本実験は、運転員による手動オペレーションが不可欠なプラント運転において、運転中のプロセスデータからAIが提示した推奨値を運転員にガイダンス表示し、手動オペレーションに反映することで、様々な経験年数の運転員への支援に対する本ソリューションの実用性を評価するものです。AIモデルの精度を評価するMAE(※4)、及び運転員による「提示されるAI推奨値の信頼性」、「ユーザーインターフェイスの視認性・判読性」、「本ソリューションの有効性」に関する評価を基準とし、定量・定性的な観点から総合的に本ソリューションの実用性をJNC石化プラント内の対象のプロセスで確認しました。本実験の結果、MAEについては実用化に向けて予め設定した目標を超え、運転員の定性的な評価についても支持を受け、高い実用性が確認されました。
<運転員の主な評価>
【提示されるAI推奨値の信頼性について】
AIが提示する推奨値が実際の運転員の操作と高い精度で一致した。
【ユーザーインターフェイスの視認性・判読性について】
なぜそのような値をAIが推奨したのか要因が示されるため理解がしやすく、実際の要因についても納得できるものであった。
【本ソリューションの有効性について】
オペレーションの改善活動や技能伝承の効率化にも繋がる可能性があり、将来的には自動化を期待できると感じた。
4. 今後の展開
両社は、本実験の結果をもとに本ソリューションのさらなる改善に取り組み、2021年度中に商用化予定です。また、化学プラント以外の業界への展開も検討します。
今後、本ソリューションを発展させ、プラント運転の技能伝承を支援する機能の拡充および自動化の実現を目指します。
(※1): プロセスデータとは、プラント内の各種センサーから取得した温度や圧力などのデータです。
(※2):「Node-AI」は、現場の専門家や意思決定者などさまざまな関係者がコラボレーションし、コードを書くことなく簡単にAIの設計を行うことができるNTT Comが開発を進めるツールです。
(※3):「アトリビューションマップ作成技術」とは、提示した推奨値の根拠となるプロセスデータとその影響の強さを示すNTT Comの特許技術です。
(※4):「MAE(Mean Absolute Error)」とは、機械学習分野で用いる誤差を評価する指標であり、運転員による操作とAIの推奨値との誤差を評価するために用いています。
関連リンク
・化学プラントにおいて運転員のオペレーションを非常に高い精度で模倣するAIを開発(2020年12月)
https://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2020/1216.html
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