サイバー創研、「5G-SEP(*1)宣言特許の整合性」を 評価(第3弾)、評価結果を販売 ~5G-SEPの保有数を推定、順位が大きく変動~
モバイル・ワイヤレスを始めとしたICT関連の技術調査等を行う株式会社サイバー創研(本社:東京都品川区、代表取締役社長:佐藤 博彦)は、情報通信分野の企業が5G標準必須特許として標準化団体に宣言した特許(5G-SEP宣言特許)について、5G標準規格との整合性を実際に評価することにより、5G標準必須特許(5G-SEP)の保有状況を推定しました。本調査は、昨年10月、本年4月(*2)に続く第3弾になります。
標準化団体への5G-SEPとしての特許宣言は、各企業の自己申告で行われているため、5G標準規格で必須といえないものも宣言されていると言われています。このため、5G-SEP宣言特許の件数を単純に比較するだけでは、主要企業等の本当の実力は明確にならないという問題がありました。
今回の調査は、5G-SEP宣言特許の整合性評価を実施することで、5G-SEPの全体件数や企業の保有状況を、推定することを目的に実施しました。
整合性の評価は、5G-SEP宣言特許の内、中核となる規格に対して宣言され、かつ特許登録された特許数の約10%の2,166件について実施しました。
整合性の評価結果では、整合率(*3)は平均で33%となり、前回報告の32%と同程度となっています。
整合率が高い企業は、KT Group(83.3%)、NTT DOCOMO(72.9%)、Sony(72.7%)、Fujitsu(70.0%)、ETRI(66.7%)となっています。
5G-SEP宣言数に上記の整合率をかけた5G-SEPの推定保有総件数は、約13,600件となりました。本年4月に公表した前回の報告より、約4,600件増えています。
5G-SEPの推定保有件数の上位10社は、LG(10.3%)、Samsung(10.1%)、Qualcomm(9.9%)、NTT DOCOMO(9.4%)、ZTE(8.2%)、Huawei(7.8%)、Nokia(ALU含む)(7.1%)、Ericsson(4.6%)、CATT(3.6%)、Sharp(2.9%)です。
LGは前回調査時の7位から大幅に順位を上げています。
また、宣言企業数が増加し、上位企業のシェアは下がってきています。
なお、整合性評価を行った特許の分析結果はご購入いただけます。
【詳細】
(1)調査の目的と背景
今回の調査対象である5G-SEP宣言特許は、約41,000件が宣言されています。宣言特許は各社が独自の基準で宣言をおこなっているため、宣言特許の中には客観的に見て必須といえないものも含まれており、宣言特許の件数からは各社の本当の実力は明らかにならない、という問題がありました。
一方、すべての宣言特許の整合性評価は、対象特許が膨大でコスト・時間がかかり実効的に難しい、という問題があります。
このような背景から、サイバー創研は現実的な対応として、一定割合をサンプリングして整合性を評価し、その結果導出された必須特許の比率である整合率を掛け合わせることにより、5G-SEP宣言特許件数から5G-SEP件数を推定することで、客観性と実効性を両立させる手法を採用しました。
具体的には、5G-SEP宣言特許の内登録された特許の約10%を整合性評価の対象として、5G規格への必須特許である5G-SEPについて、全体件数や企業ごとの保有件数を推定しています。
(2)評価対象特許の選定
(ア)評価対象母集団の設定
・3GPPが5G規格として選定している規格を中核となる規格ととらえ、これらを宣言対象にした5G-SEP宣言特許を母集団としています。
・母集団のファミリー件数:40,703件
・その内登録となっている特許を含むファミリー件数:20,825件
中核となる規格とは、5G無線アクセス関係の規格(TS 38系)と、5Gアーキテクチャ規格のうちネットワークスライシング関係などの規格(TS23.501~23.503)です。
(イ)整合性を評価する特許の選定
・母集団の内登録となった特許を含む特許ファミリーから、整合性評価対象となる登録特許を選定しています。
・企業毎の公平性を担保するため、登録日が新しい特許を優先した上で、各企業とも登録特許件数のおおむね10%に相当する件数の特許ファミリーを選定して、整合性の評価対象としました。
・ファミリー内に登録特許が複数ある場合は、最も限定が少なく権利範囲が広い独立請求項を有する登録特許を評価対象として選定します。
(ウ)整合率の評価方法
・ファミリーごとに選定した1特許について、上記の独立請求項を対象に整合性を評価しています。
・対比する規格は、原則として対象特許が宣言している規格を対象としています。宣言規格以外の規格と対比する場合でも、中核となる規格のみを対象としています。(TS36系やTRに合致していたとしても、整合しているとは評価しません。)
(3)評価手順
(ア)ダブルチェック体制
標準規格とSEPの両方に精通した技術者が、2段階で評価を行います。1次評価者が評価した結果(評価内容は(イ)項参照)を基に、2次評価者がチェックします。B評価((ウ)項参照)は特に注意してチェックし、評価結果が異なる場合は理由を付けて差し戻し、最終的に1次2次の両評価者の見解が同じとなるよう調整します。
(イ)評価内容
・対象規格と箇所
・評価根拠
・発明のポイント
(ウ)整合性の評価結果
・A:発明が規格と一致する。この件数の比率を整合率としています。
・B:発明の一部の要件が規格と一致する
・C:発明が規格と一致しない
(4)整合性評価の結果
中核となる規格へ宣言されかつ登録された特許を含むファミリー件数は20,825件で、整合性評価対象の件数は2,166件です。サンプル比率は、登録された5G-SEP宣言特許の目標値である10%に対し、10.4%となります。なお、評価対象特許ファミリー件数は、前回調査より約850件増えています。
宣言企業は98社あり、その内、登録特許ファミリー件数が100件以上(評価対象10件以上)の27社を企業別の評価対象としています。
整合率の企業別の評価結果を図1に示します。
整合率の平均は、赤線で示すように、33%です。
KT Group(83.3%)、NTT DOCOMO(72.9%)、Sony(72.7%)、Fujitsu(70.0%)、ETRI(66.7%)が上位となっています。国籍別では、日本、米国、韓国の企業が高めの整合率となっています。
日本企業では、NTT DOCOMO、Sony、Fujitsu、NEC、Panasonicが、平均以上の整合率となっています。
(5)推定した5G-SEP件数と保有状況
評価対象の5G-SEP宣言特許ファミリー件数に、今回調査した整合率を用いて推定した5G-SEPファミリーの総件数は、約13,600件です。上位企業名と推定保有件数の比率を、図2に示します。
5G-SEPの推定保有件数の上位10社は、LG(10.3%)、Samsung(10.1%)、Qualcomm(9.9%)、NTT DOCOMO(9.4%)、ZTE(8.2%)、Huawei(7.8%)、Nokia(ALU含む)(7.1%)、Ericsson(4.6%)、CATT(3.6%)、Sharp(2.9%)です。
LGは前回調査時の7位(6.3%)から1位(10.3%)へと大幅に順位を上げています。これは多量のSEP宣言を行った結果です。
また、全体的に、上位企業のシェアは下がってきています。
日本企業では、NTT DOCOMOが4位、Sharpが10位となっています。
このように、5G-SEP宣言の活動は進行中で、これらの動向から各企業の戦略の一旦が見えてくることから、今後も継続的な調査を行う予定です。
■サイバー創研 会社概要
(1)商号 :株式会社サイバー創研( http://www.cybersoken.com )
(2)代表者 :代表取締役社長 佐藤 博彦
(3)本店所在地 :東京都品川区西五反田2-8-1 五反田ファーストビル5階
(4)設立年月日 :2001年4月
(5)主な事業の内容:情報通信関連の以下の事業
1. 調査研究事業
2. 知的財産事業
3. エンジニアリング事業
4. 教育研修・出版事業
(6)資本金 :3,000万円
*1 ETSI標準規格必須特許European Telecommunications Standards Institute(欧州電気通信標準化協会)
*2 https://www.cybersoken.com/file/press_5G_Patents,5G-SEP.pdf
https://www.cybersoken.com/blog/topics/2021/04/02/2889/#more-2889
*3 整合率:評価対象特許のうち評価結果が標準規格と一致する比率
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