GUTPとNTT Com、「デジタルツイン」技術によりリアル空間のロボットなどをデジタル空間からリアルタイム制御するアプリケーションを開発
~Smart City実現に向け建物空間のデジタルツイン構築技術標準化に向けた実証実験に成功~
東京大学グリーンICTプロジェクト(以下GUTP)(※1)とNTTコミュニケーションズ株式会社(以下NTT Com)は、2021年3月より実施していた「デジタルツイン」技術によりビルなどの建物空間を制御する実証実験(以下本実験)(※2)の結果、建物空間のデジタルツイン構築技術の標準化に向けた知見を蓄積し、リアル空間のロボットやビル設備システムなどをデジタル空間からリアルタイム制御する基礎的なアプリケーションを開発しました。
1.背景
近年、さまざまな都市課題の解決に向けたデータ利活用型Smart Cityへの注目が高まっております。中でも、リアルな街や建物から得られたデータを活用してデジタル空間上に街や建物を仮想的に再現する「デジタルツイン」技術の活用が広がっています。
街づくり、建築など幅広い分野での「デジタルツイン」技術活用のために、さまざまな分野から多くの企業・団体が参画する一方で、デジタルツイン・アプリケーション構築における標準化された手法やプロセスは確立されておらず、参画企業・団体が活用できる共創環境およびアプリケーション構築技術の標準化が急務でした。このような中、GUTPとNTT Comは2021年3月より「デジタルツイン」技術の確立とアプリケーション構築技術標準化の取り組みの1つとして、本実験を進めてきました。
2.本実験の概要と結果
GUTPは「CROSS LAB for Smart City」(※3)において、基礎的なデジタルツイン・アプリケーションを作成し、リアル空間のロボットやビル設備システムなどをデジタル空間からリアルタイム制御する実験を行いました。
<本実験のイメージ図>
(1) BIM(※4)データを活用してデジタル空間を構築
・レーザースキャナで撮影した点群データを活用した既存建物のBIMデータ作成
・デジタルツインで活用するためのBIMデータ構築およびデータ変換
(2) リアル空間のロボットをデジタル空間からリアルタイム制御・遠隔操作
・ゲームエンジン(※5)からの運搬ロボット操作
(3) 位置情報の連携
・ロボットの位置情報をゲームエンジンへ連携
・ゲームエンジンからの照明制御
(4) 各種技術の検証
・LiDAR(※6)による位置情報連携
・特定人物の位置情報と連動したロボットの移動/照明操作
・Software Defined GW(※7)と連携した照明制御
・BACnet(※8)コントローラと連携した空調制御
3.本実験の参加企業・団体とその役割
(1) GUTP:実証および研究計画の策定、技術検証の実施、アプリケーション開発
(2) GUTP加入企業
・NTT Com:実証実験のためのリソース(提供実証場所、センサー、ロボットなど)および「Smart Data Platform for City」(※9)を活用したセンサー、ロボット、ビル設備システムのデータ収集および制御
・株式会社日建設計:本実験全体の推進、実証および研究計画の策定支援
・株式会社大塚商会:BIMによる建物データの作成およびデータ連携、プロパティの検討
・神田通信機株式会社:照明、空調、ロボット、ゲームエンジンとの連携ゲートウェイの構築並びに評価
・セコム株式会社 :BIMデータをデジタルツインで活用するためのデータ変換技術・BIMデータ配信サーバの提供、データ作成プロセスの検証
・株式会社竹中工務店:デジタルツインに関する技術指導、 BIM連携技術及びデータ作成プロセスの検証、システムエンジニアリング
・TIS株式会社:運搬ロボットの位置情報共有及び制御を実現したRX(Robotic Transformation:ロボット制御機能)の提供
4.実証実験期間
2021年3月~2021年11月
5.今後の展開
GUTPおよびNTT Comを含む加盟団体は、本実験の成果をもとに建物から収集するデータ活用手法の標準化に向けた取り組みを進めていきます。オープンな環境で誰もがセキュアに建物空間のデータを活用したアプリケーションを構築できるようにすることで、建物や都市のデジタルツインを活用したSmart Cityの実現に貢献します。
さらにNTT Comは、2022年度に、他都市の拠点でも同様の実験を実施する予定です。複数の空間を跨いだ制御やデータ利活用の検証を行うことで、広域都市空間でのデジタルツイン活用に関する検討も進めていきます。
(※1):東京大学グリーンICTプロジェクト(GUTP)は、東京大学を始めとして、建物空間や街づくりに関わる企業や団体で構成するオープンなプロジェクトです。
(※2):東京大学グリーンICTプロジェクトとNTT Com、Smart City実現に向けた建物空間の「デジタルツイン」実証実験を開始(2021年3月24日)
https://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2021/0324.html
(※3):CROSS LAB for Smart Cityとは、Smart Cityにおけるさまざまなパートナーのみなさまと、知見や技術を持ち寄り、オープンかつアジャイルな開発ができる共創の場として、2021年4月にNTT Comが東京都港区に開設しました。グリーンフィールド型Smart Cityなど、実際のフィールドでの実証実験が困難な場合の実証実験や、センサーなどを用いた技術検証を行うことができ、Smart City分野でのサービス/ソリューションの価値創造の加速に寄与する施設です。
(※4):BIM(Building Information Modeling)とは、建物のライフサイクルにおいてそのデータを3Dモデルベースで構築管理する手法です。
(※5):ゲームエンジンとは、デジタルツインソフトウェアやゲーム制作において、共通して用いられる主要な処理を代行し効率化するソフトウェアの総称です。
(※6):LiDAR(Light Detection and Ranging)とは、レーザー光を操作しながら対象物に照射してその散乱や反射光を観測することで、対象物までの距離を計測したり対象物の性質を特定したりする、光センサー技術です。
(※7):Software Defined GWとは、ソフトウェアにより遠隔で機能更新可能なビル設備との通信ゲートウェイです。
(※8):BACnetとは、インテリジェントビル用ネットワークのための通信プロトコル規格です。
(※9):「Smart Data Platform for City」とは、データ利活用に必要な収集・蓄積・管理分析におけるすべての機能を、ICTインフラも含めてワンストップで提供し、データ利活用によるDX実現を加速させるプラットフォームです。詳しくは下記Webサイトをご覧ください。
https://www.ntt.com/business/sdpf/
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