4人に3人が今年の年末年始は外出予定? まだまだ油断は禁物!冬の寒さが引き起こす 「免疫力低下」「便秘」「肥満」の負のスパイラルに要注意!
2021.12.15 13:00
日本では大腸がんや潰瘍性大腸炎、クローン病など大腸に関する難治性の病気が年々増加し、日本人の「大腸劣化」は深刻化しつつあると言われます。「大腸劣化」対策委員会では、「大腸」の機能が衰えることで、全身の健康リスクが高まっている状態を示す「大腸劣化」の認知を広げ、毎日の生活のなかで対策に取り組んでいただくための活動を行っています。
新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」による外出自粛などの行動制限は、10月1日(金)にすべての都道府県で全面的に解除されました。
「大腸劣化」対策委員会が12月に実施した年末年始の行動に関する調査では、今年の年末年始には、買い物や初詣、帰省など、昨年と比べると人が密集する場所への外出機会も増えそうな結果がでています。
消化器学の専門家であり、「大腸活のすすめ(朝日新聞出版)」の著者でもある、帝京平成大学教授 松井輝明先生によると、「冬はウイルスが活発になる季節で、冬の寒さから来る『運動不足』『水分不足』『乾燥』が『免疫力低下』や『便秘』、『肥満』などの健康リスクを高める要因になり、感染症や脳血管疾患など様々な疾病につながる危険性がある」と指摘します。また松井先生は「いまだ新型コロナウイルスもオミクロン株など新しい変異株が出現し、まだまだ安心できる状況ではありません。今後もちょっとした気のゆるみや油断が冬の健康リスクを更に拡大する可能性が考えられます。マスク、手洗い、消毒を心掛けて冬本番を前に注意が必要です」と呼び掛けています。
■初詣や帰省など人が集まる場所に行く人は増える?
20代から50代の男女1,600名に「年末年始の行動に関する調査」を実施したところ、『今年の年末年始(2021年12月末~2022年1月初め)にやろうと考えていることを教えてください』という質問では、4人に3人は何らかの外出をするという結果がでています。「買い物に行く」が27.4%で最も多く、続いて「初詣」が26.8%でした。「外食」は23.3%、「帰省」は19.8%、と続く結果になり、年末年始に人が集まる場所へ外出をする方は多くなりそうです。一方で、「すべて我慢する」という方も25.9%おり、外出自粛などの行動制限が解除されたいまも慎重な行動を心掛けている人もいることが分かりました。
年末年始の行動に関する調査
■冬の寒さから来る「運動不足」、「水分不足」、「乾燥」に要注意!
『この冬に心がけたいことを教えてください』という質問では、「マスクをする(61.6%)」、「手洗い(57.4%)」、「うがい(42.8%)」と回答する人が多く、コロナ禍で行っていた対策をこの冬も継続しようと考えている方が多いようです。一方で、「乾燥を防ぐ(36.9%)」、「水分をとる(36.1%)」、「運動をする(27.6%)」と回答した人はマスクや手洗いと回答した人と比べると多くありません。しかし、帝京平成大学教授の松井輝明先生は、「そもそも冬は健康リスクが高くなる季節なので、マスク、手洗いなどを心掛けたうえで、『運動不足』、『水分不足』、『乾燥』にも注意が必要」だと話します。
年末年始の行動に関する調査
【運動不足】
冬期は寒さで運動量が少なくなります。運動量が減少すると、「肥満」や「便秘」になる可能性は高くなります。行動制限が解除されても、外出自粛によって起きていた「コロナ太り」や「巣ごもり便秘」などと同じ症状が冬の寒さによって起こります。これまでの巣ごもり生活で大腸や便の不調を感じた経験のある方はより一層、気をつけなければなりません。
【水分不足】
一般的にヒトは1日に約1,000ml~1,200mlの水分を飲料水から摂る必要があると言われています。夏の暑い時期に比べ、冬は水分を摂る意識が低く、水分量が不足しがちです。そのため、便が固くなり「便秘」になるリスクが高くなります。
【乾燥】
冬は空気が乾燥しているため、口や喉のなかの粘液も乾燥しやすくなります。すると粘膜で作用して、ウイルスや毒素などの異物を排除してくれるIgA抗体がどんどん少なくなり、「免疫力」が低下して、風邪やインフルエンザなどいろいろな病気にかかりやすくなってしまいます。
このような冬の寒さが原因となる、行動や環境の変化が「免疫力低下」「便秘」「肥満」や「高血圧」などの健康リスクを高めてしまうのです。
そのような健康リスクを抱えた状態で、初詣など年末年始に人が集まる場所へ外出したり、室内でも寒いからと換気を疎かにしたり、多人数でお酒を飲んで気がゆるみマスクを長時間外してしまったり、といったことがあると危険性は更に高くなってしまいます。
■「免疫力低下」、「便秘」、「肥満」の3大健康リスクは大病につながる危険信号!
「免疫力低下」は怖いけれど、「便秘」や「肥満」くらいなら・・・と考える方がいるかもしれませんが、決してそうではありません。「免疫力低下」「便秘」「肥満」はすべてがお互いに関係しているスパイラルの関係と言えるのです。
大腸ではビフィズス菌などの善玉菌がエサを発酵させてつくり出す「短鎖脂肪酸」によって、腸壁の内側にあるムチンという粘液が増やされバリアを張り、有害菌が入らないようにブロックする役割をはたしています。便秘が続いて腸内環境が悪くなると、このバリアが弱まるため、「便秘」が引き金となって「免疫力低下」が起きます。逆に「免疫力低下」によって「便秘」になってしまうこともあります。免疫力が落ちると解毒作用や毒素排泄が妨げられて腸の正常な運動が妨げられてしまうことから「便秘」になってしまうことがあるのです。
また「便秘」が原因で「肥満」になってしまうこともあります。便とは摂取した飲食物が胃や小腸で吸収された後の残りカスなので、そのなかには吸収されなかった脂肪分や糖分なども含まれています。便が便秘で排出されずに腸内に留まってしまうと、水分と一緒に体内へ再吸収され、脂肪として蓄えられてしまうため、便秘になると食べ物の消化吸収にも影響がでます。便秘で直腸の出口に食物残渣が滞ってしまうため、消化管の運動が妨げられます。通常、小腸での栄養吸収部位では5~6時間で通過するところが、7~8時間かかり、そのため余分に栄養の吸収が起こり「肥満」になると考えられています。また「肥満」によって免疫機能の調節をするサイトカインという生理活性物質のバランスが崩れて、免疫機能が不調になったという研究なども報告されています。※1「肥満」の人は脂肪やタンパク質が多く食物繊維の少ない食事をしているケースが多く、「肥満」の人の腸内細菌の特徴として「短鎖脂肪酸」を産生する善玉の腸内細菌が少なくなってしまいます。そのため腸を動かすエネルギーが減少してしまい、「便秘」になりやすくなります。
「便秘」が肥満や免疫力低下につながることも、「肥満」が免疫力の低下や便秘の誘因となることも、「免疫力低下」によって便秘や肥満になってしまうこともあり得るのです。まさに負のスパイラルと言えるのです。「免疫力低下」、「便秘」、「肥満」の症状は「大腸劣化」の分かりやすいサインでもあります。放っておくと糖尿病などの代謝系のトラブルやうつ、記憶など神経・脳関連のトラブル、大腸がんを発症する可能性も考えられます。
※1 出典:日本栄養・食糧学会誌(0287-3516)59巻1号 Page7-14(2006.02)
負のスパイラルイメージ
■冬の3大健康リスク「免疫力低下」、「便秘」、「肥満」のスパイラルを根本から防ぐ方法とは!?
「免疫力低下」、「便秘」、「肥満」はそれぞれが引き金となりえるスパイラル関係にありますが、根本から防ぐことが可能です。その鍵を握るのがビフィズス菌が大腸でつくり出す「短鎖脂肪酸」です。
「短鎖脂肪酸」の役割は、腸内を弱酸性に保って悪玉菌の活動を抑制したり、大腸のぜん動運動を促進して便通を良好にしたり、殺菌・抗炎症作用とともに腸のバリア機能を高めたり、腸管の粘液の分泌や水分・ナトリウムなどの吸収を促したりと、多岐に渡ります。普段からビフィズス菌や酪酸菌などの有益な菌をおなかの中に増やし、大腸内で「短鎖脂肪酸」が活躍できる環境を整えておくことで、「免疫力低下」、「便秘」を防ぐことにつながります。
「短鎖脂肪酸」の効果はそれだけではありません。ビフィズス菌や水溶性食物繊維を摂取することで「肥満」の抑制に効果があることが試験で分かっています。これは、大腸にすむビフィズス菌など特定の善玉菌が、水溶性食物繊維をエサとして「短鎖脂肪酸」が産生するためと考えられています。「短鎖脂肪酸」は脂肪細胞に働きかけて脂肪の蓄積を防ぎ代謝を上げて、やせやすい体質へ導く働きも担っているのです。
短鎖脂肪酸イメージ
【ビフィズス菌や水溶性食物繊維の摂取による肥満抑制効果】
ヒトの肥満度を表す指標であるBMI(Body Mass Index)が高めの男女52名(BMI24~30)が、ビフィズス菌を12週間摂取したところ、体脂肪量・体重ともに12週目には摂取前と比較して、有意な減少が認められたという試験結果が報告されています(図1)。※2 また、食物繊維を豊富に含むスーパー大麦の摂取による抗肥満効果についての評価試験では、肥満傾向の成人男女50名が、スーパー大麦含有食品(グラノーラ形体で、スーパー大麦の摂取量として12g/dayに設計)を12週間摂取したところ、腹部内臓脂肪面積(VFA)の有意な減少が確認されています。※3
ビフィズス菌摂取による試験結果
※2出典:Bioscience of Microbiota, Food and Health 37(3):67-75(2018)
※3出典:薬理と治療 Volume 46,Issue 12,2099 - 2110(2018)
大腸内でビフィズス菌や酪酸菌などの善玉菌が不足すると短鎖脂肪酸がつくられなくなってしまいます。まずは腸内細菌叢を「短鎖脂肪酸」を産生しやすい理想的なバランスになるようにビフィズス菌などの善玉菌を増やすことを心掛けましょう。腸内環境を良くすることは、冬の3大健康リスク「免疫力低下」、「便秘」、「肥満」のスパイラルの根本を断つことにつながるのです。
【ビフィズス菌は“ビフィズス菌入りのヨーグルト”で補給】
ビフィズス菌を手軽に摂るには“ビフィズス菌入りのヨーグルト”がおすすめです。ビフィズス菌は酸素を嫌う特性から、一部のヨーグルトやサプリメントにしか含まれていません。すべてのヨーグルトに含まれるわけではないため、スーパーやコンビニでビフィズス菌入りヨーグルトを選ぶときはよく確認して選ぶようにしましょう。
普通のヨーグルトとビフィズス菌入りヨーグルト摂取による整腸作用の違い
【冬の基本的な健康対策でさらにリスク軽減】
腸内環境を良好な状態にすることも重要ですが、冬の基本的な対策として、体を温める、乾燥を防ぐ、水分を摂る、適度に運動することを意識しましょう。ヒトは寒さを感じると交感神経の働きにより体温を逃がさないように血管が収縮して血圧が高くなり、血流も滞ってしまい、その影響で腸の働きが悪くなり「便秘」になります。体を温めると腸の動きが良くなって免疫力も活性化しますので、日頃の食生活から温かいものを食べるようにしましょう。また、寒いと暖房を使いがちです。窓をしめきってしまうので乾燥対策が難しくなりますが、加湿器などを上手に活用して、室温が20℃、湿度が50%~60%になるように工夫しましょう。そうすることで粘膜の免疫力が高まります。水分は飲料水から1日に約1,000mlは摂るように心がけましょう。そして、室内でできるストレッチのような運動で構いませんので毎日行うことで、さらに健康リスクの軽減につながります。
帝京平成大学 松井 輝明教授
帝京平成大学 健康メディカル学部 健康栄養学科 教授
健康科学研究科 健康栄養学専攻長
松井 輝明先生
日本大学医学部卒業。医学博士。
1999年 日本大学板橋病院消化器外来医長就任。
2000年 日本大学医学部講師、2012年 准教授。
2013年 帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科教授就任、現在に至る。
「大腸活のすすめ」(朝日新聞出版)
近年注目される腸内フローラは、その乱れにより全身のトラブルを引き起こす。食トレンドの変化、運動不足などにより、日本人の大腸は劣化していると著者は指摘。しかし、腸は自分で変えられる。おすすめの「大腸活」習慣を伝授する。
<調査概要>
■調査主体 :「大腸劣化」対策委員会
■調査方法 :インターネットによるアンケート調査
■調査期間 :2021年12月6日(月)~8日(水)
■調査回答者:20歳~59歳の男性800名、女性800名 計1,600名
(20代 男性:200名、女性:200名
30代 男性:200名、女性:200名
40代 男性:200名、女性:200名
50代 男性:200名、女性:200名)