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文豪 井上靖ゆかりの伊豆「上の家」、保存改修工事が完了  工学院大学の学生ら  歴史的な面影残し、現存する漆喰や崩れた土壁を再利用

工学院大学(学長:伊藤 慎一郎、所在地:東京都新宿区/八王子市)の西森陸雄研究室(建築デザイン学科)と田村雅紀研究室(建築学科)は、伊豆市湯ヶ島に建つ「上(かみ)の家」の保存改修工事を完了しました。


この建物は文豪井上靖の母の実家で、同氏の小説にも登場します。築150年ほどの建物で、壁や梁などの老朽化が顕著でした。伊豆市の委託を受けて改修計画を進めた西森研究室は、漆喰・土壁研究で実績のある田村研究室(同大学)に協力を依頼。田村研究室は現存する漆喰仕上壁の保存作業を、西森研究室は建物内の一室である談話室の整備を担当しました。11月23日に現地でお披露目会が開かれ、関係する方々に改修完了を報告し、12月4日から一般公開されています。


建築学部学生らが改修に参加した伊豆市「上の家」


■「上の家」改修概要

場所:静岡県伊豆市湯ケ島189

期間:2021年8月15日 ~ 2021年12月21日

施工:工学院大学建築学部 西森研究室(建築デザイン学科)、

   田村研究室(建築学科)


担当箇所

1階台所 :壁の崩れ落ち→現場に落ちていた壁の一部を再利用し、

             自然の材料を混ぜ入れて、取れた部分を補充。

             大学と企業で開発した補修技術(特許第6570170)を

             活用。漆喰は当時状態から劣化が進まない技術、

             土壁は剥がれ防止を実現する新技術を適用。

1階談話室:柱・土台の腐食、雨漏り

            →建物補強は地元の工務店に依頼。

             リフォームでは歴史的な面影を残しつつ、

             家具とのれんづくり、床のタイル張りなど、

             今後の室内活動を想定した新規設置や床の仕上げ。

             壁の崩れ落ち→1階台所と同じ技術で漆喰仕上げ。



■学生コメント

談話室改修担当 向井菜萌さん(建築学専攻1年、西森研究室)

修士1年生と学部3年生の計10名で、模型や図面作成をしながら内装改修提案を行いました。建築設計が好きな学生からDIYを趣味にする学生まで多様なメンバーで何度も話し合いを重ね、上の家の魅力を継承し増幅させるよう設計しました。壁の漆喰仕上げや床のタイル貼り、家具作成など現地での作業中は、近隣住民の方が気さくに話しかけてくださいました。これから使う方と直接交流できたことや、自分たちの考えが実際に形となったこと、文化財級の建物改修に携われたことは、設計授業の枠を超えた貴重な経験となりました。


「上の家」改修に携わった工学院大学西森研究室


漆喰土壁改修担当 梅田栞合さん(建築学科3年、田村研究室)

補修技術開発者である田村教授、丸山紘明氏(株式会社 樹)、岡健太郎氏(工学院大学非常勤講師)と共に改修に携わりました。最初の施工では、ひび割れが入らないよう特に慎重に黙々と心を込めて作業しました。壁に土を詰める作業が難しく、加えて、練込み中の発酵の匂いは今までに経験がないもので、貴重な体験ができました。自然素材を効果的に用いて機能性を回復させるだけでなく、140年前の当時使われた粘土を再利用するなど、歴史的な価値を保存する大切さについても学びました。


「上の家」改修に携わった工学院大学田村研究室

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