現代人の“まばたき”は浅くて半開きになりがち!? ドライアイの原因となる“まばたき不全”に注意! 眼科医が解説・まばたき不全と涙の蒸発を防ぐ “瞳の保湿ベール”とは
2022.01.21 14:00
テレワークやオンライン授業の定着で、PCやスマホを見る時間が増えている昨今、ドライアイや角膜(黒目部分)に傷がついてしまうリスクが高まっています。涙には大切な瞳を守る役目がありますが、実は“不完全なまばたき”によって、涙が蒸発しやすくなってしまうのです。まばたきが不完全だと、涙の蒸発を防いでいる“瞳の保湿ベール(油層)”が形成されづらくなり、油層が乱れてしまうことで、涙が蒸発しやすい「涙液蒸発亢進(こうしん)型ドライアイ」になってしまう恐れがあります。普段意識しない“まばたき”とそのケア方法を眼科医 有田 玲子先生より解説します。
■1日に約1万5千回!“瞳の保湿ベール”をつくるまばたきの重要性
普段は意識をしていないまばたき。1日に約1万5千回※もしているといわれていますが、その重要性をご存じでしょうか。
瞳は涙によって守られています。その涙がまばたきによって、瞳全体へ行き渡ることで、保護され、栄養を届けています。その瞳を守る涙は、3層構造になっており、蒸発を防ぐ役割の「保湿ベール(油層)」があります。しっかりと上瞼と下瞼がくっつく、完全なまばたきをすることで、油分と水分が分泌され、保湿ベールを作っているのです。そのため油分が不足していると、涙は蒸発しやすい状態になってしまいます。
※眼科医 有田 玲子先生のドライアイ診察室/【ドライアイ診察室】Let's まばたきエクササイズ!
https://www.youtube.com/watch?v=Xj3pdnT3_nA
正常な涙
■若年層は特に注意!不完全なまばたきに陥りやすい現代人の生活
瞳を守るためにも大切なまばたきですが、現代は不完全になりやすい環境にあります。その大きな要因が、VDT(Visual Display Terminals)作業と呼ばれるPCやスマホの使用です。集中して画面を見続けることで、まばたき回数は通常時の約1/4になってしまいます。さらにこのような状態が続くとまばたきをする筋肉(眼輪筋)が衰え、完全にまぶたが閉じない浅いまばたきになってしまいます。こうした状態では、適切に瞳の保湿ベールをつくる油分が分泌されません。不完全なまばたきは、特に若年層(20~30代)に多い傾向※があることもわかっています。昨今はテレワークやオンライン授業などの定着によって、VDT作業時間が増加しており、瞳が乾きやすい状況におかれているのです。
※Characteristics of tear film lipid layer in young dry eye patients / Weng HY, Ho WT, Chiu CY, Tsai TY, Chang SW.J Formos Med Assoc. 2021 Jul;120(7):1478-1484. doi: 10.1016/j.jfma.2020.10.028. Epub 2020 Nov 23.PMID: 33243538
目を酷使する現代人生活
■不完全なまばたきが招く「涙液蒸発亢進型ドライアイ」
まばたきが不完全になってしまい、上瞼と下瞼がしっかりくっつく、“完全なまばたき”ができない状態になると保湿ベールをつくる油分が分泌されず、涙が蒸発しやすくなってしまいます。このように、油層による瞳の保湿ベールが適切に作られず、涙が乾きやすいタイプのドライアイが「涙液蒸発亢進(こうしん)型ドライアイ」です。なんとドライアイ患者の約8割以上がこのタイプに該当します。※
※「ドライアイ全体の86%は脂不足のドライアイ」に関する文献
Distribution of aqueous-deficient and evaporative dry eye in a clinic-based patient cohort: a retrospective study Lemp MA, Crews LA, Bron AJ, Foulks GN, Sullivan BD. Cornea 2012 May;31(5):472-8.
不完全なまばたき
涙の保湿構造が乱れた涙
■「涙液蒸発亢進型ドライアイ」のケア方法
●『まばたきエクササイズ』でまばたきの質をアップ
まぶた付近の筋肉「眼輪筋」を鍛えることで、無意識にしているまばたきの質をあげることができます。(1)~(5)を5回1セットとして、1時間ごとに行うと効果的です。
まばたきエクササイズ
点眼薬の正しい使用
ポイント:下瞼を上に引き上げるイメージで下の眼輪筋を鍛える
出典 :LIME研究会
●点眼薬を正しく使う
水分補給だけでは改善しにくい「涙液蒸発亢進(こうしん)型ドライアイ」。まばたきの質と回数を意識するだけでなく、点眼薬を正しく使用してケアすることも重要です。
・症状が軽いうちにさすことでさし過ぎを防ぐ
※適切なタイミング:起床後、お昼休み、3時のおやつ時、夕食前
・1滴で十分効果的であるので、一度に何滴もささない。また、一日の上限回数を守る
※1日3~6回
・うるおい感が持続するタイプを選ぶ
・角膜にやさしい防腐剤無添加のものもおすすめ
ポイント:点眼薬は用法・用量を守り、うるおい感がつづくものを選ぶ!
■有田先生プロフィール
有田 玲子先生
伊藤医院眼科副院長 慶應義塾大学元眼科非常勤講師 東京大学眼科臨床研究員
2012年、眼科医、一般のかた、患者さんに涙のあぶら・マイボーム腺の重要性を啓蒙するべくLid and Meibomian Gland Working Group(LIME研究会)を立ち上げ、涙のあぶらの重要性をより多くの方々に発信していくことを目的に講演会・講習会・ハンズオンワークショップ・患者さん向けパンフレットの作成などActiveに活動している。国際的には涙のあぶらに関する英文論文を70報以上Publishしており、涙のあぶらに関する論文数では世界一となっている。
最近では一般の方へドライアイの正しい知識啓蒙のためYouTubeチャンネルを配信している。
有田 玲子先生
「現代人の角膜ケア研究室」(URL: https://www.kakumaku-lab.jp/ )では、近年増加していると言われている「角膜上皮障害(角膜に傷がついた状態 等)」から現代人の目を守るため、専門家による正しい角膜のセルフケア方法など、角膜に関する情報を分かりやすく、紹介しています。
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