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「第25岡本太郎現代芸術賞」受賞者が決定! 入賞者・入選者の作品を集めた展覧会を 川崎市岡本太郎美術館で2月19日~5月15日まで実施

岡本太郎の遺志を継ぎ、次代のアーティストを顕彰する岡本太郎現代芸術賞、通称TARO賞。

今年で25回をむかえる本賞には578点の応募があり、24名(組)が入選。最終審査を経て、太郎賞1名、敏子賞1名、特別賞4名(組)が決定し、2022年2月18日(金)に受賞者発表と授賞式をとりおこないました。


また、入賞者・入選者の作品を集めた「第25回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」展を2月19日(土)から5月15日(日)まで、川崎市岡本太郎美術館にて開催いたします。


次代のアーティストの意欲的な作品をぜひご覧ください。


吉元れい花『The thread is Eros, It's love!』


太郎賞(賞金200万円):吉元れい花『The thread is Eros, It's love!』

【審査評】

糸は人類の古層とともにあり、ひとの歴史的な歩みや文明の命運を見守り、傷や裂け目を縫い合わせ、わたしたちの生命を、一人一人の生身の身体を通じて明日へとつないできた。なかでも刺繍は、手で糸を手繰り、針をくぐらせ、命の結節点としてのエロスと愛を吸収し、折りごとに発散する媒体(メディア=巫女)だ。そのような糸と針と手による根源的な力は、コロナ禍での虚実を見事に剥ぎ取り、すべてを素のままの姿へとさらけ出す。本作が放つまるで暗闇の中の放電現象のような刺繍エネルギーが、今こそ求められている。(椹木野衣)


三塚新司『Slapstick』


敏子賞(賞金100万円):三塚新司『Slapstick』

【審査評】

岡本太郎がこの作品に対峙したら、両手を広げ、カッと目を見開いて「何だこれは!」と言うに違いない。私も、会場入り口でこの巨大なバナナの皮にいきなり出くわしたとき、思わず息を呑んだ。一見、単純な、いい意味でバカバカしい造形。しかし、色彩、質感などは可能な限りつくりこまれていることに好感を持った。Slapstickとは、「叩く棒」が転じて、舞台のドタバタ喜劇を意味する言葉。作者は、足をすべらせるこのバナナの皮によって、「巨大な存在の転倒を暗示する」という。バナナ栽培の歴史まで丹念に調べ、周到に構想された、でも「何だこれは!」と思わせる強烈なインパクトがある作品である。(山下裕二)


伊藤千史『書店レジ前の平台』


特別賞(賞金15万円):伊藤千史『書店レジ前の平台』

【審査評】

今では、存続しにくくなってしまった町の本屋さんを模したインスタレーション作品は、先ず手にとって開いて読める点に魅了された。タイトルを少し変えたり、時勢に沿うようでいて少しだけズラしていくことで、作品全体のズレ感をより強固にしている。平台の下隅にあるネズミの家を見落とさないように。

過去作品も非常に評価できるものが多く、今後の活躍を期待したい。(和多利浩一)


硬軟+stenographers『速記美術のエレメント』


特別賞(賞金15万円):硬軟+stenographers『速記美術のエレメント』

【審査評】

速記とはなんだろうか。知っているようで、わからない。しかし国会中継など見ていると、速記された文字が、私たちの生活を根底から規定することに使われているのはあきらかだ。正確さだけなら録音でもよいのに、なぜ速記なのだろうか。こうした疑問を、まさか美術を通じて引き出されるとは思ってもいなかった。しかし気づいてみれば、速記は文字と言うよりはるかにドローイング的であり、エモーショナルでもあり、さらに言えば舞踏のように身体と密に連動していて目が離せない。(椹木野衣)


藤森哲『往日後来図』


特別賞(賞金15万円):藤森哲『往日後来図』

【審査評】

油彩表現にはまだこんな可能性が残っていたのか!その色彩と質感に驚きをもって近づくと、劇画の如く精緻でクールなタッチに包まれた宇宙飛行士は、発掘されたミイラのような表情をしていた。不気味だ。奥に進むと今度は観客自身が前代未聞の世界観に包まれる。「クシャナ朝の仏像は近未来的な現実味を孕んでいた」「既に滅びた歴史は、いつか私たちにも起こるディストピアとしての未来と重なり、文明がループする」。そう語る作者が描く世界は似たものがなく、説明不能でもあるが、なぜかワクワクする。強力なイメージ喚起力があるのだろう。すべてにおいて“濃い”のだ。練り込まれたコンテンツは強い。(平野暁臣)


村上力『異形の森』


特別賞(賞金15万円):村上力『異形の森』

【審査評】

作者は出品作の展示イメージに、ジャコメッティの「森」をヒントにしたという。様々な人間像による「異形の森」。「異形」は現代社会の謂いでもあるだろう。麻と漆を使った乾漆作品は空洞構造である。がらんどう。リアルであると同時に、虚ろでもある。等身大の人物像はそのリアルさ故に、虚実が入れ子となった現代社会を照らし出す。

既に様々な公募展で入選の実績があり、過去に太郎賞展でも受賞している。今回は、巨大なピカソ像を中心とした、展示空間の完成度が審査員の評価を得た。斬新さは無いが、作者の世界観が良く伝わる内容である。(土方明司)



■入選作家・作品名(50音順・敬称略)

・青山夢『弥勒モラトリアム』

・井下紗希『這う、知る、漲る』

・因幡都頼『幸辛物語』

・岡田杏里『Flor y Canto 花と歌』

・岡田智貴『大覚』

・角文平『Fountain』

・GengoRaw(石橋友也+新倉健人)『蒼頡AI』

・平良志季『Let's go☆鎖国』

・高田茉依『8,000,000』

・張安迪『皮・肉・芯』

・津川奈菜『フレアスカートと幽霊』

・出店久夫『記憶断片つづれ織』

・中澤瑞季『Forest』

・野々上聡人『Drawing』

・堀川すなお『絵画:バナナ#550-554“バナナ#3.(28)F.観察;日本人#1”読み;val2010-11

ドローイング:“バナナ#3.(28)F.観察;日本人#1”解;バナナ#570-605.21』

・森下進士『青人草』

・Yoko-Bon『Reincarnation』

・与那覇俊『巨人病院(5)(1%の体験記)』

※『巨人病院(5)(1%の体験記)』の「(5)」は、正しくは丸囲み数字



《第25回岡本太郎現代芸術賞 概要》

■主催

公益財団法人岡本太郎記念現代芸術振興財団

川崎市岡本太郎美術館


■審査員(50音順・敬称略)

・椹木野衣 /美術批評家、多摩美術大学教授

・土方明司 /川崎市岡本太郎美術館館長

・平野暁臣 /空間メディアプロデューサー、岡本太郎記念館館長

・山下裕二 /美術史家、明治学院大学教授

・和多利浩一/ワタリウム美術館キュレーター



《第25回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展 概要》

会期  :2022年2月19日(土)~5月15日(日)

会場  :川崎市岡本太郎美術館・企画展示室

開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は4時30分まで)

休館日 :月曜日(3月21日、5月2日を除く)、2月24日、3月15日、3月22日、

     5月10日、5月11日

観覧料 :一般 700(560)円、

     高・大学生、65歳以上 500(400)円

     中学生以下は無料 ※( )内は20名以上の団体料金

交通  :小田急線「向ヶ丘遊園駅」南口より徒歩17分

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