AIを活用した構造設計支援システムの開発 - 誰もが熟練者と同等の構造計算が可能な環境を構築 -
2022.03.07 11:15
安藤ハザマ(本社:東京都港区、代表取締役社長:福富 正人)、株式会社リバネス(東京本社:東京都新宿区、代表取締役グループCEO:丸 幸弘、以下、リバネス)、株式会社ヒューマノーム研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:瀬々 潤、以下、ヒューマノーム研究所)およびソーラーテック株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役CEO:久保 友志郎、以下、ソーラーテック)は、有限時間内に誰もが最適な構造計算が可能な環境を構築するために、AIを活用した構造設計支援システム「部材グルーピングシステム(以下、AIグルーピングシステム)」を開発しました。
AIグルーピングシステムの活用により、従来の構造計算と比較して、計算結果を得るまでの時間が半分程度となります(図1)(注1)。これにより、迅速な対応ができるだけではなく、限られた期間内に複数の架構形式の検討ができることで、より良い提案をすることが可能になります。また、本システムは担当者の知識・経験に依存しないため、成果品の完成度の平準化も実現します。
図1:構造設計支援システム 最適化サイクル
1. 開発の背景
建築の構造設計では、一貫構造計算プログラムを用いて、柱部材や梁部材の大きさ等を決定していますが、その際、さまざまな条件を満足させる必要があります。従来の設計方法では、構造計算プログラム上で部材情報を手入力で変更し、トライアンドエラーを繰り返すため、多大な時間を要します。また、成果品の完成度が、担当者の知識・経験による個人の力量に左右されることもあります。
これらの課題解決のために、安藤ハザマでは、構造設計者の経験によらず、短期間で精度の良い構造計算結果が得られるRPA(Robotic Process Automation)(注2)を用いた自動計算システム(以下、RPAシステム)を構築しました。しかし、対象建物の部材の種類が多い場合には、RPAシステムの計算時間が膨大になること、施工性が考慮されない結果となることなどの問題がみえてきました。そこで今回、RPAシステムをベースに、計算時間と施工性の問題を解決するAI「AIグルーピングシステム」を開発しました(図2)。
図2:構造設計支援システムによる構造計算フロー
2. システム概要と効果
・AIグルーピングシステムは、構造計算モデルの部材を自動的にグルーピングすることで、RPAによる適切な構造計算を誘導するためのAIシステムです。グループ数については、AIによる自動設定が可能ですが、個々の建物の制約に対応するために構造設計者が設定することも可能です。
・AIグルーピングシステムによるグループの数や精度は、熟練した構造設計者と同等であることを確認しています。また、AIグルーピングシステムとRPAシステムにより、誰もが短期間に熟練した構造設計者と同等以上のより良い提案・成果品を作成できる環境を構築しています。
・AIグルーピングシステムをRPAシステムと併用することで、従来の手入力での構造計算と比較して計算時間を約半分に短縮することが可能です(図1)。これにより、設計資料作成についても、従来と比較して約半分の日数に短縮することができました。
・構造計算の作業的な部分を自動化することにより、構造設計者はより創造的な業務に集中できる環境となりました。また、構造設計者の働き方改革・ワークライフバランスの向上へもつながっています。
3. 今後の展開
AIグルーピングシステムとRPAシステムのさらなる効率化と、両システムを一体のシステムとして利用できるように整備を進め、構造設計のさらなる効率化、生産性向上を目指します。
なお、科学技術分野における教育、研究等に関する企画・コンサルティング業務などを手掛けるリバネス(本件、コンサルティング担当)、ヒトの理解に関連する学術的統合解析技術の研究開発に取り組むヒューマノーム研究所(本件、AIシステム構築担当)、そして建設業界での製造支援を行うソーラーテック(本件、コミュニケーション統括担当)が、建設会社と共同で技術開発に取り組むのは今回がはじめてとなります。異業種のパートナーが協同し、さまざまな可能性を追求することで、ニーズに即した差別化技術の開発を加速していきます。
(注1)AIグルーピングシステムとRPAシステムを併用した場合の計算時間
(注2)RPA(Robotic Process Automation)
これまで人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業を、人間に代わって実施できるルールエンジンを活用して代行・代替する取り組み