IEEEメンバーが提言を発表 ~今後数年間に起こりうる ロボティクスと未来の仕事術の変化とは?~
2022.03.25 09:30
IEEE(アイ・トリプルイー)は世界各国の技術専門家が会員として参加しており、さまざまな提言やイベントなどを通じ科学技術の進化へ貢献しています。
■人類とロボットが並んで働く
過去数十年にわたって、テクノロジーは、さまざまな局面で、多種多様なイノベーションを生み出し、私たちの生活と仕事のやり方を変えていきました。自動運転車、デジタルエージェント、ロボットおよび他のツールが急速に発展している現在、単純な事実が見過ごされがちになっています。それは、20世紀にはこれまで人間が経験にもとづいて行ってきた仕事の多くをコンピューターが引き受けるようになったことです。現在、コンピューターは自己学習アルゴリズム、パターン認識および自然言語処理の活用によって、計算とデータ処理をより速く行えるようになっています。
データ処理をより迅速、より正確に行う能力、ならびに反復的な作業を自動化する能力を持つAIとロボティクスにより、従業員はクリエイティブなソリューションの構築と複雑な問題の解決に集中できるようになり、その結果、効率性が向上しました。人間が行う作業を最小限に留め、プロセスの自動化を促進する、本格的なロボティクスが、さまざまな業界で導入されてきました。急激に変化する仕事環境に対応するために、これらのテクノロジーが採用され、次々と起こる予測困難な変化にも対処できるようになっています。
■ロボティクスとトレンド予測
「World Robotics Report 2021 Industrial Robots」のレポートによれば、全世界の工場で作動している産業用ロボットの数は300万台にも達しており、全体で10%増加しています。2024年までには、約52万台の産業用ロボットが新たに配置されると予想されています。東南アジア市場では、2021年に2桁台の増加率となりました。このレポートでは、パンデミック後の経済成長によって、2022年と今後の数年間で、この増加率に2桁前半の上積みがあるという予測されています。今後数年間のうちに、人間とインテリジェントな機械がと補完し合いながら、実行、管理および監視を行うことが多くなり、優れた成果を出すようになると言っても過言ではないでしょう。
■デジタルワークフォースの台頭
自動化されたシステムは、人間が見過ごしてしまいそうな不効率を見つけ出すため、AIを活用したシステムにより、ミスをゼロにすることが可能になります。その結果、品質保証と生産性の管理を主な目標とする、監督者の需要が少なくなるかもしれません。これらのデジタルを活用したシステムにより、従業員は短い休憩をとれるようになり、現在の忙しくストレスに満ちた仕事からもっと解放されるでしょう。これは、ロボティクスとオートメーションを導入した際にもっとも多く見られる特徴です。つまり、これらは人間の作業を補完するものであり、人間にとって代わるものではないということです。このような手法により、人間とロボットが寄り添って働くことで作業全体の効率が高まり、革新化されるという、理想的な状況への道が切り開かれるようになるでしょう。ロボットが仕事を独占し、ボスになるかもしれないという恐れは、ありえないことなのです。
デジタルワークフォースが実現するのは効果的なリソース管理であり、さまざまな業界がAIを活用したソリューションを導入することで、人手不足が解消され、顧客サービスを改善できるようになります。よく見られる例は、ロボティクスとオートメーションをEコマースに組み合わせて、よりパーソナラズされたサービスを提供する新しいサービスモデルです。
パンデミック後の世界では、ロボットへの需要は、ますます増えていくでしょう。しかも、その需要は、世界の経済がパンデミックの影響を吸収したあとも、減少することはないでしょう。デジタルの世界は、足りないものを簡単かつ包括的に把握する方法を見つけ出し、対処手段を提供しようとすることで、イノベーションを繰り返します。デジタルの世界はさらに、コロナウイルスのパンデミックのような、安全と安心への予期せぬ脅威に効果的に対処することで、リスクを軽減します。統計的に言えば、専門家の48%が、ロボットとデジタルエージェントが将来には進み、これらがブルーカラーとホワイトカラーの両方の仕事で重要な役割を果たすようになると予想しています。
■デジタルワークフォーストランスフォーメーションの課題
管理の自動化はワークフローから始まり、特定のアルゴリズムを使用して優れた成果を出せるようになります。しかし、次にあげるような課題によって、デジタルワークフォーストランスフォーメーションとその他の継続中のトランスフォーメーションの効果が制限されることもあります。
・デジタル化のイニシアティブを推進するための専門知識が欠如している
・総合的なデジタル化戦略が欠如している
・インフラストラクチャの変更が構造的に行われていない
・初期投資のための予算が制限されている
・人間とデジタルのワークフローの統合についての問題が存在している
・デジタルプロセスの採用および内面化することが従業員にとって困難である
つまり、セクターを横断して適応能力を身につけるには、絶えず変化するマーケットおよび職場の需要に合わせて、戦略を導入および再目的化することが強く求められます。よくある考え方とは逆に、ロボットが人間の仕事を奪うことはありませんが、自動化されたワークフローにうまく適合できるように、たくさんの業務を大幅に見直す必要があるかもしれません。世界経済フォーラムの2021年版レポートでは、自動化の拡大、およびAIと機械学習の導入によって、ほとんどのセクターで雇用が増大し、プロセスの標準化が可能になることを示すデータが紹介されています。
■他の業界との統合
PCおよび携帯電話アプリケーションの普及に伴い、自動化されたコールセンター、また、モノのインターネット(IoT)やAI、ロボティクスといったその他の先進技術はすでに、医療、輸送およびロジスティックス、顧客サービスといったセグメントにわたる多様なビジネスプロセスに浸透しています。
私たちがよりデジタルで接続された世界へと向かいつつあるなかで、AIとロボティックスが全世界で仕事環境をいかに変容させていくのか、興味は尽きません。
■IEEEについて
IEEEは、世界最大の技術専門家の組織であり、人類に恩恵をもたらす技術の進展に貢献しています。160カ国、40万人以上のエンジニアや技術専門会の会員を擁する非営利団体で、論文誌の発行、国際会議の開催、技術標準化などを行うとともに、諸活動を通じて世界中の工学やその他専門技術職のための信用性の高い「声」として役立っています。
IEEEは、電機・電子工学およびコンピューターサイエンス分野における世界の文献の30%を出版、2000以上の現行標準を策定し、年間1800を超える国際会議を開催しています。
詳しくは http://www.ieee.org をご覧ください。
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