オランダ絵画の特別展「マンハッタン・マスターズ」 マウリッツハウス王立美術館で開催 ニューヨークのフリックコレクションから10点を展示
今年、美術館として創立200周年を迎えるオランダ・ハーグのマウリッツハウス王立美術館では、200周年記念事業を締めくくる最後の特別展として、ニューヨークのフリックコレクション10点からなるオランダ絵画の特別展「マンハッタン・マスターズ」を開催します。
詳細URL: https://www.mauritshuis.nl/
これらの所蔵作品をフリックコレクションが貸し出すのは初めてで、フリックコレクションの改装工事に伴い実現しました。その中でも、レンブラントが1658年に描いた「自画像」は、彼の自画像の中でも最高傑作と言われています。
1889年から1909年までマウリッツハウスの館長を務め、レンブラントの研究者でもあったアブラハム・ブレディウスは、ニューヨークを訪れた際、「フリックコレクションを鑑賞できたのは人生最大の幸せだ。レンブラントが描いた自画像の中でも、この『自画像』は画家のほぼ等身大で描かれ、着座した右手には杖が握られている。自信たっぷりに、まるで『我こそ王なり』と言っているような印象を与える」と1913年に書き残しています。
■夢のレンブラント
レンブラントの「自画像」(1658年作)は今回の特別展のハイライトです。特別展に出品される絵画作品の中でも最大の大きさ(134×104cm)で、生涯レンブラントが描いた40点余りの自画像の中でも傑出した作品です。レンブラントがこの自画像を描いたのは52歳の時で、彼の人生の苦難の時期と重なっています。その2年前に破産を経験し、自身のコレクションと住居兼アトリエを競売にかけられ、そして引越し。そんな最中に描かれたこの自画像で彼は、オリエンタルな紋様の入った時代遅れの16世紀の衣装を身にまとい、まるで、自分を過去の遺物と自嘲しているかのようです。画家としての帽子やパレットは描かれていませんが、金糸を紡いだローブには意味があります。ヤン・ゴッサートやルーカス・ファン・レイデンなどの16世紀の高名な画家たちが競って金色のローブを纏っていたという事実をレンブラントは、カレル・ファン・マンダーの著書「画家の書」を読んで、当然ながら知っていたのです。
■2つの国際的な絵画コレクション
フリックコレクションとマウリッツハウスは長年に亘り協力関係を築いてきました。マウリッツハウスが改装工事で閉館中の2013年には、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」とカレル・ファブリティウスの「五色ヒワ」を含む作品が、フリックコレクションに貸し出されました。2015年には、マウリッツハウスで開催された特別展「フリックコレクション - ニューヨークからの至宝」に36点が貸し出されました。この時は、絵画作品だけでなく、ヘンリー・クレイ・フリックの死後、収集された素描、彫刻、骨董品などが大西洋を渡りました。今年はフリックコレクションのトップコレクションからなる作品が出品されます。10点の内9点は、ヨーロッパへの初めての里帰りとなります。
■マンハッタン・マスターズ
2022年9月29日 - 2023年1月15日
■フリックコレクション
フリックコレクションは、石炭と鉄鋼で財を成した実業家、ヘンリー・クレイ・フリック(1849-1919)により創立。熱心なアートコレクターでもあったフリックは、1914年にニューヨークのセントラルパークを見渡す彼の自宅に彼のコレクションを収蔵。彼の未亡人の死後、1935年に美術館として開館しました。マウリッツハウスも元々は居住用の館として建てられた建物です。世界的に有名な巨匠たちの作品に触れ、過去にタイムスリップできるのも、この類い稀なふたつの美術館の共通した楽しみです。
■マウリッツハウス王立美術館
オランダ・ハーグ市
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