伝統文化ポーラ賞受賞者記念展「Birth~それぞれの始まり~」 開催のお知らせ
2022.11.01 09:30
公益財団法人 ポーラ伝統文化振興財団(理事長:小西 尚子)は、事業の一環である『伝統文化ポーラ賞』の令和4年度各受賞者を紹介する記念展を開催いたします。
この「伝統文化ポーラ賞」は、伝統工芸技術、伝統芸能、民俗芸能・行事など、無形の伝統文化の分野で貢献され、今後も活躍が期待される個人・団体に対し、更なる活躍と業績の向上を奨励することを目的としており、今年度で42回目を迎えます。今年度は優秀賞2件、奨励賞1件、地域賞5件となります。
記念展「Birth~それぞれの始まり~」は、12月10日(土)から12月18日(日)まで「ポーラ ミュージアム アネックス」(東京都中央区銀座1-7-7 POLA銀座ビル3F)にて開催いたします。(入場無料)
また、文化庁都倉長官迎えての「第42回伝統文化ポーラ賞」贈呈式・懇親会を12月13日(火)13:30~15:30「ザ・ペニンシュラ東京」(東京都千代田区有楽町1-8-1)にて行います。
【第42回伝統文化ポーラ賞受賞者記念展 「Birth~それぞれの始まり~」】
◆会期 :2022年12月10日(土)~12月18日(日)
11:00~19:00(入場は18:30まで)
◆会場 :ポーラ ミュージアム アネックス
◆所在地:東京都中央区銀座1-7-7 POLA銀座ビル3F
第42回伝統文化ポーラ賞受賞者記念展「Birth~それぞれの始まり~」
【第42回伝統文化ポーラ賞受賞者】
1. 優秀賞
分野 :工芸
受賞者 :川口 清三(かわぐち せいぞう)
都道府県:愛知県
受賞内容:木工芸の制作・伝承
分野 :芸能
受賞者 :川口 清次(かわぐち せいじ)
都道府県:千葉県
受賞内容:歌舞伎鬘の製作
2. 奨励賞
分野 :工芸
受賞者 :佐藤 典克(さとう のりかつ)
都道府県:神奈川県
受賞内容:白磁の制作・伝承
3. 地域賞
分野 :芸能
受賞者 :秋田市太平山谷番楽保存会(あきたしたいへいやまやばんがくほぞんかい)
都道府県:秋田県
受賞内容:太平山谷番楽の保存・伝承
分野 :工芸
受賞者 :大子那須楮保存会(だいごなすこうぞほぞんかい)
都道府県:茨城県
受賞内容:大子那須楮の生産・加工
分野 :芸能
受賞者 :下間久里獅子舞連中(しもまくりししまいれんちゅう)
都道府県:埼玉県
受賞内容:下間久里獅子舞の保存・継承
分野 :工芸
受賞者 :木戸口 武夫(きどぐち たけお)
都道府県:福井県
受賞内容:研炭の製造・伝承
分野 :芸能
受賞者 :御松囃子御能保存会(おんまつばやしおのうほぞんかい)
都道府県:熊本県
受賞内容:菊池の松囃子(御松囃子御能)の保存・伝承
【第42回伝統文化ポーラ賞 贈呈式・懇親会】
◆日時 :2022年12月13日(火) 13:30~15:30
◆会場 :ザ・ペニンシュラ東京 ザ・グランドボールルーム
◆所在地:東京都千代田区有楽町1-8-1
※3年ぶりに文化庁:都倉長官をお迎えし、受賞者とその関係者が出席しての贈呈式・懇親会の開催となります。マスコミ、メディア関係者におかれましては、受賞者への取材等、よろしくお願いいたします。
優秀賞:川口 清三「木工芸の制作・伝承」(愛知県)
■受賞内容について
森林を豊富に有する日本では、建築や家具、生活用具、工芸品などをつくるための素材として古くから木材が用いられてきました。木工芸の伝統技法には、刳物(くりもの)、挽物(ひきもの)、曲物(まげもの)、指物(さしもの)、結物(ゆいもの)などがあります。なかでも歴史的にもっとも古い「刳物」は、鑿(のみ)や鉋(かんな)を用いて木の塊を刳り出す手法で、複雑な曲線や丸みのある形を自在に削り出すことで、盆、皿、鉢、箱などがつくられます。木工芸は技術的・芸術的にも優れた日本独自の工芸として発展しており、木工作家たちによる多彩な作品が生み出されてきました。
川口 清三氏 制作風景
優秀賞:川口 清次「歌舞伎鬘の製作」(千葉県)
■受賞内容について
川口 清次氏は、鬘師としての高度な技術を保持し、かつ豊富な経験を有することから、著名な歌舞伎俳優や歌舞伎床山など、関係者から厚い信頼が寄せられます。その都度役者に合わせて調整するきめ細やかな仕事で、月に約30~40人もの役者の鬘合わせを手掛けます。令和2年10月には、重要無形文化財「歌舞伎」の伝承を支えるうえで、保存の措置を講ずる必要があるものとして、文化庁によって「選定保存技術」の保持者に認定されました。
川口 清次氏 製作風景
奨励賞:佐藤 典克「白磁の制作・伝承」(神奈川県)
■受賞内容について
白い素地に透明の釉薬をかけて高温で焼き上げたものを「白磁」と呼びます。白磁の起源は6世紀、南北朝時代の中国に遡るとされ、日本には朝鮮半島から渡来した陶工によって17世紀初頭にその製法が伝えられたとされます。後に有田の泉山(佐賀県)で良質な白磁石が発見されたことから磁器の量産が始まり、絵付けを施した色絵磁器もつくられるようになりました。明治以降には白磁の美を追求する陶芸家たちが現れます。清時代の磁器から影響を受けつつも浮き彫りによって文様を施すなど、白磁特有の優れた作品がつくられました。
佐藤 典克氏 制作風景
地域賞:秋田市太平山谷番楽保存会「太平山谷番楽の保存・伝承」(秋田県)
■受賞内容について
日本海に面した秋田県・山形県に伝承されている神楽を番楽と呼びます。太平山谷番楽は、太平山の山岳信仰に密接に関係する芸能で、中世末期から近世初頭にかけて、修験者(修験道の修行者、山伏)が伝えたといわれています。生面神社(せいめんじんじゃ)の御神体である「お面」を用いて演じられ、所作にも古い時代の要素が多く残るとされています。かつては表裏24番の演目があったといいますが、現在は「露払い」「三番叟」「神舞」「五条橋」の四演目が継承されています。
秋田市太平山谷番楽保存会 「五条橋」牛若の演技
地域賞:大子那須楮保存会「大子那須楮の生産・加工」(茨城県)
■受賞内容について
茨城県大子町では、水はけの良い斜面地と一年を通じて昼夜の寒暖差が大きい気候などを生かして古くから楮が栽培されてきました。江戸時代には水戸藩二代目藩主・徳川 光圀によって楮の植栽が奨励され、地域の特産品へと発展。栃木県那須地域の問屋を通じて全国に流通していたことなどから「那須楮」と呼ばれ取引されるようになりました。
大子産の楮は繊維が細く緻密であるため、絹のような光沢のある上質な和紙に仕上がります。こうした品質の良さからも、岐阜県美濃市の「本美濃紙」や福井県越前市の「越前和紙」の原料としても使われており、伝統的な「手漉き和紙」の生産になくてはならない素材となっています。楮の育成と加工は手作業で行われます。加工工程のなかでも、楮を蒸した後、一本一本を専用の小刀を使い表皮(黒皮と甘皮)を取り除く作業には、熟練した技術を要します。
大子那須保存会 加工風景(蒸し作業)
地域賞:下間久里獅子舞連中「下間久里獅子舞の保存・継承」(埼玉県)
■受賞内容について
下間久里獅子舞は、越谷市下間久里の香取神社において、毎年7月第3日曜日に行われる獅子舞です。太夫獅子・中獅子・女獅子が登場する、いわゆる三匹獅子舞の典型的な形式であり、演者は揃いの衣装で袴をはき、腹部に太鼓をつけ、3頭一組になって舞います。また、獅子に太夫や花笠、笛吹きなど、総勢30人程が付き添い、地区内の各家々をまわり、悪疫退散・家内安全・無病息災・五穀豊穣などを祈念して芸を披露する点も特徴的です。
下間久里獅子舞連中 神社奉納舞
地域賞:木戸口 武夫「研炭の製造・伝承」(福井県)
■受賞内容について
木炭は、古くから燃料として使われるだけでなく漆芸品や金工品の制作に欠かせない研磨道具として用いられてきました。こうした木炭を「研炭(とぎすみ)」といい、現在は、駿河炭(するがずみ)、朴炭(ほおずみ)、呂色炭(ろいろずみ)、椿炭(つばきずみ)の四種類が研炭として使われています。
駿河炭の原料であるアブラギリは、トクダイグサ科の落葉高木で、種子から油が取れることからも、日本では戦前から戦後にかけて盛んに植林されました。明治10年頃、駿河漆器の生産業者によってアブラギリからの研炭製造がはじまった後に広く使用されるようになったことから「駿河炭」と呼ばれるようになりました。大正時代以降は静岡県での製造は衰退しましたが、原木が豊富にあった福井県や石川県で製造されるようになりました。
四種類の研炭は、原木・製炭方法・研磨用途が異なります。
この四種すべての製造技術を継承しているのが木戸口 武夫氏です。
木戸口 武夫氏 炭出し作業
地域賞:御松囃子御能保存会「菊池の松囃子(御松囃子御能)の保存・伝承」(熊本県)
■受賞内容について
「御松囃子御能」は、毎年10月13日、菊池神社の秋季大祭で奉納される、囃子にのせた厳かで優雅な舞です。当日は御松囃子御能の他、能の仕舞や狂言、子どもを演者とした狂言小舞も奉納されます。松囃子とは、もともとは神の依代(よりしろ)としての松を家に迎えることで、祝儀の芸能となっていきましたが、この芸能は、地域に根づいた松囃子として貴重な芸能です。平成10年には、「菊池の松囃子」として国指定重要無形民俗文化財に指定されました。
御松囃子御能保存会 笹野の舞
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