「ESG時代の日本企業における品質意識とマネジメント」 アンケート調査を実施 企業成長の源泉は品質競争力と認識しつつも、 従業員の品質意識の把握は上場企業でも僅か2割
2022.10.27 09:00
株式会社日本能率協会総合研究所(JMAR、代表取締役社長:譲原 正昭)では、日本企業における品質意識とマネジメントの実態を明らかにすることを目的として、「ESG時代の日本企業における品質意識とマネジメント」アンケート調査を行いました。(無料レポート https://jmar-im.com/report_esg_qm/ )
<調査結果のポイント>
1. 約8割の企業が、「品質競争力」を重視している
2. 約8割の企業が「品質マネジメントの定量的な評価(KPI)」を行うが、「品質意識の定量的な評価」は2割にとどまる
3. 「従業員の品質意識」には懸念があり、その把握と向上の重要性は99%が認識しているが、取り組みは不十分
4. 品質保証の取り組み課題では、「人的な課題(品質マネジメント人材の確保・育成と従業員の品質意識)」が顕著に高く、「事業部・拠点の差異とそのマネジメントの課題」が続く
5. 「事業部・拠点の差異とそのマネジメントの課題」の背景には、意識・風土のバラツキや部門間連携・コミュニケーションの問題も見られる
6. 「自社のマテリアリティに品質のテーマを位置づけている」企業は7割に達しているが、「品質マネジメント状況を外部開示はしている」企業は2割強にとどまる
<調査結果についてのコメント>
先進国の中で唯一の低成長国となり、日本企業の品質の国際競争力が懸念される昨今、多くの企業で品質問題が発生しており、従来以上に品質マネジメントは重要となっています。
今回の調査では、多くの企業が品質マネジメントに取り組み、定量的な評価(KPI)を行う反面、従業員の品質意識の重要性を認識しつつも、取り組みは十分でない状況がうかがえました。品質の競争力向上と品質問題の未然防止には、今後は従業員の品質意識向上への注力も必要と考えられます。
また、上場企業では企業経営におけるESG情報の重要性が高まる中、品質マネジメントの分野ではサステナビリティ関連情報として統合報告書等で外部開示する企業は少数派です。しかし、今後は開示を求められる企業は増える可能性があり、万一品質問題が発生した場合は改善のエビデンスも必要となります。その際に「良好な品質を安定的に生み出せる組織」であることを示すには、従来の品質基準を満たすだけでなく、品質意識の高さも求められていく可能性があります。
今回の調査結果から上場企業の品質保証部門責任者の認識を参考にしていただくとともに、責任者以外の方の品質の認識にも目を向けていく機会になればと考えております。仮に同じ企業の中でも職位・担当業務等で品質の認識には幅があると想定され、その確認も行うことで、より自社に適した取り組みを行う企業が増えれば幸いです。
<調査概要>
調査名称 :「ESG時代の日本企業における品質意識とマネジメント」
アンケート調査
調査対象 :製造業を中心とした上場企業の品質保証部門の責任者
調査期間 :2022年8月2日~9月7日
調査方法 :インターネット調査
企画・実施:株式会社日本能率協会総合研究所(JMAR)
<調査結果>
1. 約8割の企業が、「品質競争力」を重視している
・「品質の競争力が企業成長に結びついている」という考えについては、肯定割合が約8割に達している。
上場企業では、品質競争力が重視されていることがうかがえる。
図1
2. 約8割の企業が「品質マネジメントの定量的な評価(KPI)」を行うが、「品質意識の定量的な評価」は2割にとどまる
・品質マネジメントにあたり、「品質方針」「品質目標」を設定している企業は9割を超えている。
設定するだけにとどめず、「定量的な評価(KPI)」も行っている企業は8割近い。
・しかし、「従業員の品質意識の定量的な評価」を行っている企業は2割にすぎず、品質意識に関する現状把握は十分ではないことがうかがえる。
図2
3. 「従業員の品質意識」には懸念があり、その把握と向上の重要性は99%が認識しているが、取り組みは不十分
・品質に関して、「従業員に、自社の品質規定・基準の遵守は浸透している」の肯定割合は3/4に達している。
・しかし、「品質よりも、コストや納期が優先されることはない」「従業員の品質意識や風土は、拠点や製品・サービス、職種によるバラツキはない」では否定割合も目立ち、特に後者は否定割合が肯定割合を上回っている。
ここから、社内の品質意識への懸念がうかがえる。
図3
・「従業員の品質意識の把握、向上は、品質の競争力の維持・向上に重要である」は、99%が肯定している。
・前述したように、「従業員の品質意識の定量的な評価」をしている企業は2割にすぎないが、その重要性は認識されていることがうかがえる。
図4
・品質保証部門の取り組み課題では、「品質に関する知識習得の支援」に次いで、「品質意識向上の支援」も約6割に達している。
ここから、「品質意識」は品質保証部門からの支援強化が必要な状況であることが、うかがえる。
図5
4. 品質保証の取り組み課題では、「★人的な課題(品質マネジメント人材の確保・育成と従業員の品質意識)」が顕著に高く、「☆事業部・拠点の差異とそのマネジメントの課題」が続く
・自社の品質保証の取り組みについての課題は、「品質マネジメントのための人材確保、育成」がトップで、「従業員の品質への考え方、意識」も7割近い。
人的な課題は、多くの企業に共通するテーマとなっていることがうかがえる。
・上記に続くのは、「事業部や拠点ごとの品質保証の施策の実践度合い、バラツキ」「事業部や拠点の特性が異なる中での全社的な品質マネジメント」等であり、事業部・拠点の差異を捉えつつ、いかにその品質マネジメントを行っていくかがテーマとなっている。
図6
5.「事業部・拠点の差異とそのマネジメントの課題」の背景には、意識・風土のバラツキや部門間連携・コミュニケーションの問題も見られる
・前述した「事業部・拠点の差異とそのマネジメントの課題」に関連して、「従業員の品質意識や風土は、拠点や製品・サービス、職種によるバラツキはない」で否定割合が高い(再掲)他、「品質の維持・向上のために、他部門とも連携しようとする風土がある」「本社と事業部や拠点の品質部門は、十分なコミュニケーションが図れている」でも否定割合は1割を超えており、事業部・拠点の違いと壁の存在に悩む企業の存在がうかがえる。
図7
6.「自社のマテリアリティに品質のテーマを位置づけている」企業は7割に達しているが、「品質マネジメント状況を外部開示はしている」企業は2割強にとどまる
・ESG推進におけるマテリアリティ(重要課題)の特定について、品質に関するテーマを位置づけている企業は7割に達しており、上場企業で品質が重視されていることはうかがえる。
しかし、現段階では「品質マネジメントの状況を外部に開示(統合報告書等)」は、2割強にとどまっている。
図8
<株式会社日本能率協会総合研究所>
株式会社日本能率協会総合研究所は、お客様の課題解決を使命とする日本能率協会グループの調査・研究機関として、専門性に裏打ちされた確かなリサーチを提供しています。民間企業や大学、公共機関のお客様に、インターネット調査、紙媒体(郵送・FAX)調査等、さまざまなリサーチを長年ご利用いただいております。
所在地 : 東京都港区芝公園3-1-22
日本能率協会ビル5F
代表 : 代表取締役社長 譲原 正昭
設立日 : 1984年4月
事業内容: 官公庁の政策立案・計画立案のための調査研究、
民間企業のマーケティング、コンサルティング、
会員制のビジネス情報提供サービス
URL : https://www.jmar.co.jp
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