「郡上踊」「寒水の掛踊」がユネスコ無形文化遺産に登録 ~岐阜県・郡上市で伝統的に踊り継がれてきた2つの踊り~
全国24都府県41件の盆踊りや念仏踊りなどの“風流踊”が対象
岐阜県郡上市で伝統的に踊り継がれてきた「郡上踊」「寒水の掛踊」が2022年11月30日(日本時間)、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。今回の登録は伝統的な盆踊りや念仏踊りなどで構成される全国24都府県41件の「風流踊」としての採択で、衣裳や持ちものに趣向をこらして、歌や笛、太鼓、鉦(かね)などに合わせて踊る民俗芸能です。
岐阜県内で登録されたユネスコ無形文化遺産は、2014年の本美濃紙を含む「和紙:日本の手漉和紙技術」、2016年の高山祭の屋台行事、古川祭の起し太鼓・屋台行事、大垣祭のやま行事を含む「山・鉾・屋台行事」に続く3例目となります。
◆郡上踊(ぐじょうおどり)/岐阜県郡上市八幡町
郡上踊は、例年7月中旬~9月上旬までの間、約30数夜に渡って岐阜県郡上市八幡町市街地一帯でおこなわれる盆踊りで、日本三大盆踊りのひとつです。特に、8月13日~16日の4日間でおこなわれる徹夜おどりは、全国から毎年多くの踊り客達が集い、浴衣姿で下駄を鳴らし、翌朝まで夜通し踊ります。観光客も地元の人もひとつ輪になって踊る楽しさがあります。1996年に国重要無形民俗文化財に指定。
◆寒水の掛踊(かのみずのかけおどり)/岐阜県郡上市明宝寒水
寒水の掛踊は、岐阜県郡上市明宝の寒水地区に伝承される太鼓踊りで、毎年9月第2日曜日とその前日の寒水白山神社例祭で奉納されます。シナイと呼ばれる大きな花飾りを背負い、太鼓と鉦を打ちつつ躍動的に踊る拍子打ちをはじめ、様々な扮装をした役者や、歌い手を寒水の人々が総出で務め、旧家の庭先や神社境内で歌い踊る大規模な芸能です。2021年に国重要無形民俗文化財に指定。
◆ユネスコ無形文化遺産登録記念セレモニーの様子
ユネスコ無形文化遺産への登録決定を受け、岐阜県庁では登録記念セレモニーが行われました。当日は、郡上市関係者、郡上おどり保存会、寒水掛踊保存会らと喜びを分かち合い、各保存会によるおどりの実演も行われました。
古田肇岐阜県知事は、「『郡上踊』は約400年、『寒水の掛踊』は約300年、地域に伝統文化として延々と大切に引き継がれてきました。先達の方々に改めて、心から感謝を申し上げますとともに、これを気に、この風流踊を私たちも大切に保存し、未来に引き継いでいきたい」と挨拶しました。
【参考】郡上踊・寒水の掛踊について
◆郡上踊(ぐじょうおどり)/岐阜県郡上市八幡町
「郡上の八幡出てゆく時は、雨も降らぬに袖しぼる」の歌詞で知られる郡上踊は400年以上にわたって唄い踊り継がれてきたといわれています。江戸時代の初期に八幡城主・遠藤慶隆(えんどうよしたか)が領民の融和を図るため、藩内各所の踊りを城下町に集め、奨励したことが今に残る礎になったと伝えられています。
郡上踊は観光客も地元の人もひとつ輪になって踊る楽しさがあります。これが「見るおどり」ではなく「参加するおどり」といわれる理由です。7月中旬から9月上旬にかけて30夜以上にわたって踊られ、日本一のロングランの盆おどりと言われます。踊り会場はひと夏で市街地を一巡し、城下の町並みの中や辻の広場で踊る日もあれば、昔ながらに神社の境内が会場になる日もあります。令和2~3年は新型コロナウイルスの影響により全日程中止となっていましたが、令和4年は3年ぶりに開催され、感染症対策を行う中で大いに盛り上がりました。
平成から令和への改元の際には、新しい時代を祝おうと特別におどりが催され、1万5,000人もの人が集まりました。
最も盛り上がる徹夜おどりは、8月13日~16日の4日間です。通常のおどりは午後11時には終了しますが、この4夜だけは夜8時に始まり、翌朝5時頃まで踊り明かします。老若男女を問わず毎年多くの踊り子達が浴衣姿に下駄を鳴らして全国から集い、日本三大盆踊りのひとつにも数えられます。
(参考)郡上八幡観光協会HP: http://www.gujohachiman.com/kanko/odori.html
◆寒水の掛踊(かのみずのかけおどり)/岐阜県郡上市明宝寒水
寒水の掛踊は、寒水地区に伝承される太鼓踊りで、毎年9月第2日曜日とその前日の寒水白山神社例祭で奉納されます。かつては旧暦8月1日に奉納され「八朔(はっさく)祭り」とも呼ばれていました。寒水の人々が総出で役者を務め、地域の貴重な伝統行事として今に至るまで守り継がれています。
当日は、シナイと呼ばれる長さ約3.6mの竹製の花飾りを背負った拍子打ちのほか、悪魔払や笛吹、薙刀振、花笠や奴(やっこ)などに扮した役者が列をなし、白山神社を目指して鳴り物入りで練り歩きます。
最後は白山神社の拝殿前にて、拍子打ちが太鼓や鉦を打ち鳴らしながら、シナイで地面を払うようにして豪快に舞い踊ります。この際に振り落とされた花はお守りとして持ち帰られ、大切に飾られます。
言い伝えによれば、寒水の掛踊は宝永6(1709)年に隣村の母袋(もたい)村から伝わったとされ、掛踊とともに伝わったという十一面観音像や、神社建立の棟札が残っています。明治の末頃までは、毎年掛踊の日に母袋村の声自慢が数人、峠を越えて踊りに来て、社前で寒水の人たちと一緒に輪になり、歌の掛け合いをして踊ったといいます。
(参考)明宝観光協会HP: http://www.gujomeiho.jp/about2_1.html
■世界に誇る岐阜県の遺産
◎ユネスコ世界文化遺産
白川郷合掌造り集落
白川郷の合掌造り集落は、厳しい気候風土を耐え抜く先人の知恵が詰まった独特の家屋が遺る村落。この地では、伝統的な農村文化が守られ、合掌造り集落は「生きた世界遺産」として、現在も人々の生活の場として使われている。
◎ユネスコ無形文化遺産
本美濃紙
本美濃紙は、1,300年余りの歴史を誇り、奈良の正倉院には大宝2年の美濃の国の戸籍用紙が所蔵されている。その柔らか味のある温雅な紙色と繊維が縦横に整然と絡み合う美しさは、伝統の技とともに、今も受け継がれている。
山・鉾・屋台行事<高山祭の屋台行事>
高山祭は、春の山王祭と八幡祭の総称で、日本三大美祭の一つに数えられる。「動く陽明門」とも称される匠の技を凝らした華麗な祭り屋台が、春には12台、秋には11台ひき揃えられ、夜には屋台それぞれに100個にも及ぶ提灯を灯し、艶やかな夜の闇を彩る。
山・鉾・屋台行事<古川祭の起し太鼓・屋台行事>
古川祭は、勇壮な起し太鼓と豪華な屋台巡行の「動」と「静」の魅力が共存する春の神事。天下の奇祭といわれる起し太鼓は、80センチの大太鼓を据えたやぐらを数百人のさらし姿の裸男たちがかつぎ、町を巡行する。
山・鉾・屋台行事<大垣祭のやま行事>
大垣祭は、360年余り続く城下町の祭礼。藩主下賜(はんしゅかし)のやまと町衆のやまが併存する形態は、全国的にも希少。全13両のやまがにぎやかにひき出され、人形からくりや舞踊を披露するなど華麗な祭絵巻が展開される。
◎ICID世界かんがい施設遺産
曽代用水
曽代用水(そだいようすい)は、関、美濃両市の農地約1,000ヘクタールを潤す、幹線延長約17キロメートルの農業用水路。江戸時代前期、幕府や藩に頼ることなく地元の豪農ら3人が私財を投じ、10年の歳月をかけて完成させた。
◎FAO世界農業遺産
清流長良川の鮎
長良川は、流域86万人のくらしの中で清流が保たれ、地域の歴史、文化、経済と深くつながっている。この長良川と清流の象徴である鮎を通じて、人々の生活、水環境、漁業資源が連環している岐阜県ならではの仕組みが評価され、「清流長良川の鮎」として世界農業遺産に認定された。
(参考)岐阜県HP: https://www.pref.gifu.lg.jp/page/15178.html
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