アスパラガスの雌雄間差を日本の主要な3つの作型で比較 雌株は雄株に比べて太いアスパラガスを収穫できることが判明
明治大学 農学部 農学科の野菜園芸学研究室(元木悟教授、岡田和樹、今井俊平、田口巧)と東北大学 大学院 生命科学研究科の菅野明准教授は、日本の主要な3つの作型において、新品種を含むグリーンおよびムラサキアスパラガス数品種の雌雄間差を解析しました。その結果、若茎(可食部のこと)の1茎重および収量は、2つの作型において、雌株が雄株と同等か有意に高いことを明らかにしました。今後、アスパラガス生産者の収益向上に役立てることができると考えます。
アスパラガス(Asparagus officinalis L.)は、雌雄異株の多年生植物です。近年、太いアスパラガスは、ボリュームや食味などから評価が高まっており、高単価で取引されます。そのため、アスパラガスの1茎重および収量を増加させることができれば、生産者の収益向上につながります。
アスパラガスの1茎重および収量の雌雄間差について調査した先行研究はいくつかあるものの、いずれも品種が古く、研究ごとに結果が異なるという問題がありました。
そこで本研究では、日本の主要な作型である露地長期どり栽培、ハウス半促成長期どり栽培および伏せ込み促成栽培の3つの作型において、従来品種に加え、新品種を含むグリーンおよびムラサキアスパラガス数品種を供試し、アスパラガスの生育および収量の雌雄間差を解析しました。
雌雄間差の栽培試験の実施前には、東北大学大学院の菅野准教授らが開発した新技術(DOI:http://doi.org/10.1007/s10681-013-1048-2)を用い、アスパラガスの幼苗のDNAをPCRで解析することにより雌雄判別を行いました。
その結果、露地長期どり栽培およびハウス半促成長期どり栽培の2つの長期作型において、1茎重および収量は雌株が雄株と同等か有意に高く、雌株の利用により単価の高い太いアスパラガスの収量が増える可能性が示唆されました。
一方、伏せ込み促成栽培では、1茎重および収量に雌雄間差が認められませんでした。雌雄間で休眠打破に必要な低温遭遇時間が異なること、栽培期間が短いことが原因であると考えます。そのため、伏せ込み促成栽培においても、性別ごとに低温遭遇時間を変えれば、雌株の利用により太い若茎が収穫できる可能性があります。
以上から、アスパラガスの栽培における雌株の利用は、生産者の収益向上につながる可能性があるものの、植物の雌雄判別にかかる時間や費用などが課題です。雌雄判別法の低コスト化は、現在、本研究開始時に比べて進んでおり、本研究成果は雌雄判別技術の進歩とともに生産現場に普及していくと考えます。
本研究成果は、2022年10月20日に米国の園芸学会誌「HortScience」誌に論文が掲載され、さらに、2023年1月12日には、American Society for Horticultural Scienceのプレスリリースにおいて研究内容が紹介されました。
Effects of Cultivar and Cropping Type on the Growth and Yield of Female and Male Asparagus Plants
S. Motoki, K. Okada, S. Imai, T. Taguchi, A. Kanno, HortScience (DOI: http://doi.org/10.21273/HORTSCI16786-22)
American Society for Horticultural Scienceのプレスリリース:
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