山岳トンネル工事で超高強度吹付けコンクリートを初めて適用 - 脆弱地山における支保部材の高強度化により安定した掘削を実現 -
安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:国谷 一彦)は、脆弱地山において掘削される山岳トンネルの安定確保を目的として、デンカ株式会社の協力のもと設計基準強度54N/mm2の超高強度吹付けコンクリートを開発し、国土交通省中部地方整備局発注の平成30年度三遠南信池島トンネル本坑工事(注1)に初めて適用しました。
本工事は中央構造線(注2)近傍の脆弱な地山を貫く山岳トンネルで、高規格鋼製支保工および高耐力ロックボルトを組み合わせた二重支保工を採用しています(写真1)。この二重支保工の吹付けコンクリートに超高強度吹付けコンクリートを適用することで、支保工に変状が発生することを防止でき、トンネルの安定を確保しながら掘削を進めています(写真2)。
1. 適用現場の概要
青崩峠トンネル(仮称)は、三遠南信自動車道(注3)のうち長野県と静岡県の県境に位置する全長4,998mの2車線の道路トンネルです。本トンネルは、中央構造線近傍の脆弱な地山に建設されることから、国内で最難関のトンネル工事の一つとされています。
平成30年度三遠南信池島トンネル本坑工事は、青崩峠トンネル(仮称)のうち、静岡県側の2,144mを建設する工事です(図1)。本工事は、最大土被り約600mの大土被りのトンネル工事であることに加え、国内最大の断層である中央構造線に対して離隔距離約500mで平行に位置するため、断層運動の影響を受けた複雑な地質がトンネル全線にわたって出現し、工事の難航が想定されていました。今回、大土被りとなる坑口から1,770m以降では、二重支保工を用いた特殊支保パターンを採用しています。
2023年1月、トンネル掘削が土被り約600mの脆弱な断層破砕帯に突入することから、支保工の耐力をさらに高める必要がありました。
2. 超高強度吹付けコンクリート
超高強度吹付けコンクリートは、設計基準強度54N/mm2の吹付けコンクリートで、一般的に用いられる普通強度の吹付けコンクリートの3倍(設計基準強度18N/mm2)、高強度吹付けコンクリートの1.5倍(設計基準強度36N/mm2)の強度を有しています。
一般的に、強度を大幅に高めるためには水セメント比を小さく設定する必要があるため、コンクリートの粘性が増加し、吹付けコンクリートの施工性が低下します。今回開発した超高強度吹付けコンクリートの配合設計にあたっては、当社が保有する「大容量・低リバウンド吹付けコンクリートシステム(注4)」で培った配合設計方法をもとに、最適な施工性が得られるコンクリート配合に設定しました(写真3)。これにより、従来と同等の施工性を確保するとともに、強度を大幅に高めることが可能となりました。
3.適用結果
実施工において、コンクリートの実吐出量は18m3/hr程度、リバウンド率16%程度であり、従来と比較して施工性を落とすことなく施工できることを確認しました。
強度試験結果についても、実施工適用後の一軸圧縮強度の平均値は63.8N/mm2となっており、これまで使用してきた高強度吹付けコンクリートの1.5倍程度の強度を安定して確保できました(図2)。これにより、トンネル掘削時の地山からの押出しによる吹付けコンクリートのひび割れといった変状の発生を防止できました。
4. 今後の展開
本工事のように、地山条件が悪く、大きな変状が発生することが想定されるトンネル工事を中心に展開し、工事のさらなる品質向上を目指していきます。
(注1)工事概要
工事名 :平成30年度三遠南信池島トンネル本坑工事
発注者 :国土交通省中部地方整備局
施工者 :安藤ハザマ
工期 :2018年8月10日~2025年3月24日
工事概要:トンネル施工延長2,144m、内空断面積67.9m2(標準部)
(注2)中央構造線
九州東部から関東へ横断する全長1,000kmを超える国内最大の断層
(注3)三遠南信自動車道 事業概要
長野県飯田市山本の中央自動車道を起点として、静岡県浜松市北区引左町の新東名高速道路までを結ぶ延長100kmの高規格幹線道路。新東名自動車道と中央自動車道を結ぶ広域ネットワークを構築するとともに、三遠南信地域の交流促進、連携強化、災害に強い道路機能の確保、救急医療活動の支援を目的として計画された道路であり、今後地域に大きな役割を果たすことが期待されている。
(注4)安藤ハザマ2017年10月17日リリース資料を参照
山岳トンネルにおける大容量・低リバウンド吹付けコンクリートシステムを開発
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