薄毛の原因メカニズムに、新たな発見! 「“女性の薄毛”は女性ホルモンの減少と直接関係する」可能性を確認
2013.05.14 13:30
ライオン株式会社(代表取締役社長・濱 逸夫)生命科学研究所は、順天堂大学・植木 理恵先任准教授と共同で“女性の薄毛”に関する研究を進め、この度、女性由来のヒト毛乳頭細胞に対して網羅的遺伝子解析を行ったところ、“女性の薄毛”の原因は、女性ホルモンが減少することで直接引き起こされる可能性を示す新たなデータを確認しました。
さらに、育毛有効成分「6-ベンジルアミノプリン(以下、「6-BA」と略す)」は“女性の薄毛”に対して、発毛促進と脱毛抑制の効果が期待できることを、細胞を用いた遺伝子レベルの解析で確認しました。
この研究成果に関連する内容は『第6回国際研究皮膚科学会( 2013年5月8日ポスター発表:イギリス・エジンバラ・Edinburgh International Conference Centre(EICC) )』で発表いたします。
-
図1 洗髪時の抜け毛本数(一人あたり)
1.研究の背景
当社は1980年代より育毛の研究を開始し、男性の薄毛の原因の一つとして、毛根におけるエネルギー不足があることを発見、エネルギー補給物質としてペンタデカン酸グリセリド(PDG)を見出しました。その後、育毛に有効な成分を効率よく頭皮に経皮吸収させる技術を開発、また2002年には世界で初めて男性型脱毛症の毛乳頭細胞の網羅的遺伝子解析を実施し、男性型脱毛症には、発毛促進シグナル「BMP、エフリン」の低下と脱毛シグナル「NT-4」の増加が関係していることを明らかにしました。さらに、育毛有効成分「6-BA」が「BMP、エフリン」の生成を増加させること、オキナワモズク抽出物が「NT-4」の生成を阻害することを発見するなど、生命科学の最先端技術をいち早く毛髪科学分野に応用した研究を行ってまいりました。
一方、2004年より“女性の薄毛”の原因を解明するための研究に着手、2005年には女性ホルモンにより「BMP」の発現が促進されることを確認しました。
この度、40-60代の薄毛が気になる女性を対象に、洗髪時の抜け毛について分析した結果、閉経後の女性は抜け毛が多くなる傾向があることから(図1)、閉経後の女性ホルモンの減少が女性の毛髪に何らかの影響を与えることを再確認しました。
そこで、“女性の薄毛”の原因をさらに解明するため女性ホルモンと毛髪の成長に関連する因子との関係について、順天堂大学・植木 理恵先任准教授と共同で、最新の網羅的遺伝子解析を用いて検討しました。
図1 洗髪時の抜け毛本数(一人あたり)
http://www.atpress.ne.jp/releases/35509/1_1.jpg
2.研究結果
1)網羅的遺伝子解析により、女性ホルモンで影響を受ける毛髪に関与する遺伝子約200個を特定
女性ホルモンで影響を受ける毛髪に関与する遺伝子を明らかにするため、女性由来のヒト毛乳頭細胞※1を用い、男性ホルモン非存在下で女性ホルモンの有無による網羅的遺伝子解析を行いました。この実験では、最新のDNAマイクロアレイ※2を用い、現在の分析技術で解析できる最多レベルの遺伝子(21,558個)を分析しました。
その結果、毛髪に関与し、女性ホルモンの有無で発現量が変動する遺伝子が203個あり、その内訳は、女性ホルモンの存在下で発現が増加する遺伝子(形態形成や細胞の増殖に関係する遺伝子)が122個、発現が低下する遺伝子(炎症やアポトーシス(細胞死)に関係する遺伝子)が81個であることを確認しました。
さらに、これらの中から毛の成長や薄毛と関連が高い遺伝子として、発毛を促進すると考えられる因子(発毛促進因子)「BMP2」「LEF1」「MSX2」「BCL2」など、脱毛を促進すると考えられる因子(脱毛因子)「IL1A」「FGF18」などを選定し(表1)、女性ホルモンの有無による変動をRT-PCR※3解析により定量的に調べました。
その結果、女性ホルモンが存在すると、発毛促進因子の中で「BMP2」「MSX2」「BCL2」が有意に増加し、脱毛因子「IL1A」が有意に減少することを確認しました(図2)。このことから、女性ホルモンの減少により、発毛促進因子の低下と脱毛因子の増加が起こり、それによって“女性の薄毛”が引き起こされる可能性が示唆されました。
この中で、「BMP2」は、それが機能しないと毛根が形成されなくなることが知られており、毛根の形成の鍵となる因子と考えられています。また、「IL1A」は、炎症性の因子で、毛の成長を抑制する作用やアポトーシス(細胞死)を誘導する作用が知られており、脱毛を引き起こす因子と考えられています。そこで、発毛促進因子として「BMP2」、脱毛因子として「IL1A」に着目して、さらに検討を進めました。
※1 毛根の基部に位置する毛球の中に存在し、毛の元となる毛母細胞に栄養やシグナルを与えて毛の成長を制御している細胞。
※2 小型の基板上にDNAの部分配列を高密度に配置し、細胞や組織での遺伝子の発現を網羅的に解析できるようにしたもの。
※3 細胞・組織における目的の遺伝子の発現量を定量化する方法。通常、DNAマイクロアレイによって得られた発現の変動を、定量性の高い本法にて検証する。
≪表1 DNAマイクロアレイの結果からRT-PCR解析サンプルに選定した遺伝子≫
https://www.atpress.ne.jp/releases/35509/1_5.pdf
図2 女性ホルモンによる遺伝子発現変動結果(定量的RT-PCR)
http://www.atpress.ne.jp/releases/35509/2_2.jpg
2)育毛有効成分「6-BA」が、“女性の薄毛”に効果的な作用がある可能性を発見
ヒト臨床試験にて育毛効果が認められている数種類の成分を、女性由来のヒト毛乳頭細胞に添加して、「BMP2」「IL1A」遺伝子の発現量をRT-PCRを用いて評価しました。
その結果、添加した成分の一つ「6-BA」は、発毛促進因子「BMP2」の発現量を増加させ、脱毛因子「IL1A」の発現量を抑制することが確認できました(図3)。
このことから「6-BA」は、女性ホルモンが減少することで引き起こされる“女性の薄毛”に、効果的な作用がある可能性を見出しました。
図3 BMP2、IL1A遺伝子発現に対する6-BAの効果
http://www.atpress.ne.jp/releases/35509/3_3.jpg
以上、女性ホルモンと“女性の薄毛”に関する研究の結果、以下の2点を見出しました。
(1)“女性の薄毛”は、女性ホルモンが減少するために発毛促進因子の低下と脱毛因子の増加が起こり、引き起こされる可能性
(2)育毛有効成分「6-BA」は、この“女性の薄毛”を引き起こすメカニズムに対して、発毛促進と脱毛抑制の両方に効果的な作用がある可能性
当社は今後、本研究の知見を応用し、“女性の薄毛”に対応する製品の開発を進めてまいります。
以上
【第6回国際研究皮膚科学会(IID)】発表概要
◎開催日:2013年5月8日-11日
◎会場 :Edinburgh International Conference Centre(EICC)
◎演題 :Transcriptome analysis of estrogen regulating factors in hair cycle(毛周期における女性ホルモンの作用の網羅的遺伝子解析)
◎発表者:尾林 裕子 1)、遠藤 雄二郎 1)、相澤 典子 1)、高橋 雅人 1)、
翠川 辰行 1)、芹澤 哲志 1)、村越 倫明 1)、植木 理恵 2) 3)
1)ライオン株式会社 生命科学研究所
2)順天堂大学 医学部皮膚科
3)順天堂東京江東高齢者医療センター
この企業のプレスリリース MORE
ライオン・男性の小用スタイルに関する実態調査2021 実験で判明!座り派のお家トイレは“フチ裏・便座裏”が汚れている
2021.08.17 11:00
乾燥肌治療薬ブランド「フェルゼア」から繊細な「顔の肌」を考えた“ヘパリン(※1)スキンケア”『フェルゼアプレミアム』シリーズ新発売
2021.07.27 14:45