「身近なところに京セラの技術」シリーズ 物流・食品ラベルで活躍するサーマルプリントヘッド 1983年に事業を開始し今年で40周年
2023.06.05 11:00
京セラは1983年にサーマルプリントヘッドの量産を開始し、本年で事業開始40周年を迎えます。現在、当社のサーマルプリントヘッドはグローバルで約50%※1のシェアを占める主力製品です。
サーマルプリントヘッドは、熱を利用したサーマル方式の画像出力機器(サーマルプリンタ)の印画部に搭載される基幹部品です。京セラ製のサーマルプリントヘッドは、高速・高画質・高品質という性能の高さに加え、プリンタメーカーの設計に合わせたカスタマイズ対応力と生産体制、そして長年の市場実績が評価され、主に物流、食品、小売、製造現場などで使用されるラベルや包装紙への印字に使用されています。
今後も、京セラはお客様の要望に応じたサーマルプリントヘッドの開発、普及を進めることでプリンタ業界に貢献してまいります。
※1:京セラ調べ(2022年)
京セラ製サーマルプリントヘッド
■京セラのサーマルプリントヘッド事業の歴史
本製品の事業は40年前に当社創業者の稲盛和夫が、“来る情報通信時代において、ファクシミリが普及するが、印字音が静かで簡易な機構の感熱記録方式(サーマル方式)が主流になる”と考えたことから始まりました。
単結晶サファイアの基板を用いたサーマルプリントヘッドの開発に着手し、その後、1979年10月に鹿児島県国分工場にて電子部品開発TH(サーマルヘッド)グループを発足させ、薄膜方式でのサーマルヘッド研究が本格化しました。1981年には、量産化に向け鹿児島エレクトロニクス株式会社へ工程を移設しました。そして、子会社であった同社を吸収合併し、「京セラ株式会社鹿児島隼人工場」を設立。鹿児島隼人工場は薄膜技術の拠点となり、同時にサーマル事業部が正式に誕生し、今日に至ります。
■京セラのサーマルプリントヘッド
サーマルプリントヘッドとは、蓄熱層上に複数の発熱体が一列に並び、その発熱体に電流が流れる際に発生する熱を印画媒体(感熱紙※2やインクリボン)に伝えることで印画するインクを使わないプリントヘッドです。
京セラでは、高速、高画質、高精度でさらに信頼性の高いプリントヘッドの開発に取り組んでおり、さまざまな業界で当社のプリントヘッドが搭載されたサーマルプリンタが採用されています。
※2:熱で変色する特殊紙
さまざまな業界で使用されるサーマルプリンタイメージ
京セラ製サーマルプリントヘッド詳細:
https://www.kyocera.co.jp/prdct/printing-devices/thermal-printheads/#products
<身近なところで使われている事例1:物流業界>
サーマルプリントヘッドは構造がシンプルなため、小型化や低コスト化が可能です。当社のサーマルプリントヘッドは、物流業界においても、宛先表示やトラッキング用ラベルなどを貼付する小型ハンディ機器などに多く活用されています。
今後Eコマースのさらなる拡大と人材不足が予測される物流業界において、在庫管理やサービスの省人化に貢献します。
<身近なところで使われている事例2:食品業界>
京セラのサーマルプリントヘッドは、インクを使用しない感熱紙方式や、インクリボンを使用する熱転写方式なので、インク滲みや飛び散り、インクの混入などが発生しません。そのため、加工食品パッケージ用の価格・材料表示ラベルや賞味期限ラベルなどの印字で多く使用され、食の安全を守っています。
当社の製品は、薄膜方式でヒーター配列が均一であり、ヒーター部分の温度上昇や降下の速さといった熱応答性に優れているため、柔らかい紙やプラスチック製のフィルムなどへの印字精度も高い製品です。
近年の世界的な人口増加により、2050年までに約1.7倍※3(2010年比)食品需要が増加すると言われています。それに伴い、食料品のラベル印字や日付印字は今後ますます拡大が見込まれる市場のひとつです。
※3:出典:農林水産省「2050年における世界の食料需給見通し」(2019年)
■本製品に関わる京セラの社員より
小型化や印字のスピード、品質向上などのニーズに応えるために
私はプリンティングデバイス事業部で米国向けの営業をしています。
私たちが手掛けるサーマルプリントヘッドは、プリンタの設計に合わせたカスタマイズ対応について、多くのプリンタメーカーさまにご好評いただいています。その中で、物流倉庫の在庫管理で使用されている小型で持ち運び可能なモバイルプリンタという機器があり、以前、このモバイルプリンタについて、あるプリンタメーカーさまから、新規のご依頼をいただきました。しかしそのご要望内容が、プリンタの小型化に伴うサイズ制約、業務効率化に伴う印字スピードアップ、印字品位向上に伴う構造変更など、当時の京セラでは取り揃えていないレベルの仕様で、新規の開発が必要でした。私たちはそのご要望事項に応えるため、エンジニアと共に提示可能なアイディアを議論し、お客さまと仕様協議を何度も重ね、ご要望に応える製品を開発し提供することが出来ました。
今後も、市場が移り変わる中で、私たちは全員で知恵を合わせた新製品の開発、新たな市場開拓を積極的に模索し、市場を牽引する京セラサーマルプリントヘッドを追い求めたいと思います。
社会インフラを支える製品の安定供給のために
サーマルプリントヘッドが搭載されるサーマルプリンタは、物流、小売り、製造現場、医療現場、各種カードなど社会インフラを支えています。そのため「製品を安定して供給する」ということは重要な使命の一つである、と考えています。
以前、私はサーマルプリントヘッドの駆動に用いられるドライバICという部品の開発を担当していました。半導体業界は開発期間が長いことと、技術進歩からくる量産品の生産終了が行われることから、その調達には技術的に大変苦労してきました。私はこの課題を解決すべく、設計、製造などの各部門と協力し、市況情報を広く集め、製造終了の知らせを受けてから新製品への部品の切り替えをすみやかに進められるように取り組み、部品の安定供給を実現しました。
現在は、ドライバICの開発を離れ、北米地域のお客さまを担当し、新たなサーマルプリントヘッドの製品を開発する立場になりました。直接、お客さまとコミュニケーションをとることで市場ニーズを収集し、より豊かな社会を支える製品を開発したいと考えています。
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