NTTデータ経営研究所が企業による 「従業員の健康関連データ利活用の実態調査」を実施
~健康経営の推進度に応じて、課題や求められる外部サービスは異なる~
株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:山口 重樹、以下 当社)は、国内企業の健康経営推進担当者1,800件を対象に、「従業員の健康関連データ利活用の実態調査」を実施しました。
その結果、以下のことが判明しました。
【主なポイント】
■ 健康経営推進度の高い企業ほど、理念や推進体制は整えられているが、同時に職場における施策担当者や従業員の健康風土の醸成が今後の課題
■ 健康経営推進度の高い企業ほど、外部サービス(専門職や健康管理システムなど)の活用が進んでいる
■ 健康経営推進度の高い企業ほど、データ利活用による健康増進施策のPDCAが進んでいるが、同時に先進的な取り組みならではの課題も露呈
■ 外部サービスの有効活用により、健康関連データ利活用の推進や専門職の業務効率化、保健指導の質の向上にも期待
【調査の背景】
近年コロナ禍で働き方が多様化する中、「健康経営」のさらなる普及に向けて企業が保有している健康関連データを利活用することにより健康状態を把握し、従業員の健康増進をより一層図っていく営みが推進されています。また、将来的には従業員の健康関連データを用いた新たなサービスが創出され、普及拡大していくことが期待されています。
企業が保有している健康関連データや日々のライフログデータなどのPHR(Personal Health Record)*データを収集し、統合・分析した上で、産業医などによる保健指導や社員自らの自律的な行動変容を促す仕組みを構築することで、従業員の健康増進・パフォーマンス向上を図ることが期待されます。
しかし、これらのデータを収集・統合・分析・利活用するためには、個人情報の取り扱いやデータ分析・統合に係るコスト、人的リソース、それらを利活用するメリットの訴求不足など、複合的な課題が散見されています。
本調査では、国内企業における従業員の健康関連データ利活用に係る現状や課題感、それらに影響を与えている背景要因の実態を明らかにすることで、健康関連データを利活用した従業員の健康増進のムーブメントの推進・仕組み構築に向けた課題解決策の検討の一助となることを目指しました。
*PHR(Personal Health Record):健康に関する個人情報を、生涯にわたり本人が電子的に閲覧し管理することにより、本人の健康に関する意思決定に資する仕組みまたは仕組みを通じて管理されるデータ
【調査概要】
■ 調査対象者:従業員の健康増進に取り組む企業の健康推進担当者
(健康経営推進部署、人事・総務部、健康管理室等に所属し、従業員の健康管理を担当する者)
なお、管理職の立場にある者を優先して調査対象とした
■ 調査方法:WEBアンケート調査
■ 調査時期:2022年11月18日~2022年12月12日
■ 回答数:1,800件
※匿名化された調査パネルの回答者単位で収集した(企業名で収集していない)ため、一部企業の重複がある可能性あり
■ 分析方法:健康経営の推進度別に3群に分類して分析した
Group 1(先進企業群):436件(24.2%)
健康経営銘柄、ホワイト500、ブライト500のいずれか取得(1回以上)
Group 2(優良法人群):329件(18.3%)
上記のいずれかを取得せず、健康経営優良法人を取得(1回以上)
Group 3(未認定企業群):1,035件(57.5%)
上記のいずれも取得せず
※Group 1,2を合わせて「認定取得企業」と定義
本調査は、健康長寿産業連合会から委託を受けて実施した。
【主な調査結果】
●健康経営推進度の高い企業ほど、理念や推進体制は整えられているが、同時に職場における施策担当者や従業員の健康風土の醸成が今後の課題
データ利活用に係る背景因子として「経営的な視点の要素」では、健康経営銘柄や優良法人認定の取得企業では、「経営者のコミットメント」や「管理職のリーダーシップ」が醸成されてきている傾向がみられた。一方で、職場で健康増進に関する意識や雰囲気作り等の「無形資源」の蓄積に関しては、未認定企業との差がわずかであった(図 1)。
「健康経営度調査」の評価指標により健康経営の推進について一定の方向性が示され、組織の健康経営に対する理念や推進体制が整えられているものの、職場における施策担当者や従業員の「健康風土の醸成」が今後の課題である。
●健康経営推進度の高い企業ほど、外部サービス(専門職や健康管理システム等)の活用が進んでいる
「健康に関する知見の要素」では、外部機関が提供するサービスとして健康経営推進度によらず「保健指導」の活用が多く、健康経営推進度の高い企業ほど、健康管理システムやデータ分析などの外部サービスの活用が進んでいる(図 2)。産業保健スタッフの保健指導の対象者は、保健指導の対象者は法定で定められている範囲に留まり、企業で独自に基準を定めて保健指導を実施している割合は低い(図 3)。全般として、産業保健スタッフの人材不足等を背景に法令遵守の観点でのサービス導入意向が強く、健康経営の推進度合いが高くなるにつれて、分析系サービスの需要や保険者との連携が高まっていることが推察される。
●健康経営推進度の高い企業ほど、データ利活用による健康増進施策のPDCAが進んでいるが、同時に先進的な取り組みならではの課題も露呈
「健康関連データ利活用の実態」として、「保健指導」への活用を中心に健康関連データの利活用が進んでいるが、健康経営推進度の高い企業ほど、データを活用した健康増進施策のPDCAが進んでいることがわかった(図 3)。しかし、健康経営推進度の高い企業ほど、複数種類のデータを統合管理することによるリスクの増大や用途の高度化、コスト増加とそれに伴う意思決定が課題となっている(図 4)。今後、ライフログの活用を推進していくにあたっては、ライフログデータの利活用目的・有効性の明確化、データ収集を効果的・効率的に実施するためのシステム環境整備、個人情報取得やデジタル技術に関するリテラシー向上支援などが必要である。
●まとめ:外部サービスの有効活用により、健康関連データ利活用の推進や専門職の業務効率化、保健指導の質の向上にも期待
健康関連データを活用した健康経営の推進には、企業経営、健康増進、データ分析など様々な分野の知見が必要とされるため、自社内の人材・ノウハウの不足が大きな課題となり外部サービスの活用が必要とされている。外部サービスとして集団単位で特徴的な傾向を提示可能な健康情報管理システムや、複数種類のデータの統合により各種の健康情報へのアクセスや面談基準の設定を可能とする等の機能が提供されることにより、専門職の業務の効率化に加え、保健指導の質の向上も期待される。
> その他、詳細な調査結果はこちらから
https://www.atpress.ne.jp/releases/362080/att_362080_1.pdf
【今後について】
当社では、予防・健康づくりのさらなる高度化に向けて、従業員などが自らの健康づくりに活用できるPHRデータの利活用促進を推進していくとともに、それらの利活用を促進するための保険者や事業主の課題解決に係るコンサルティングサービスの提供や調査・実践に取り組んでいきます。
なお、健康長寿産業連合会では、この調査結果を踏まえた具体的なアクションとして、「Well-being societyの実現に向けたデータ利活用による健康経営の実践 -従業員の健康関連データ利活用の実践及び実態調査を踏まえたデータ利活用の基本ユースケース(案)-」に係る提言を2023年7月13日に公表しました。
https://www.well-being100.jp/policy/20230713513/
【健康長寿産業連合会の概要】
「健康長寿産業連合会」は、企業・業界団体が主体となった産業間交流の場をつくり、健康寿命の延伸に関する業界の垣根を越えた活動や、官民一体となった社会的課題の解決に取り組むことで、日本における健康寿命の延伸に関する全ての産業(健康長寿産業)の振興を図るとともに、公的医療・介護に関わるコストの適正化をめざしてまいります。
【NTTデータ経営研究所について】
株式会社NTTデータ経営研究所は株式会社NTTデータの100%子会社として1991年に設立されたコンサルティングファームです。調査・研究、政策提言、構想・企画立案、各種コンサルティングを通じ、公官庁・金融機関・一般事業会社に対して質の高いサービスを提供しています。
ライフ・バリュー・クリエイションユニットでは、ヘルスケア・医療・介護の現場が抱える課題を踏まえて、各分野の専門家が幅広いコンサルティングサービスを提供し、複雑さを増す社会課題の解決に貢献します。
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