【名城大学】全固体リチウムイオン電池材料の展開に期待 低温プラズマプロセスで1次元Si/Snナノ材料負極の シングルステップ作製に成功 ~高容量Liイオン電池を実証~
2023.09.09 10:00
名城大学カーボンニュートラル研究推進機構・次世代バッテリーマテリアル研究センターの内田儀一郎 教授、池邉由美子 准教授、並びに理工学部電気電子工学科 益本幸泰 大学院生のグループは、九州大学、大阪大学と協力して、独自の高圧Heプラズマスパッタリング法で、多様な形態をもつSi/Snの1次元ナノ材料負極を簡易な単一ステップ工程で作製することに成功しました。さらにそれを負極としたLiイオン電池で1,000 mAh/g以上の高容量を劣化なく駆動できることを実証しました。本研究の高圧プラズマスパッタリング法は、1次元ナノ材料負極を前処理なく簡易に大面積にも作製できる画期的な方法で、次世代の全固体Liイオン電池材料に展開していくことが期待できます。
この研究成果は2023年9月8日18時(日本時間)にネイチャーパブリッシンググループの英国科学雑誌Scientific Reports(電子版)に掲載されます。
名城大学ではノーベル化学賞を受賞した本学の吉野彰終身教授が発明したLiイオン電池研究を今後、大きく展開していきます。
この研究成果は2023年9月8日18時(日本時間)にネイチャーパブリッシンググループの英国科学雑誌Scientific Reports(電子版)に掲載されます。
名城大学ではノーベル化学賞を受賞した本学の吉野彰終身教授が発明したLiイオン電池研究を今後、大きく展開していきます。
【発表のポイント】
●高圧Heプラズマスパッタリング法を用いた簡易な単一ステップ工程で1次元Si/Snナノワイヤー負極を作製することに成功。
●繊維状Siナノワイヤー負極を用いたLiイオン電池で1,000 mAh/g以上の高容量を実証。
●1次元ナノ材料負極を前処理なく簡易に大面積にも作製できる画期的な方法なため、次世代の全固体Liイオン電池材料展開が期待される。
●高圧Heプラズマスパッタリング法を用いた簡易な単一ステップ工程で1次元Si/Snナノワイヤー負極を作製することに成功。
●繊維状Siナノワイヤー負極を用いたLiイオン電池で1,000 mAh/g以上の高容量を実証。
●1次元ナノ材料負極を前処理なく簡易に大面積にも作製できる画期的な方法なため、次世代の全固体Liイオン電池材料展開が期待される。
【詳細な説明】
1.研究の背景
高エネルギー密度のLiイオン電池を実現するためには、Liイオンを大量に取り込める高容量負極の開発が必要不可欠です。Si材料は、カーボンの理論容量372 mAh/gの約10倍の理論容量4,200 mAh/gを持ち、高容量負極の最も有望材料です(利点)。しかしながら、Liを取り込むことで合金化し、その際、体積が4倍近くにまで膨張する特性を持っています。充放電で膨張と収縮を繰り返すことで、亀裂や集電体となる銅電極からの剥離が起こり、高い容量が急激に低下する短寿命という問題があります(欠点)。この問題を解決する究極の高容量材料として1次元構造をもつSi材料が注目されています。これを電極に利用するためには、ナノ材料を凝集なく均一に分散させて電極を作製することが重要です。研究例として、Siナノワイヤー材料を様々なプロセスで作製し、その後、電極膜を作製する例が多数報告されています。電極膜の作製は、ナノワイヤー材料を接着材と混合してペースト化し、それを銅電極上に塗布し、最後に焼成するという多段階の工程となります。この全ての工程で、Siナノワイヤーを凝集なく均一に分散させることが重要なポイントとなります。
2.研究内容及び本成果の意義
上記の従来法に対し本研究の利点は、独自のプラズマプロセスで直径150 nm程度のSiナノワイヤー負極を簡易な単一ステップ工程で作製できる点です。接着剤を利用しないことからLiイオンを取り込めるSi材料のみの電極膜となります。さらに本研究ではSiナノワイヤーの表面を電子伝導性の良いSn金属でコートすることに成功しました。これによりLiイオンの充電・放電反応を促進することができます。実際に繊維状に生成したSi/Snナノワイヤー負極でLiイオン電池を試作し評価したところ、1,000 mAh/g以上の高い容量を50サイクル以上劣化なく維持できることを実証しました。
低温プラズマプロセスは半導体作製にも多用されている高品質膜を大面積に作製できる制御性に優れたドライプロセスです。今回の開発した高圧低温プラズマプロセスでは、高品質に加え1次元のナノ構造の制御にも成功しました。今後は、次世代の全固体Liイオン電池材料にも展開していくことが期待できます。
名城大学ではノーベル化学賞を受賞した本学の吉野彰終身教授が開発したLiイオン電池研究を今後、大きく展開するとともに、カーボンニュートラル研究推進機構を中心に脱炭素社会を目指した研究開発を積極的に推進します。
1.研究の背景
高エネルギー密度のLiイオン電池を実現するためには、Liイオンを大量に取り込める高容量負極の開発が必要不可欠です。Si材料は、カーボンの理論容量372 mAh/gの約10倍の理論容量4,200 mAh/gを持ち、高容量負極の最も有望材料です(利点)。しかしながら、Liを取り込むことで合金化し、その際、体積が4倍近くにまで膨張する特性を持っています。充放電で膨張と収縮を繰り返すことで、亀裂や集電体となる銅電極からの剥離が起こり、高い容量が急激に低下する短寿命という問題があります(欠点)。この問題を解決する究極の高容量材料として1次元構造をもつSi材料が注目されています。これを電極に利用するためには、ナノ材料を凝集なく均一に分散させて電極を作製することが重要です。研究例として、Siナノワイヤー材料を様々なプロセスで作製し、その後、電極膜を作製する例が多数報告されています。電極膜の作製は、ナノワイヤー材料を接着材と混合してペースト化し、それを銅電極上に塗布し、最後に焼成するという多段階の工程となります。この全ての工程で、Siナノワイヤーを凝集なく均一に分散させることが重要なポイントとなります。
2.研究内容及び本成果の意義
上記の従来法に対し本研究の利点は、独自のプラズマプロセスで直径150 nm程度のSiナノワイヤー負極を簡易な単一ステップ工程で作製できる点です。接着剤を利用しないことからLiイオンを取り込めるSi材料のみの電極膜となります。さらに本研究ではSiナノワイヤーの表面を電子伝導性の良いSn金属でコートすることに成功しました。これによりLiイオンの充電・放電反応を促進することができます。実際に繊維状に生成したSi/Snナノワイヤー負極でLiイオン電池を試作し評価したところ、1,000 mAh/g以上の高い容量を50サイクル以上劣化なく維持できることを実証しました。
低温プラズマプロセスは半導体作製にも多用されている高品質膜を大面積に作製できる制御性に優れたドライプロセスです。今回の開発した高圧低温プラズマプロセスでは、高品質に加え1次元のナノ構造の制御にも成功しました。今後は、次世代の全固体Liイオン電池材料にも展開していくことが期待できます。
名城大学ではノーベル化学賞を受賞した本学の吉野彰終身教授が開発したLiイオン電池研究を今後、大きく展開するとともに、カーボンニュートラル研究推進機構を中心に脱炭素社会を目指した研究開発を積極的に推進します。
【論文タイトル】
タイトル: Single-step fabrication of fibrous Si/Sn composite nanowire anodes by high-pressure He plasma sputtering for high-capacity Li-ion batteries
高容量Liイオン電池を実現する高圧Heプラズマスパッタリング法を用いた繊維状Si/Snナノワイヤー負極の単一ステップ作製
著者:Giichiro Uchida, Kodai Masumoto, Mikito Sakakibara, Yumiko Ikebe, Shinjiro Ono, Kazunori Koga, Takahiro Kozawa
雑誌名:Scientific Reports
DOI: 10.1038/s41598-023-41452-3
https://www.nature.com/articles/s41598-023-41452-3
【用語の解説】
1)低温プラズマプロセス:ガス温度とイオン温度が室温で電子のみが数万℃の状態のプラズマ(低温プラズマ)。このプラズマを利用して材料を削ったり(プラズマエッチング)、高品質薄膜を作製(プラズマCVD、プラズマスパッタリング)する方法。ナノメートルサイズの材料加工や高品質薄膜が作製できることから、半導体作製に必要不可欠なプロセス。
2)プラズマスパッタリング:固体材料にプラズマのイオンを入射させ、原子状態にして基板に材料膜を作製する方法。
3)1次元ナノ構造:径がナノメートルサイズの材料が1方向のみに伸びた構造。膜を削って1次元の形状をつくるトップダウン型プロセスや原子を供給して1方向のみに材料を成長させるボトムアップ型プロセスで作製する。
4)全固体Liイオン電池:負極と正極間のLiイオンの移動には電解液が必要。現在の電解液を固体の電解質に代えた電池。固体電解質は不燃性であるため安全で、かつ急速充電も可能となる。
【問い合わせ先】
<研究に関すること>
名城大学理工学部 電気電子工学科
教授 内田 儀一郎(ウチダ ギイチロウ)
E-mail: uchidagi*meijo-u.ac.jp
<広報担当>
名城大学渉外部広報課
電話 052-838-2006
E-mail:koho*ccml.meijo-u.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
タイトル: Single-step fabrication of fibrous Si/Sn composite nanowire anodes by high-pressure He plasma sputtering for high-capacity Li-ion batteries
高容量Liイオン電池を実現する高圧Heプラズマスパッタリング法を用いた繊維状Si/Snナノワイヤー負極の単一ステップ作製
著者:Giichiro Uchida, Kodai Masumoto, Mikito Sakakibara, Yumiko Ikebe, Shinjiro Ono, Kazunori Koga, Takahiro Kozawa
雑誌名:Scientific Reports
DOI: 10.1038/s41598-023-41452-3
https://www.nature.com/articles/s41598-023-41452-3
【用語の解説】
1)低温プラズマプロセス:ガス温度とイオン温度が室温で電子のみが数万℃の状態のプラズマ(低温プラズマ)。このプラズマを利用して材料を削ったり(プラズマエッチング)、高品質薄膜を作製(プラズマCVD、プラズマスパッタリング)する方法。ナノメートルサイズの材料加工や高品質薄膜が作製できることから、半導体作製に必要不可欠なプロセス。
2)プラズマスパッタリング:固体材料にプラズマのイオンを入射させ、原子状態にして基板に材料膜を作製する方法。
3)1次元ナノ構造:径がナノメートルサイズの材料が1方向のみに伸びた構造。膜を削って1次元の形状をつくるトップダウン型プロセスや原子を供給して1方向のみに材料を成長させるボトムアップ型プロセスで作製する。
4)全固体Liイオン電池:負極と正極間のLiイオンの移動には電解液が必要。現在の電解液を固体の電解質に代えた電池。固体電解質は不燃性であるため安全で、かつ急速充電も可能となる。
【問い合わせ先】
<研究に関すること>
名城大学理工学部 電気電子工学科
教授 内田 儀一郎(ウチダ ギイチロウ)
E-mail: uchidagi*meijo-u.ac.jp
<広報担当>
名城大学渉外部広報課
電話 052-838-2006
E-mail:koho*ccml.meijo-u.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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